もっとも、中国にとって今回の戦争は完全な損ではない、という見方もあります。中国当局は、米軍が大量の精密誘導兵器を消耗している点を注意深く見ています。本来は台湾海峡有事に備えていた可能性のある兵器が、中東で消費されているからです。
同時に中国は、今回の戦闘を利用して「米国こそが世界の不安定化の原因だ」と国際社会に印象づけ、自らを平和維持者として演出しようとしています。
しかし、中国がイランに本格的に肩入れできない理由は、経済的な事情にもあります。中国はサウジアラビアやアラブ首長国連邦に対して、イランよりはるかに大きな投資を行っています。もし中国がイランを軍事的に支援すれば、これら産油国との関係は深刻な打撃を受けるでしょう。
また、中国は確かにイラン産原油の約90%を購入していますが、それでも中国の石油輸入全体の12%程度にすぎません。中国にとっては、地域全体との関係を維持する方がはるかに重要なのです。
さらに、中東紛争の拡大は中国経済にとって重大なリスクでもあります。中国は1日1,000万バレル以上の石油を輸入し、その約半分を中東に依存しています。液化天然ガスの約30%もカタールからの輸入です。もしホルムズ海峡が封鎖されれば、中国経済は大きな打撃を受けることになります。
そのため中国政府は、イランに対してホルムズ海峡を通過する石油やLNG輸送船への攻撃を控えるよう圧力をかけているとも報じられています。
さらに中国には、もう一つの問題があります。中国はイランやベネズエラから制裁下の石油を安く買うことで、年間100億ドル規模の利益を得ていました。しかし両国が米国の攻撃を受けたことで、この「割引石油」の利益が失われる可能性が出てきています。
加えて、中国はベネズエラに150億ドルの未返済融資を抱えているほか、イランにも300億~500億ドル規模の投資を行っています。これらの資金が回収不能になるリスクも高まっています。
今回の中東危機は、中国の軍事力の限界、外交の打算、そして経済的な弱点を同時に浮き彫りにしました。
強い言葉で「戦略的パートナー」を語りながら、いざとなれば助けない。そして兵器の実力も米国に遠く及ばない。
今回の戦争は、中国という国家の現実を、世界に改めて示したと言えるでしょう。
日本のメディアはつい最近まで、日本が中国からレアアース禁輸を受ける可能性を挙げながら、アメリカのトランプ政権すら中国のご機嫌を取り、習近平に膝を屈せざるをえなかったといった論調で語っていました。
しかし実際は、トランプ政権は中国を追い込んでいたのです。
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