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進次郎“ステマ騒動”でも露呈。自民が当然の政治手段として長年「民意操作」を続けてきたこれだけの「前科」と「証拠」

自民党総裁選が佳境を迎える中で放たれた、「進次郎ステマ問題」という特大の文春砲。しかし元全国紙社会部記者の新 恭さんは、こうした同党の「世論工作」はもはや伝統芸に近いと指摘します。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では新さんが、自民党が繰り返してきた数々の情報操作の手口を振り返りつつ、「敵失」とも言える進次郎氏のスキャンダルを庇うようなライバル候補たちの姿勢の背景を分析。さらに変われない自民党の体質に対する率直な思いを綴っています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:小泉進次郎「ステマ問題」から露呈した自民党の“ネット世論工作”

ネット時代到来前から連綿と。進次郎「ステマ問題」でも露呈した自民党の世論工作

なにかボロを出すに違いないと、自民党総裁選で圧倒的優勢を誇る小泉進次郎氏の言動に目を凝らしていた“アンチ進次郎”の保守論客たちが、「待ってました」とばかりに食らいついたのが、文春砲の「ステマ」報道だった。

小泉陣営が、「ニコニコ動画」に進次郎氏を称賛する「やらせコメント」を書き込むよう要請するメールを関係者・支援者に送っていたというのだ。9月25日発売の「週刊文春」がそれを報じると、あっという間にネット空間に拡散され、“進次郎失速”の観測が広がった。

文春の記事によると、小泉選対の「総務・広報」をつとめていた牧島かれん衆院議員の事務所から「ニコニコ動画でポジティブなコメントを書いて欲しい」と、ヤラセの書き込みを要請するメールが陣営関係者に届いた。

そのコメント例として「あの石破さんを説得できたのスゴい」「泥臭い仕事もこなして一皮むけたのね」など計24パターンが羅列され、その中には最大のライバル、高市早苗候補を意識したと見られる「ビジネスエセ保守に負けるな」という文言もあったという。

これをもって文春は断じた。「小泉人気が圧倒的だと思わせ、だったら応援しようと仕向ける作戦だ。いわゆるステルスマーケティングの一種と言っていいだろう」。そこから「小泉ステマ」批判の嵐がネットを中心に巻き起こった。

ステルスマーケティング(ステマ)は、広告・宣伝であることを明示せず、消費者に“自然発生的な口コミ”であるかのように見せかける手法。商品レビュー、SNS投稿、インフルエンサーの発言などに仕込むケースが典型だ。令和5年10月1日から景品表示法違反の対象となった。

今回、小泉陣営が行ったのはむろん商業目的ではなく、政治的宣伝、要するに「ネット世論工作」だ。それを直接取り締まるルールが存在しないために、これまで野放しになってきたのだが、明らかなのは、自民党が当然の政治手段として“民意操作”を長年にわたって続けてきたということだ。

真っ先に思い起こされるのは、2021年に発覚した「Dappi問題」だ。野党議員を執拗に攻撃し、自民党を持ち上げる投稿を繰り返していた旧Twitterアカウント「Dappi」。その正体は、自民党を主要取引先とする東京都内のIT会社だった。自民党から業務委託を受けて運営していた疑いが持たれ、裁判沙汰にまで発展した。

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かつての自民党「世論工作」に深く関わっていた電通

もっと遡るなら、2010年に自民党が立ち上げた「J-NSC(ネットサポーターズクラブ)」の存在も忘れてはならない。党の公式組織として、SNSやブログで積極的に政策をPRし、批判者に反論を浴びせる役割を担った。選挙戦では「リツイート運動」「ハッシュタグキャンペーン」などを展開し、“草の根の声”を演出した。

ネット時代が本格化する前の「世論工作」といえば、2001年4月の総裁選が思い浮かぶ。自民党は総裁選を国政選挙の一環ととらえ、各候補者の発言にさりげなく「何でも反対の民主党」「責任感のない民主党」など短い決まり文句を繰り返し織り込んでいく手法をとった。その背後で電通がアドバイスをしていたことはよく知られている。

その後、小泉政権下では「国民の声を聞く」と称してたびたびタウンミーティングが開かれたが、そのつど政府が“質問役”を仕込み、政府への賛成意見を言わせていたことが発覚した。ここでも電通が暗躍していた。

つまり、国民の「生の声」をでっち上げる自民党の“伝統”が、今回の総裁選でも顔をのぞかせただけであって、決して小泉進次郎氏単独の問題ではない。

国民民主党の玉木雄一郎代表は9月27日、自身のXを更新し、以下のような投稿をした。

牧島かれん議員は、小泉陣営の『総務・広報班』の班長を辞任したようだが、同氏は元デジタル大臣であり、現在の自民党のネットメディア局長である。

今回のようなことが明らかになると、国政選挙でも、自民党はステマを行なっているのではないかと疑わざるを得なくなる。

自党の高市候補者に対してさえ誹謗主張めいた書き込みを指示していたのだから、他党や他党の候補者にも同様の工作を行なっていても不思議ではない。

牧島氏はたしかに自民党のネットメディア局長である。党デジタル社会推進本部長代理、デジタル大臣を歴任。SNS活用について党内の誰よりも熟知しているはずの立場だ。党本部が主導する国政選挙にあたっても、「ネット世論」形成を目的とした指令を全く行っていなかったと考えるほうが、不自然だ。

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ライバル候補が「進次郎ステマ問題」を批判しない背景

さて、今回の「ステマ問題」で、小泉人気が失速したとネット空間で騒がれる中、10月4日開票の総裁選はどうなるだろうか。

焦点は、高市氏が党員票をどれだけ獲得するかだが、岩盤保守といわれる人々を勇気づけているのが、日本テレビによる党員・党友への独自の電話調査(9月23~24日)だ。

前回調査(9月19~20日)にくらべ、小泉氏は32%から28%へと支持を減らし、逆に高市氏は28%から34%へと増やして、わずかな期間に1位と2位が逆転した。小泉氏が演説原稿を棒読みするのに対し、高市氏は奈良の鹿と万葉集の和歌を持ち出して独自色を出し、保守的な党員の心をつかんだといわれる。

さらにこの調査の後、「ステマ問題」を報じる文春砲が炸裂し、高市陣営やその支持者層は俄然強気になった。だが冷静に考えるなら、いくら高市氏が大量に党員票を獲得するとしても、限度がある。決選投票にもつれこむと、国会議員票を手堅く固めた小泉氏には及ばないと見るのが妥当だ。

自民党は9月27日夜、「ひろゆき」こと西村博之氏をインタビュアーにした総裁選の候補者討論会を行い、その様子を生配信した。その中で、ひろゆき氏が「“ステマ”に関してどう思うかというのを、1人2分以内で」と無茶振りした時の、小泉氏を除く4人の反応が面白かった。

小林鷹之氏 「そうした事案を耳にしています。ただ小泉候補自身も謝罪をされていますし」

茂木敏充氏 「責任を感じると、こういう話もされていますので、みんなフェアに“ワン自民”でやっていきたい」

林芳正氏 「おそらく放っといてもそういうコメントは出ていたなと思って、ちょっともったいない」

高市早苗氏 「自民党内のことについては、左に同じ意見でございます」

いかにもみんなで小泉氏を庇っているように見えた。下手に批判的な発言をしたらブーメランが恐いというということなのか、それとも、ここは穏便に取り繕ったほうがイメージ的に得策という計算なのか。「ステマ体質」が、自民党全体に染みわたっていることは、多くの人々が薄々感じ取っているだろう。“突出”した発言を避けたいという候補者たちの思惑が透ける。

9月18日の「自民党TikTok LIVE」では、問題の張本人である牧島かれん・ネットメディア局長が平井卓也・広報本部長とともに出演し総裁選のPRにおよんだ。そのさい、発表した総裁選のキャッチテーマが「#変われ自民党」だったのだから、なんとも皮肉なものである。

小泉陣営の「ステマ指示」は、自民党が変われないことを、ネットメディア対策を取り仕切る自民党幹部の手で、自ら実践して見せたということになるだろう。

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