その後もアメイジングなショーは進み30名の客は何度も息をのまされますが、大トリのネタには完全にやられました。例によって番号札の抽選で選ばれたのは、なんと嫁の由軌子。彼女を木村多江に似ているといじった後にメモ用紙を渡し
「何でもいいです、動物を描いてください、まわりの人には見せないでくださいね」
と言うマスター。この流れだと何の絵を描いたのだか当てる、そんなところでしょう。さらさらと描き進め、言われた通り手のひらで他人に見えないようガードする嫁。するとマスターが
「実は今朝、この店に何というお名前の方がどんな絵を描くか、予知したんです。この中に入っています」
と言って、ショー開始時から置いてあったカウンター上の手帳を指差す。
「あなたが書いたのはヘビじゃないですか?」
それを聞いた嫁が
「えっ!?キモチ悪い…」
と小声で言います。どうやら当たっているようです。さらに続けるマスター。
「たいがいの方はヘビを描く時にはとぐろを巻かせますが、ゆきこさんは違いますね」
今なんつった?さりげなく「ゆきこさん」って言わなかったか?こちらのそんな思いをもてあそぶように、手帳のポケット部分から二つ折りにされた紙片を取り出すと
大当たりだマスター!写真で比較するとこの通り
右が漫画家としてどうなのかと思わざるを得ない嫁の絵。左がマスターがこの日の朝7:38に予知したというイラストです。
「yukikoという名前の方が、この絵を描きます」
とあります。これには客席全体からこれまでになかったような”畏怖”に近い声が上がりました。すごい。この人は本物の超能力者なのかもしれない。そんな雰囲気の中、マスターはショーの終わりを告げ、嫁へのお礼として自分がぐにゃぐにゃに曲げまくったフォークをくださると言う。
なんでも、特別なパワーを充填してあるから部屋に飾っておけばいいことがある、とのこと。そして
と、同じく曲げられたスプーンを取り出した。さすが太っ腹だな、参加賞までくれるのかと思いきやこちらはひとつ300円。けれどもこれまでの2時間近いショーの衝撃的な内容にすっかり冷静さを失った客は、友人知人へのお土産として一人何個も買い求めています。見たところ平均三つは行っているようでした。計算してみましょう。800円のフードメニュー+300円のスプーン×3=1700円。客は毎回30人入るらしいので1回5万1千円、そして1日2ステージこなしているとのことなので日の売り上げは10万円を超えます。店休日は第1・3日曜のみということは月に300万円近い金額が彼の元に入っているということではないですか。
超能力は金になる。
まったくわけのわからない結論に達したレポートですが、あのスプーン、300円なら安いもんですよ。「kouki」とネームまで入れてもらえますし。
手品だろうと超能力だろうといいのです。一度見ていただきたい、そんな思いにさせてくれるステージでした。
著者:大原広軌(おおはら こうき)
1969年、東京生まれ。フリーランスライター、構成作家。代表作は『精神科に行こう!(文春文庫)』。妻は漫画家の大原由軌子。2011年、家族とともに妻の実家がある長崎県佐世保市に移住。現在は夫婦でメルマガを配信しつつ、様々なメディアに寄稿する日々を送っている。
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