超大国アメリカの対中強硬派ですら「外交」を選択。それでも「高市発言は撤回不要」に賛同する日本人の歪んだ認識

 

2.の邦人対策は当たり前で、3.の各国との関係強化という意味では、日本のGDPの約3倍で、世界の経済発展への寄与度が30%を占める国とどうやって対抗してゆくのだろうか。

対中ビジネスに携わる者が聞けば、頭を抱えたに違いないし、忌憚のない意見を言えば、聴く価値はない。

レアアースを巡る攻防という意味では、日本など比較にならない超大国のアメリカでさえ「交渉しかない」と見極め、首脳会談後に臨んでいる。それが昨年10月30日の米中首脳会談だ。

米『ブルームバーグ』は2026年1月9日ホワイトハウス上級顧問(貿易・製造業担当)のピーター・ナヴァロのインタビューを発表した。タイトルは「中国のレアアース支配、米技術革新で排除へ-ホワイトハウスのナヴァロ氏」だ。記事の内容は見出しのままだが、重要なのはアメリカの技術革新が追いつくまでの期間を「どう乗り切るか」であり、その答えをナヴァロ氏はこう答えていることだ。

「外交だ。それを弱腰と呼ぶ人がいるなら、チェス盤を理解していないということだ」

超大国アメリカの対中強硬派、ナヴァロ氏の選択が「外交」なのに、日本が「『(高市)発言を撤回しません』ということを胸張って言っておけば」済むと考えるのは、どういう発想なのか。

もっとも「外交」をするにしても、日本にはいま、外交をするベースがないのも事実だ。国民がそれを許さないからだ。

日本人の理解が足りなさ過ぎて中国の怒りの強さが認識できないのだ。

例えば台湾問題だ。中国人がもし、「日本に右寄りの政権が誕生し、彼らが台湾と政治的に距離を詰めている」と聞けば、真っ先に思い浮かぶのは過去の侵略だ。それはかつての日本が最初に侵略したのが台湾だったことを中国人はしっかり覚えているからだ。

翻って日本人はどうだろうか。

親日の台湾を「中国から守ってあげたい」くらいの感覚ではないだろうか。これは、もはや埋めがたいギャップだ。

昨今、ネットを中心に、台湾には侵略どころか「良いことをした」と考える日本人が増えていることも感じさせる。

つまり外交をしようにも、考え方に接点もないギャップが出来上がっているのだ。

この状況をつくり出したのはメディアから言論界、学術界に至るオールジャパンだ。中国を「価値観の共有できない相手」と位置づけ、徹底的に排除してきた結果だ。私自身にもその責任はある。

言論NPOの世論調査で、9割が中国人に良くない感情を持っていると答える日本は、北朝鮮をも凌駕する言論の幅のない異常な国だが、そうした国をつくり出したのは間違いなくオールジャパンであり、ある意味メディアの通信簿だ。

結果、アメリカは外交を活用して決定的な対立を回避できるが、日本は国民がそれを許さない。その先には何があるのか。

次に中国が何を繰り出すか定かではないが、薬や肥料程度で済んでくれることを祈るばかりだ。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年1月11日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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