16兆円の資金調達を消化しなくてはならないウォール街
5番目は、依然としてくずぶっているエプスタイン問題です。先週のサプライズとしては、大統領夫人のメラニア氏が、わざわざホワイトハウスで公式な声明を出したという事件がありました。内容としては3点、「自分はエプスタインの被害者ではない」「エプスタインの愛人、ジレーヌ・マクスウェルとは面識はあるが親しい友人ではない」「事件の被害者については議会の公聴会で証言の機会が与えられるべきだ」というものでした。
ちなみに、ジレーヌとの関係が「特に親しくない」ことの証拠として、儀礼的だとされるメールの内容が公開されていますが、どう考えても「かなり親密」なものではありました。問題は3点目で、メラニア夫人が「被害者の証言機会」を求めたというのは、これは「爆弾発言」だという受け止めがされています。ヘタをすると、夫が大統領職を失う結果になるかもしれないからです。夫人としてはしっかり「出口」を作ろうとしているという説も、まことしやかに囁かれています。
さて、ここまでの5項目については現状についての、そして一種の時代の空気的な、曖昧なものでした。ですが、6番目の問題は違います。ある意味で、現在の政治的、経済的混乱には「タイムリミット」があるという問題です。他でもありません、ビッグ3の上場という問題です。
今回のビッグ3というのは、いずれも現時点では未上場です。従って、今のところは、ベンチャー・キャピタルとか、現在問題になっているプライベート・エクイティなど個別の方法で資金調達をしている企業が3社ほぼ同時に上場するという問題です。その時期は今年、2026年の6月から7月だとされています。
その3社とは、宇宙開発のスペースX、生成AI「ChatGPT」でおなじみのOpenAI、そしてそのライバルでチャットロボット「Claude」を展開中のアンソロピックです。この3社を合わせると、とんでもない数字になります。
- 目論見としての時価総額:3トリオンドル(480兆円)
- 期待される資金調達額:100から170ビリオンドル(27兆円)
今、アメリカの金融界ではこの3社の上場を「メガIPO」として、かなり大きな騒ぎになっています。
株の乱高下については、勿論、イランでの戦況が影響する面があるのですが、例えば株が下がると「メガIPOに向けて手持ちのポジション(持ち株)を流動化させる動き」だという解説が入ったりします。上がったら上がったで「メガIPOまでの当面の投資行動」などというのです。
金やクリプト(暗号資産)の下げも、「メがIPOへの資金づくり」などと言われますし、例えば一部で動きの出ている、プライベート・エクイティの苦境についても「メガIPOが成功して、資金が流入すると助かるのでは?」という声もあります。
その一方で、スペースXには、マスク氏のAIが入っているので、この3社の上場が成功すると、AI市場はこの3社に牛耳られる、という声もあります。そうなった場合には、シリコンバレーの姿は一変するという人もいます。
問題は、その後ではありません。とにかく、この時価総額3トリオンという巨大なIPO(株式公開)というのは、既に宣言されている以上は失敗できないということです。失敗しないためには、最低でも100ビリオン(16兆円)の資金調達を、ウォール街として「消化しなくて」なりません。
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