「不条理」を感じたとしても不思議ではない維新サイド
当然、高市首相の側から見れば、国民民主党という大きな味方を得たということになる。合意書には「103万円の壁を178万円まで引き上げる」ということのほか、「2026年度の税制改正法案と新年度予算について年度内の早期に成立させる」と記されている。つまり、補正予算案だけでなく、新年度予算案に賛成する約束までとりつけ、国民民主を実質的に与党サイドに取り込んだわけである。
現在、与党は衆院でなんとか過半数に達したが、参院ではまだ6議席足りない。当然、国民民主が加われば、新年度予算案は成立する。
維新から見て、この状況はどう映っているだろうか。連立の絶対条件とした「衆院議員定数削減法案」が審議もされないまま時間切れとなった一方で、野党・国民民主の政策が曲がりなりにも実現したのである。連立に党の存亡をかける維新が軽視され、野党としての自由度を保つ国民民主が優遇されているような“不条理”を感じたとしても不思議ではない。
議員定数削減法案は、企業・団体献金の見直しに関する法案とともに、来年の通常国会に先送りされた。自民党は定数削減も企業・団体献金の規制強化も避けたいのが本音だ。その状況が変わるはずはない。維新は定数削減を政治改革のセンターピンと言い続けるが、本気で実現できると思っているのだろうか。
MBSニュースのインタビューで、「議員定数削減が来年の通常国会で採決されなかったら連立離脱という選択肢もあるか」と問われた吉村洋文代表はこう語っている。
「高市さんとの信頼関係がなくなったら離脱だと思っていますが、高市さんとの信頼関係が強くあるので」
「信頼関係」という主観的かつ曖昧な言葉を用いて、連立の「絶対条件」を緩めている。そして、「国民民主党の連立入りを歓迎するか」という質問に対しては、こう答えた。
「連立入りは良いと思う。ただ、簡単には入らないと思いますよ」
「連立入りとなると、責任を負いますからね。自民党と連立して消滅していないのは公明党だけですから。飲み込まれる可能性がある中で、僕はリスクを取って前へ進めている。その判断をできるかどうかだと思いますね」
連立に入らないで政策実現を果たそうとする国民民主への複雑な感情が言外ににじむ。
そもそも維新が進んで「連立離脱」を選択するはずがない。大阪を副首都にするという野望を実現するために連立入りしたのだ。たとえ定数削減法案をめぐって「連立離脱」をちらつかせても、高市首相にはもはや大して効き目はないだろう。野党でも国民民主や公明党となら政策ごとに連携できるという確信を高市首相は深めている。
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