「小泉進次郎氏優勢」との下馬評を覆し、第29代自民党総裁の座を射止めた高市早苗氏。しかし「党内力学」が大きく働いたとされる勝利及びその後に発表された党内人事には、各所から疑問の声が上がっています。今回のメルマガ『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、総裁選の舞台裏で展開された「麻生劇場」を痛烈に批判。その上で、麻生派色の濃い人事を「二人羽織内閣」と名付け、国民不在の政治を不安視しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:麻生二人羽織内閣の誕生
総裁選でも露呈した「変われない自民党」。麻生二人羽織内閣の誕生
あたしは芦毛馬からの馬券しか買うことができない「芦毛教」の信者なのですが、10月4日(土)に開催されたJRAでは、東京6Rで8番人気の芦毛ゲキザルが勝ち、京都8Rで7番人気の芦毛ウイントレメンデスが勝ち、東京10Rで6番人気の芦毛レッドシュヴェルトが勝ち、この3レースだけで5万円近い配当を手にすることができました。
止まらない物価高に苦しむ国民のことなどホッタラカシで、党利党略のためにフルスペックでの総裁選を強行して政治空白を広げ続ける自民党にはもはや1ミリも期待できないので、自力で自分に給付金を支払ってみたあたしです。
しかし、そんなJRAを所轄するのは農林水産省なので、あと1週間ほどでお払い箱になるとは思いますが、一応、現在の農林水産大臣である小泉進次郎氏にも「泥臭い仕事もこなして一皮むけたのね!」と言っておきたいと思います(笑)。
で、奇しくも同じ10月4日に行なわれた自民党の総裁選では、1回目の投票で誰も過半数に届かず、1位と2位による決選投票では、高市早苗氏が185票、小泉進次郎氏が156票、29票差で高市早苗氏が自民党の次期総裁に決まりました。
正直、あたしは候補者5人のうち誰が次の総裁になっても自民党は何も変わらない、今より酷くなるだけだと思っていたので、特に注目はしていませんでした。当日は仕事でしたし、帰宅して真っ先にチェックしたのは競馬の結果で、総裁選の結果は偶然に目に入ったネットニュースの見出しで知りました。
そもそもの話、今回の総裁選は、1回目の投票で誰も過半数に届かず決選投票となり、高市氏と小泉氏の一騎打ちとなり、麻生太郎氏が「こっちに入れろ」と指示したほうに麻生派の43人がドバッと投票して決まる…と言われていたので、最初から犯人が誰なのか知った上で推理小説を読むようなドッチラケ感しかありませんでした。
報道ベースでも、たとえば「読売新聞」のオンライン版では、10月4日当日の午後1時の時点で「自民党総裁選で、麻生派を率いる麻生太郎最高顧問は高市早苗・前経済安全保障相(64)が決選投票に残れば、高市氏を支持するよう同派議員に伝えた」と報じられていました。結局のところ、フルスペックだ何だと言いつつも、最後は麻生太郎氏のひと言ですべてが決まってしまう。これほどバカバカしいデキレースは前代未聞であり、競馬のほうが遥かにクリーンだと思いました。
ま、それはそれとして、こんなにバカバカしい選挙で決まった人物でも、自民党の総裁になれば自動的に総理大臣になってしまうのが日本であり、それは衆参ともに少数与党となった現在でも変わらないのです。何故なら、少数与党より多数野党のほうが中身がバラバラだからです。まず、野党第1党である立憲民主党の野田佳彦代表が「内閣不信任案を出す気ゼロ」であり「政権交代する気ゼロ」なのです。
野田代表は「小泉進次郎氏が自民党総裁に選ばれて総理大臣になれば、是々非々で法案を通しつつ野党第1党を死守し続ける」という中途半端な「ぬるま湯状態」を自身の政治家としての終の棲家に選んだのです。そのため、与党を批判しつつも常に受け身で、本気で攻撃する気がまったく感じられません。ですから、今回の「高市勝利」という予定外の結果に対して、どの党よりも困惑しているのです。
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次の選挙で大きく票を減らす可能性大の参政党と日本保守党
一方、10月6日(月)の文化放送『大竹まこと ゴールデンラジオ』に出演した保守界隈に詳しい文筆家の古谷経衡氏は「高市勝利」で最も困るのは参政党と日本保守党だと述べました。
古谷氏によると、参政党が躍進したのは、これまで自民党を支持して来た保守層が岸田首相や石破首相にアイソをつかして参政党に流れたからだ。そして今回、自民党の総裁が保守色の強い高市氏になったことで、かつての支持者が自民党に戻って来る。ゆえに保守を売りにした参政党や日本保守党は次の選挙で大きく票を減らす、という読みです。
それでは、一般の人たちの声はどうでしょうか。同じく10月6日の文化放送『長野智子 アップデート』では「高市新総裁誕生に思うこと」というメッセージテーマでリスナーにメールを募りました。
鴻巣市のヒメルテアさん 「総裁になるためにかなり麻生さんの力を借りたので、表向きは高市政権ですが結局は陰で麻生さんの意見が強く反映される第二次麻生政権になるのではないかと私は思っています。鎌倉幕府の源頼朝以降の将軍みたいに、トップは将軍だけれども実権は北条氏的な執権を麻生さんと麻生派でやって行くような気がします」
大阪の派遣社員Nさん 「男性だ女性だと言ってる自体が時代錯誤なのかもしれませんが、せっかく女性初の総裁で、たぶん女性初の総理になられるのですから、誰それさんの傀儡(かいらい)、犬、なんてことを言われないように、歴史に名を残す政治家、リーダーになってほしいです」
ヒメルテアさんと同じことは多くの人が考えているようで、ゲストコメンテーターで政治ジャーナリストの角谷紘一氏も「麻生太郎氏の影響力」について、次のように述べました。
角谷紘一氏 「少なくとも人事で色濃く出ると思います。それは麻生派がたくさん入るということじゃなくて、麻生さんがいいと思った人が入って来ると思います。たとえば、国民民主の榛葉さんとの会談もそうだし、参院選直後に麻生さんは参政党の神谷さんとも会ってますよね。ですから、いろいろな準備を着々と…という背景があったんだと思います」
角谷氏 「高市さんは統一教会問題や裏金問題の議員を復権させると思いますが、それがどのようなハレーションを起こすか。まだ石破政権なので今から言うべきことじゃありませんが、明日、党三役か四役が出ますから、ここから石破さんの後を引き継ぐ高市さんの党人事が見えて来ると思います。すでに言われているのは麻生さんの義理の弟、鈴木俊一総務会長の幹事長へのスライドですね」
角谷氏 「小泉さん推しだった森山幹事長の名前がいっさいどこからも出て来なくなりましたね。これも小泉さんの敗因だったと党内では思われてます。石破おろしというのがあったけど、本当は森山さんへの批判が党内には根強くあって、石破さんはその上にいただけだったのです」
角谷氏 「高市さんが選ばれた理由は、すでにリスナーの皆さんも良くご存知のように、最終的には麻生さんが決めたと。派閥を解消したのに麻生派だけは残しておいて、これが1つにまとまって、1回目にはこっちに入れなさい、2回目には高市さんに入れなさいという指示がきれいにできたと」
角谷氏 「どうして麻生さんは最終的に高市さんにしようと決めたのか。まあいろいろと聞いているけど、1つは人事でかなり踏み込んだ要求があったんじゃないかと。で、高市さんと小泉さんにその話をしたけれど、小泉さんも鈴木(俊一)幹事長までは受け入れたが『それ以上はちょっと』と拒んだんじゃないか。そして高市さんは『麻生さんのおっしゃることなら何でもいいです』というトーンで臨み、これが麻生さんの高市さん支持の決定打になったのかもしれません」
「麻生派の麻生派による麻生派のための人事」のアカラサマ
そして、この角谷紘一氏の見立て通りに、高市氏が7日に決定した党四役は、幹事長に鈴木俊一総務会長(72)、総務会長に有村治子・元女性活躍相(55)、政調会長に小林鷹之・元経済安全保障相(50)、選挙対策委員長に古屋圭司・元国家公安委員長(72)という、4人のうち2人が麻生派というアカラサマなものでした。その上「最高顧問」という窓際に追いやられていた麻生太郎氏(85)自身は副総裁に返り咲くという、まさに「麻生派の麻生派による麻生派のための人事」が、恥ずかし気もなく発表されたのです。
さらには、まだ首班指名選挙も行なわれていないどころか、まだ石破内閣だというのに、官房長官に木原稔・前防衛相(56)を充てるだの、外相に茂木敏充・前幹事長(69)を充てるだの、友和をはかるために小泉進次郎農相(44)を引き続き閣内で処遇するだのと、すでに「高市早苗の着ぐるみを着た麻生太郎」という二人羽織(ににんばおり)内閣がスタートしたかのような勢いです。
そして、全国の真面目な納税者たちをポカーンとさせてしまったのが、統一教会問題でも裏金脱税問題でも真っ黒なだけでなく、モリカケサクラすべての安倍案件で真っ黒な萩生田光一・元政調会長(62)を、幹事長代行に起用した点です。2カ月前には裏金脱税問題で政策秘書が有罪の罰金刑を受けているのに、その責任者である人物を党の重要な役職に就けるだなんて、これじゃあ「自民党はこれからも企業と癒着した裏金政治を続けて行きま~す♪」と宣言したも同然の呆れ返る人事です。
もはや国民を舐めまくりの自民党ですが、所詮は小泉進次郎氏か高市早苗氏かの二択だったのですから、あたしから見れば「嘘つき」と「バカ」の二択であり「うんこ味のカレー」と「カレー味のうんこ」の二択でしかない総裁選でした。どちらもマッピラゴメンだし、たとえどちらかが首班指名選挙で日本の総理大臣に選ばれたとしても、あたしは絶対に認めません。
ま、あたしごときが認めなくても、どんな嘘つきでもレイシストでもカルト宗教と癒着した危険人物でも、自動的に総理大臣になれちゃうのが今の日本のおかしなシステムなのですから、それならせめて国益に反することだけはしないでほしいと思います。
10月6日の文化放送『アップデート』で、長野智子さんは冒頭、総務大臣時代に「電波停止」と言った高市早苗氏の政治家としての資質に苦言を呈した上で、高市氏がイギリス初の女性首相であるマーガレット・サッチャー氏を尊敬していると紹介し、次のように続けました。
長野智子さん 「高市さんが尊敬する人物として挙げているマーガレット・サッチャーさんは自身の就任式で、自分にとって最も大切な言葉として『フランシスコの平和の祈り』を引用して、次のように述べました。『分裂があるところに和合を置かせてください。誤りのあるところに真実を置かせてください。疑いのあるところに信頼を置かせてください。絶望のあるところに希望を置かせてください。』サッチャーさんを尊敬しているのなら、高市さんもこの言葉を大切にしてほしいと思います」
これが、高市早苗氏の1歳年下の長野智子さんからのメッセージです。
(『きっこのメルマガ』2025年10月8日号より一部抜粋・文中敬称略)
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