理想と現実の間で。村山富市が見た政治、高市早苗が向かう政治

 

場所は当時、野坂氏が理事長を務めていた鳥取県米子市の病院だった。

鳥取で自衛隊基地の反対闘争を指導し、部落解放運動の先頭に立っていた闘志が政権の中枢に上っていくその不思議さ、保守と革新の融合の魔法には伏線があったことなど、直接確認できたのは面白かった。

これは他でも語られていることだが、鳥取での基地反対闘争を通じて当時、鳥取県警本部の警務部長だった亀井静香氏(後の自民党政調会長)と関係を築いたことや部落解放運動を通じて野中広務氏(後の自民党幹事長)とも通じていたことが、連立政権樹立に役立つとは当時は共に想像もしなかっただろう。

野中も亀井も連立樹立に重要な役割を果たし、共に自民党の重責を担う立場となった。

イデオロギーを乗り越えた人どうしの信頼関係があったのが、あの時の連立政権だった。

今回発足した自民党と日本維新の会の連立政権と高市早苗新内閣。

首班指名に向けた多数派工作に少々戸惑いを感じ、野坂と亀井、野中の話を振り返ってみると、今回の信頼関係はどのように築いたのだろうかと問いたくなる。

「タカ派」の女性首相の誕生には、「ガラスの天井」が破られた高揚感と保守性を懸念する声が錯綜する。

そこにはリベラルと保守という2つの立場から語り切れない現実がある。

岩手大学副学長の海妻径子教授は朝日新聞のインタビューでこう指摘する。

「タカ派の方が先にガラスの天井を破ったことを真摯に受け止め、女性が台頭できた『構造』を見ていかなといけません。それは翻って、リベラルはどうしてそういう構造が構築されないのか、ということを考えることになると思うからです」。

リベラルの巨星が逝き、保守の女性の宰相の誕生。

ここから始まることをまた胸に刻みたい。

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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