北京の「世界最大級スマート・コネクテッドカーの祭典」が映し出した、中国自動車産業のチグハグ

 

AIの路車協調への浸食

実際、WICVで発表された「十大機能シナリオ」「標準化成果」「データ共有新范式」なども、研究機関や地方政府の既存プロジェクトを再掲したにすぎない。

V2Xや路側ユニット(RSU)整備は現場でほとんど進んでおらず、AIベースのWorld Modelやマップレス走行が主流となる中で、“路”の技術的意義は薄れている。

にもかかわらず「車―路―クラウド一体化」を強調し続けるのは、AIによる自律進化が進む産業を「インフラとデータの名の下に再統治する」政治的意図がありそうだ。

政府が掲げる“協調”とは、AIやクラウドの自由な発展を枠内に戻すための装置であり、技術主導の流れに対する統治的カウンターメッセージになりそうだ。

中国勢は調和を装う

企業側もそれを理解しているが、あえて逆らう理由はない。むしろ程よく「お付き合い」するほうが各社にとってもメリットは大きい。

国家級イベントへの参加はブランドイメージや官民協調の証として機能し、将来の政策補助や実証特区認可への“保険”にもなる。

Li、Xpeng、NIO、ファーウェイなどはそれぞれ独自のAI開発を加速させながらも、政府主導の展示会には形式的に参加し、調和を装う。

そこには明確な距離感がある。企業は「技術は自分たちが握るが、舞台は政府に譲る」という暗黙の了解を共有しているかのようだ。

その結果が地方モーターショーと何も変わるところがない、淡々とした車両展示のみの協力、という形になった。

体制秩序再確認の儀式

カンファレンス全体を俯瞰すると、WICVは技術革新の現場というよりも、体制の秩序を再確認する儀式のようであった。

地方政府にとっては「ICV産業都市」の看板を維持する機会であり、通信キャリアや国有企業にとっては展示予算を確保する口実でもある。

つまり、WICVは産業構造全体を包摂する“国家プロジェクトの演劇”であり、現実の開発主導権が企業に移った今、政府が依然としてモビリティ産業の「ハンドル」を握っているように見せるための象徴的舞台とも言えそうだ。

実際にはハンドルの動力はすでに車両=企業側に移っているが、政府はその上から手を添えているふりをしている。

WICV 2025はまさにその姿を体現したイベントと感じた。

出典: https://mp.weixin.qq.com/s/36dcKBarGe6Kq0hAgby7ug

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