米独メディアも警告。高市首相の“財政ポピュリズム”が引き起こす「トラスショック」再来

 

日本の首相は「日本国債の信用保証人」

もちろん、野党の減税政策にしても、財源や効果について腑に落ちる説明がない。メディアは「与党も野党も、実現性のない減税競争で、どっちもどっち」という論調だ。

食料品を減税したところで、農業・漁業などの生産者も、加工品の製造工場も、円安で燃料や肥料、材料が高騰しているのだから値上げをしないと苦しい。特に、新鮮なうちに売り切らなければならない生鮮食品は、生産者にしわ寄せとなり、後から値上げとして跳ね返るのではないかと私は疑問を持っている。

与野党いずれにしろため息が出るが、世界が見ているのは、やはり「首相」として盛大に演説した高市早苗の発言なのだ。

そもそも日本の首相は「日本国債の信用保証人」である。

その首相の発言は、たとえ国内向けの記者会見であっても、「国債市場に対するメッセージ」になる。

国債という借用書は、「日本国はお借りしたおカネを、きちんとお返しします」「財政運営には責任を持ち、無茶はいたしません」という国家としての信用があってこそ成り立っているものだ。そして、日本国債は、これまで「世界最大の安全資産」と言われてきた。

その信用を、言葉と態度で体現する立場にいるのが、首相である。

ところが、その本人が、国債増発を「選挙のカード」として使い、借金を増やす一方で税金は減らすという、とても健全とは言えない財政運営に対する軽々しい態度を晒してしまった。

高市:実現するとは言っていません、「検討を加速する」だけですよ。 国民:なんだ、選挙用のリップサービスかよ。

日本国内なら、この程度で済むだろう。だが、市場の見る目は違う。

「日本は、国債の信認よりも、選挙を優先する国なのか?」

本来なら、首相は財政ポピュリズムのブレーキ役となるべき存在だったのに、みずから率先して火に油を注いでしまったのだ。高市の言葉は、あまりにも軽々しかった。

国内外で非難轟轟「日本、こわっ……」

この事態を受けて、日本では、長期国債の大きな買い手である生命保険会社に動揺が走り、金融庁が急遽調査を行ったと報道されている。

生命保険会社は、将来の保険金支払いに備えて巨額の国債を保有しているため、金利が上昇すると損失につながり、経営そのものに影響しかねないからだ。

米国では、日本の長期国債を持続的に買い入れしてきた世界最大級の資産運用会社が、「日本の財政政策への懸念」を理由に、新規の買い入れを停止。米メディアも、高市発言について「新たな不安定要因を生み出している」と警笛を鳴らしている。

ドイツの経済日刊紙は、日本国債の利回り上昇を「狂乱状態」と表現。高市発言について「財政の持続可能性に深刻な疑問を投げかけている」と厳しく批判した。

その上で、2022年に英国首相だったリズ・トラスが起こした金融パニック「トラスショック」を例に挙げている。

トラスは、財政規律を軽視したメッセージを発信し、財源の裏付けのない減税を打ち出した。それが引き金となり、英国国債暴落、金利急騰、ポンド急落を引き起こして首相辞任に追い込まれている。

この事件以降、「首相の言葉は、国債の信用そのものにつながる」という認識が国際的に共有されるようになり、各国の市場関係者は、首相による財政発言に神経を尖らせるようになった。

とりわけ、経済規模の大きい日本の国債が、これまでの「安心・安定・信用」を失い、急激に値動きするような事態になれば、その影響は世界に波及しないとも限らない。予想もつかない金融ショックの引き金になる可能性すらあるのだ。

「日本、こわっ……」

今回の件で、世界からそう見られはじめ、日本の「信用」は「警戒」の対象になったと言っても、過言ではないだろう。

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