ヒューミントの力を恐れスパイ摘発を徹底してきた中国
だが、これで思い出すのは、かつてキューバで勤務していたアメリカの外交官21人が突然強い耳鳴りや激しい頭痛に襲われたことで浮上した「音響兵器」による攻撃疑惑だ。
当時「犯人」と疑われたのは、ロシアや中国が秘密裏に開発したソニック・ウェポンだった。つまり、そうした兵器の存在はむしろロシアや中国が積極的に活用しているはずだと考えられてきたのだ。
結局、疑惑が証明されることはなく、現在はむしろ不確かな情報だったと認識されているが、今度は逆に米軍が指向性を備えた武器として登場させたのだ。
国際政治という視点に立てば、乱暴な秩序の破壊でしかないベネズエラへの軍事力行使だが、米軍の手際の良さに驚かされた国は少なくなかったはずだ。
もちろん中国もそのうちの一つと指摘されている。
だが、私はそう単純な話ではないとも考えている。
というのもヒューミントの力を恐れているからこそ、中国はここ数年徹底してスパイ摘発に力を入れてきたのであって、しかも大きな成果を上げてきた。
軍内部の規律の乱れを徹底して引き締めるための取り組みもその一つだが、相変わらず隙はない。
象徴的なニュースは1月25日の張又侠上将の身柄拘束だ。制服組のトップとされる中央軍事委員会副主席の張又侠が規律違反で取り調べを受けているとの国防部報道官の発表は、習近平政権下で進められる規律違反の取り締まりに聖域がないことを改めて社会に知らしめたことになる。
昨年も多くの将官が規律違反で失脚していったが、それでもまだ取り締まりの手綱は緩められていないのだ。
米中の軍事力の比較では、しばしば中国軍の実戦不足が指摘されてきた。しかし、その評価も変わりつつある。
決定的だったのは昨年のインドとパキスタンの衝突だった。インド側はフランスのラファール戦闘機とロシアのミグ戦闘機。対するパキスタン側は中国製J‐10戦闘機と中国とパキスタンが共同開発した戦闘機JF‐17サンダーという戦いだったが、結果はインド側が5機の戦闘機を撃墜され(パキスタン側の発表)大きな損害を出した。
パキスタンが空中戦で圧勝した背景にはシステムの支援も要因とされたが、この戦闘以降、J‐10戦闘機とJF‐17サンダーへの注文が世界各国から殺したというから興味深い。
少なくとも中国の戦闘機を「劣化コピー」「ハリボテ」と揶揄する声は、抑え込んだのではないだろうか。
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年1月25日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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