米有力シンクタンクが公然と唱え始めた「日米安保は終了」の衝撃。我が国は「アメリカ後」の生存戦略を描けるのか?

 

日本は「完全には切り捨てない」

ちなみに日本に関する具体的な提言もあります。これもまた、かなり刺激的な内容です。簡単に要約すると、

「豪州、フィリピン、韓国に対する責任はすぐに放棄できるが、日本は少し違う。完全には切り捨てない」

「日本が中国の勢力圏に入らないことを、アメリカとしてコスパ良く達成することはできる」

「尖閣などの岩礁防衛にコストはかけたくない」

「米国の関与により、日本のような豊かな国が防衛費を負担しないのはダメ。日米安保は、アメリカの国益からは逆効果になっている」

「適度のインセンティブを与えて、日本が中国の属国にならないようにしながら、米国としてコスパ良く支援しつつ、その支援を縮小してゆくべき」

「沖縄への駐留は台湾を放棄したら不要になる」

「2035年をメドに日本は自主防衛に移行。但し、東日本に少しだけ米軍を置くことは、長期的に続けるメリットはありそう」

「その場合は、中国のミサイル攻撃への防衛を共同でやることは考えても良い」

ということで、特にこの日本に関する部分はこれから相当に議論を喚起しそうです。

「与太話」と切り捨てられない3つの事実

それはともかく、それこそ「第2列島線までの撤退」というのだからといって、博士は中国の回し者だというような決めつけも良くないと思います。まずは、このカバナー博士、そして今回この論文をトップに掲げるシンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ(防衛上の優先順位)」の性格が重要です。反共主義を背景に持ち、リバタリアニズムを強く掲げる勢力から、この種のオピニオンが出てきた、これは無視できません。

その一方で、全くの「与太話」という切り捨てもいけないと思います。何故ならば、このカバナー論文の主張している内容は、実際の米政界や米軍の動きに重なる部分は大きいからです。例えば、この論文を、次の3つの事実と照合してみると、かなり「シャレにならない」深刻度を感じるのも事実だからです。

「イラン戦役への没入を続けるトランプ=ヘグセス路線の結果、現時点ではアジアにおいては、米海軍の航空母艦のプレゼンスが空白化している」

「金正恩との個人的関係をアピールするトランプは、朝鮮戦争の終結と、在韓米軍撤退を企図していると公言している」

「トランプ後継最有力といわれているヴァンス副大統領は、アメリカの狭義の国益という言い方を時折しており、例えばウクライナはこれに入らないなどと公言している」

この3つの事実はランダムなようでもありますが、この3つの問題とカバナー論文を重ねてみると、やはり「何かが動いている」的な緊迫感は否定できないものがあります。カバナー博士の言う、2030年までに実施して2035年までに完了というのも、2029年に始まる「次の大統領の任期」が、2期務めて2036年末に事実上終わるという期間に重ねて言っているフシがあります。

そう考えると、仮にヴァンス政権ができて2期やるとしたら、この種の「アジアにおける米軍プレゼンスのリストラ」を大きなテーマにしてもらいたい、そんな意図も透けて見えるように思います。その場合は、それこそトランプ政権のような「思いつき」で「飛躍ばかり」の政策ではなく、組織立った動きとして出てくる可能性も否定できません。

とは言え、先に申し上げたようにこの論文は「あくまでアドバルーン(観測気球)」だというのは間違いありません。これから、各方面の反応を見てゆくことは、カバナー博士としても興味深く見ていくつもりなのでしょうが、日本としても同じように各プレーヤーがどんな言動をしてくるのかを、見ていく必要があります。

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