国際法評価を避ける高市首相と安倍晋三氏が模索した対話の道
高市首相は17日の参院予算委員会で、自衛隊派遣について「国会の承認が必要なミッションもある。その場合は各党各会派に丁寧に話したい」と述べたが、野党は総じて警戒姿勢を崩していない。13日の衆院予算委員会における長妻昭議員(中道改革連合)と高市首相のやりとりを振り返ってみたい。
長妻議員 「総理として、イランへの攻撃というのは国際法上どういう評価にあたるとお考えか」
高市首相 「日本国政府として国際法上の評価はいたしておりません」
米国とイスラエルによるイラン攻撃は、国連憲章が禁じる武力行使に該当し、国際法違反であるとの見方が指摘されている。だが、国連安保理ではイランの報復攻撃についてのみ「国際法違反」とする決議が採択された。
長妻議員 「これから米国に行かれると思うが、そのさい米国のイラン攻撃について支持表明はされないということか」
高市首相 「日米首脳会談の個別の議論について予断することは差し控えたい。そのうえで、イランによる核兵器の開発は決して許されないというのがわが国の一貫した立場だ。イランの核問題の解決に向けた努力を行ってまいりたい」
イランの独裁体制や核兵器開発が国際社会の大きなリスクであることは間違いない。しかし、米国とイスラエルの先制攻撃を棚上げにした議論は説得力を欠く。
長妻議員 「アメリカからイラン戦争へのお金の支援や、武器の提供、タンカーの護衛、機雷の除去といった要請の可能性もある。一番ハードルが低いお金の支援の要請があった場合、違法な戦争をしている国に支援はできないですよね」
高市首相 「個々の状況に応じて国益の観点から法的に判断すべきものだから、一般論としてお答えするのは困難だ」
茂木外務大臣は「一般論として違法な戦争をしている国に支援はできない」と明言したが、高市首相はあくまで口が堅い。「ハッキリした物言い」で保守層の心を掴んでいるだけに本意ではないだろうが、「米国の味方」を演じなければならない彼女の焦燥が透けて見える。
高市首相が置かれた状況を歴史的な視点で把握するために、2019年、現職首相として41年ぶりにイランを訪問した安倍晋三元首相の対応を「安倍晋三回顧録」の記述をもとに振り返ってみたい。
当時、トランプ大統領は在米のユダヤ人支持層にアピールする狙いでイランとの核合意から離脱し、制裁を発動していた。これに反発するイランは高濃縮ウランの開発を宣言して対決姿勢を強めていた。安倍氏のイラン訪問はイランと米国の「橋渡し」という位置づけだった。
「日本は核合意の枠組み(米英独仏中ロ)に入っておらずイラン情勢に口出しするのは難しかったと思うが、イランとの対話に向けて米国をどうやって説得したのか」という質問に対し、安倍氏はこう答えている。
イランのロハニ大統領は国連総会に私が行くと必ず首脳会談を持ちかけてきた。…最初にトランプに「イランについてどう思っているか」と聞いたのは2018年4月の訪米時でした。…「私はハメネイ師とも会える。対話の道を探ってみたい」と言ったら、トランプは興味を持ったのです。「シンゾウがイランと話をできるんだったら、話してもらいたい」と、むしろ対話に積極的でした。
安倍氏はハメネイ師やロハニ大統領に会い、米国との対話を促したが、拒否され、会談は不調に終わった。そのうえ、会談当日に、ホルムズ海峡を航行していた日本のタンカーが何者かに攻撃される事件まで発生した。しかし、これで日本とイランの間柄が壊れることはなかった。
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