子供だけじゃない。9月1日が教師にとっても「魔の日」である理由

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子供の自殺がもっとも多く発生する9月1日。しかしこの日は、教師たちにとっても「魔の日」だと言います。そんな現状を取り上げているのは、健康社会学者の河合薫さん。河合さんは自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で今回、現役教員の方々から直接耳にした「教育現場の真実」を紹介するとともに、遅々として実現しない学校の働き方改革をどう進めていくかについて考察しています。

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

「子供がかわいそう」は呪いの言葉

「9月1日は私たち教師にとっても魔の日。学校に来なくなる先生がいるんです。突然、連絡が取れなくなって、辞めてしまう先生もいます」

以前、こんな実情を話してくれた先生がいました。9月1日の始業式の日に、自ら命を断つ子どもたちが急増する痛ましいリアルは広く知られていますが、先生にとっても休み明けは「しんどい」。いつもと違う日常=8月を過ごす中で、「自分が先生でいる意味はあるのか」と惑い、すべてを投げ出したくなるケースは少なくない、と教えてくれたのです。

個人的な話で恐縮ですが、今月は教師を対象にした講演会やセミナーの講師に呼ばれ、現場の先生たちと色々とお話しをさせていただく機会がありました。

今まではどんなに多忙でも「働き方改革」という言葉を発することさえ許されない雰囲気があったそうです。やっと、本当にやっと、働き方改革に教育委員会や学校が取り組むになった、と。しかしながら、「道のりはけわしい」「業務が多すぎる」「先生の社会的地位が低すぎる」という声もありました。

そんな中、文科省が教師の長時間労働の大きな原因となっている事務作業に、生成AI(人口知能)を導入するための実証事業を9月からスタートさせることがわかりました。

報道によれば「教材やテスト問題の叩き台」「研修資料の原案や広報資料の構成」「保護者向けの文書の下書き」「校外授業の行程案」「部活費の経費の概算」などの作成に、AIを活用するとのこと。

え?そんなことまで先生がやっていたの?と今更ながら驚く内容もありますが、今年度は数十校の公立中学・高校に実証実験に参加してもらい、年度内に実践例をまとめる予定だとか。

文科省は7月に、学校現場での生成AIの活用に関する指針をまとめ、教員の業務効率化や質の向上も盛り込みましたが、実際に行っている学校はごく少数で、ほとんど使われてません。そこで指針を示したり、実践例を提案することで、AI利用を促進したいようです。

先生たちの働き方改革に、AIを利用するには大賛成です。しかし、活用が可能な事務作業を作成するだけではなく、アプリなどにして提供した方がいいように思います。というか、そこまでやらないと「変わらない」のではないでしょうか。

なにせ文科省はこれまでもさまざまな策を打ち出していましたが、いずれも「働き方改革」に直結してると言い難いものでした。文科省も今回ばかりは、「かなり本気」のようなので、文科省が先導する形で現場に落とす形でガンガン進めていただきたいです。

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