精神状態が「危険」とまで言われるドナルド・トランプ。個人の異変か、アメリカの制度疲労か

 

●「冷戦終結」に今頃対応しなければならない?

(1)「冷戦」が終わったら1945年以前の「熱戦」に戻るのかと言えばそんなことはなく、熱戦にせよ冷戦にせよ、国家(群)と国家(群)同士が互いに重武装を競って睨み合い憎み合い、いざとなればその総力を上げて戦争で決着をつけるという数世紀に及ぶ国際社会のありようを今度こそ卒業しようという機運が生じた。そのために国連が生まれ、主権平等の原則に基礎をおき、いかなる国に対しても武力による威嚇もしくは武力の行使を謹んで平和的手段で国際紛争を解決するという「多国間主義」に立つ国連憲章が出来た。

(2)ところがその憲章を真っ先に踏み躙って、再び国家群同士の「覇権主義」の野蛮に世界を引き戻してしまったのが米国とソ連で、いくら開発を競っても所詮は使えない核兵器に際限もない資金と資源を注ぐことの馬鹿らしさにようやく気づいて、どちらからともなく「こんなことはもうやめよう」と言い出して話がまとまったのが「冷戦終結」である。

(3)だから冷戦に勝者も敗者もなく、(程度の差はあったとしても)どちらもが原理的な意味での敗者だった。だからゴルバチョフは、当然のこととして、率先、東側の覇権システムたるワルシャワ条約機構を解体し軍縮プロセスを辿ろうとしたが、相手方のブッシュ父は「冷戦という名の第3次世界大戦に米国は勝利した。これからは米国の“唯一超大国”の時代だ」という幻想に舞い上がってしまった。そしてNATOを解体せず、その目的を欧州域外の危機対処に書き換え、それだけならまだしも、それを東方拡大して旧東欧・ソ連邦傘下の諸国を次々に加盟させながら、ロシアから見れば血を分けた兄弟のウクライナまで手を伸ばそうとした。このNATOの東方拡大策こそが今日のウクライナ戦争の遠因であることは言うまでもない。

(4)つまり、米国は今から3分の1世紀前に、冷戦終結という世界史的な事態に適応することに失敗した。ゴルバチョフは自らの手で「覇権主義」に始末をつけ「多国間主義」の時代に進もうとしたが、ブッシュ父は逆にますます「覇権主義」に走ってしまった。そのため米国は、冷戦後の世界でどう生きるかの進路を見失ってドタバタし、今頃になって何とかしなければならなくなって思考停止に陥っている。国家が思考停止状態なので、大統領も認知障害に陥らざるを得ないのである……。

そこでいよいよ浮き彫りになるのが、そんな米国に「守ってもらう」といまだに考えている高市首相の致命的な時代錯誤である。▲

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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