「MMT理論」という思い込み
日本ではこれまで、「国債を大量に発行したために、値崩れして金利が跳ね上がる」ということが起きないように、日銀が国債を大量に買い支えてきた。
近年もてはやされている経済理論のひとつに「自国通貨建ての国債なら、どれだけ発行しても、日銀がおカネを刷って買えばいいので、破綻しにくい。だから緊縮財政なんかやめるべき」と主張するMMT(現代貨幣理論)というものがあるが、高市はこれを好んでいるらしい。
簡略して説明すると、MMT理論は「国民から徴収した税金で、どうやりくりするか」ではなく、「まず政府がおカネを使って回し、税金で物価を調整する」というものだ。
市場に出回るおカネが増えると、そのおカネの取り合いになり、物やサービスの値段は上がりやすくなる。物価が上がり続ける「インフレ」という現象だ。
そのため、通常は、日銀が、銀行の金利を引き上げて、おカネの流れにブレーキをかけることで物価を制御するのだが、MMT理論では、それを増税や出費控えで調整するという。
物価の変動に応じて、増税だ、減税だ、予算変更だと即座に国会審議を通せるものだろうか? 増税なら反発必至だし、そのたびに何百億円も税金を使って選挙をするわけにもいかない。私には現実的とは思えない。
このMMT理論が脚光を浴びたのはコロナ禍だった。
「こんなに給付金をばらまいて大丈夫か?」「ギリシャみたいに財政破綻するのでは?」という議論が起き、MMT論者がこう主張している。
「ギリシャは自国の通貨ではなくユーロで、中央銀行が自由に国債を買い支えられない。一方、日本は自国通貨”円建て”の国債だし、日銀がいくらでもおカネを刷って買えるから、財政破綻しない。
そもそも、アベノミクス以降ずっと金融緩和して、ブレーキなど踏まなかったのに、インフレにならなかったのだから大丈夫だ」
デフレ時代だから「うまくいくように見えた」
たしかに日本は、「ゼロ金利」「マイナス金利」と手を打って、おカネを流れやすくしてきたが、物価は上がらず、不況から立ち上がれない時代が長く続いた。
吉野家の牛丼は280円(現在453円)に、マクドナルドのハンバーガーは59円(現在190円)に値下げされ、街には100円ショップが増殖した。
価格比較サイト『価格ドットコム』が急伸し、家電もパソコンも「どの店が最安値で売っているか」を比較するようになった。『アマゾン』では、新品と同じページで中古品が売られ、定価販売が敬遠されがちになった。
「もっと安く買える店があるはず」「待てば安くなるはず」──それが、物価が下落し続ける「デフレ」時代の庶民感覚だった。
こうなった大きな理由は、新自由主義の世界の仕組みだ。
世界全体で生産効率を追い求めて、国際分業体制が進み、低賃金・低価格が当たり前になった。その中で日本は、賃金も上がらず、将来不安は強くなり、少子高齢化まで起きて、家計も企業も「おカネは貯めておかねば」という感覚になった。
日本は不況でも、ユニクロやH&M、しまむらで服は整う。お腹が空けばコンビニがある。サイゼリヤに行けば280円でミラノ風ドリアが食べられるし、グラスワインが100円で飲める。家には、メルカリで売るほど不用品があるし、猛烈に買いたい物はない。
だから、政府がおカネの量を増やしても、それが消費に回らず、物価に反映されなかった。
つまり、日本でMMTが「うまくいくように見えた」のは、世界全体が、安さを競い合うデフレ時代だったからだ。
だが、今は状況が一変したーーー (『小林よしのりライジング』2026年1月27日号より一部抜粋・敬称略。続きはメルマガご登録の上お楽しみください)
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