多くの中国メーカーが垂直分業を強化しているという実態
きっかけは米連邦通信委員会(FCC)が昨年12月に発動した輸入規制だ。FCCは外国製ドローンのすべての新型モデルの輸入を禁じたのだ。「外国製」となっているが、この禁止が中国をターゲットにしたものであることは言を俟たない。
だがその直後、不思議なことが起きた。なんと輸入を禁止したFCC自身が一転してドローンの「部品に関しては『適用除外』とする」という措置を発表したからだ。
多くのアメリカのメディアは措置の修正の理由を「アメリカ企業がドローンを使い続けるためにはどうしても中国製ドローンの部品を輸入しなければならないという壁に突き当たったため」と説明している。
同じような現実は、ヒューマノイド・ロボットに対する輸入規制でも見られた。象徴的だったのは米誌『MITテクノロジーレビュー』の記事(8月4日)だ。タイトルは、「中国製ロボットを締め出す米国、その研究は中国製で回っている」である。
中国製ロボットを政治的に排除することは簡単だが、それをすればロボット開発コストは跳ね上がり、最終的にはアメリカのロボット産業そのものを停滞させてしまいかねないというわけだ。
背景にある中国部品メーカーの台頭が、「メイド・イン・ジャパン」の敗北の入り口だとすれば、それは家電以来の大きな逆風になりかねない。
かつて日本の家電産業が衰退したのは、一つにデジタル化という波に乗り遅れたこと、そしてもう一つが垂直分業から水平分業へとシフトする世界の流れに、日本だけが取り残されたからだと指摘される。「ケイレツ」や「擦り合わせ」という「メイド・イン・ジャパン」の強みが、皮肉にも変革を妨げた、と。
家電での敗北から多くの日本製造業は「脱ケイレツ」を進め、「ケイレツ」を旧態依然の悪しき構造と批判した。それは企業から柔軟性と身軽さを奪うと。
しかしトヨタ自動車のEV分野での苦戦を目の当たりにし、その最大のライバルとされるBYDの状況をのぞいてみると、意外なことに気づかされる。
それはBYDなど多くの中国メーカーが、むしろ時代に逆って垂直分業を強化しているという実態だ。
事実、BYDは、リチウム電池の材料確保のための鉱山取得から出荷のボトルネックを補う専用の貨物船の保有まで、あらとあらゆる関連産業で存在感を高めている。それは「ケイレツ」以上の垂直分業だ。
彼らが進める垂直分業には、一方で巨額の投資という負担がのしかかる。しかし、他方で中間マージンの削減や調整の手軽さや開発・改良のスピード確保といったメリットも大きい。サプライチェーンを安定させ、品質管理も容易になるという利点もある。
もしグループの慢心や硬直化を防ぐことができれば、「ケイレツ」はその強みを最大化することができる。中国が進める新たな垂直分業は、そのことを実証しているのかもしれない。
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年8月30日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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