実はあまり例のない「いじめ加害側」の暴走
多分日本国内で最も多くのいじめ事件を取り扱っていることになるであろう私の経験から、加害側が暴走するということはあまりないと言える。
多くのケースで言えることは、学校や教育委員会、学校法人などは、酷いいじめ事件が発覚するまでは、通常運転をしている。一方、加害者はいじめをする事は日常であるから、通常運行なわけだ。
ところが、被害者は平和な日常が壊れ、暴力や強要などの行為によって様々なものが破壊され人生を踏みつけられ続けている異常状態になっている。だから、被害者は「助けてくれ!」と救いを求めるわけだが、加害者とも学校等とも利害関係は一致しない。だから、隠ぺいが横行し、泣き寝入りの数が水面下で膨大に膨らむわけだ。
利害関係が一致した学校等と加害者は、それまでの平穏な日常であった平常運転を乱したのは、被害者だと考えがちだ。
学校から教育委員会へ送られた報告書などを私は毎日のように目にするが、その多くに、事実とは異なる被害側への悪意の内容が記載されている。
例えば、いじめによって適応障害やうつなどの症状が出ているという被害生徒がいたとする。時期として受験などが重なっていれば、当然に被害生徒も受験勉強を頑張るわけで、多少の根不足や生活リズムが乱れることもあるものだが、そこだけをクローズアップし、家庭環境が著しく悪いと報告書に記載し、うつの等の原因は、いじめではなく家庭環境が悪く十分な休息が取れていないからだと断じるわけだ。
一方で、不法行為をされた側が証明する責任を負うという証明責任の概念があるから、加害側はいじめをしていないという証明は必要が無い。多少知恵が働く加害者は、「黙秘権」を使って、知らぬ存ぜぬと惚けるわけだ。
つまり、加害側は暴走しなくても、学校等が被害者側を敵対視して評判を下げるように行動し、特に小学生中学生の内は明確な処分を出すことはほとんどないから、ちょっと注意される時間だけをやり過ごし、反省したふりをしつつ、逃げてしまえば、何らの支障もないという実態から、暴走するまでもないのである。
おおよそ、こうした作用が隠ぺいや被害側家族の村八分、日常的なでっち上げが起きている背景であろう。
結果的に、我々のような支援団体が出てきたり、専門知識がある記者や外部の弁護士などが出てくると、隠ぺい勢力は実態を暴かれ、しどろもどろになるわけだ。
しかし、異常な加害者というのは存在する。
いわゆる犯罪予備群と言われる属性に当たる加害者もここにあたるわけだが、多くはストーカー的であり、執拗なまでに攻撃を繰り返すのだ。
冒頭に取り上げた事件も、まだ明確な繋がりは出ていないと評価できる点はあるが、被害生徒と暴行や脅迫を行った加害者らが交わしたやりとりは、明らかに元加害者に関連する何かを起因としたものだと考えるのが自然だろう。
被害を受けた側は、見知らぬ同年代を見たり、格好悪いやんちゃ風の人を見れば、少なからず警戒をすることになる。これは徐々にストレスを増大させる要因となり、これが進めば外出がストレスになってしまうこともあろう。
大阪では、過去に堺市で起きたいじめ事件の被害家族が、帰宅するのを待ち伏せていた加害者の親に暴力を受けたという事件があった。この加害親は未確認の情報に過ぎないが、事件化した場合に備えて、敢えて泥酔して犯行に及んだという情報もある。
ただ、待ち伏せしていたことや、明確に暴力行為に及んだことは事実であり、極めて悪質であり、その後の恐怖は計り知れない。
一方で、こういう行為に司法はあまり厳しい判断を下すことは無い。比較的甘い対応で、多くは、未成年がやったこと、なんとなく加害者側の説明に納得するような形で、まるで他人事の判断をする事が多いのだ。
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