トランプ「中間選挙前にイランを攻撃しない」の自縄自縛。敵に自由を与えてしまう“期限を切った約束”の副作用

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各地で軍事衝突が激化する中、国家間の合意や安全保障上の約束が実効性を失いつつある国際社会。紛争の拡大を食い止めるはずの仕組みが機能せず、戦火が新たな地域へと広がる事態が続いているのが現状です。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦が読み解く国際情勢の裏側戦略インテリジェンス・レポート』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、サウジアラビアへの相次ぐ攻撃や米イラン間の駆け引きを詳細に分析。さらに各国の思惑が交錯する中で、「合意の履行を誰が保証するのか」という国際秩序の根本的な問題を提起しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:誰が約束を守らせるのか-撃ち抜かれた王国の玄関、3日で崩れた「エネルギー停戦」、そして法の支配への逆風

誰が約束を守らせるのか-撃ち抜かれた王国の玄関、3日で崩れた「エネルギー停戦」、そして法の支配への逆風

10月10日、土曜日の午後、サウジアラビアの首都リヤドの玄関口であるキング・ハーリド国際空港に、ミサイルが落ちました。着弾したのは第3と第4のターミナルが入る建物群で、サウジの民間航空庁は翌11日の未明、12人が死亡し、309人が負傷したと発表しました。

亡くなったのは、サウジ人4人、バングラデシュ人2人、そして米国、ヨルダン、パレスチナ、シリア、スーダン、エジプトの出身者が1人ずつでした。この攻撃で負傷したインド人1人が翌11日に亡くなり、10日の攻撃による死者は13人になりました。

2月28日に米国とイスラエルがイランへの攻撃を始めて以来、湾岸のアラブ諸国で起きた一度の攻撃としては最大の被害で、サウジ国内でも2015年のモスク爆破事件以来の惨事だと伝えられています。同じ空港では8日にも、サウディア航空の機長を含むサウジ人3人が亡くなっています。

ロイター通信の集計では、別の日の攻撃も含め、この1週間にリヤドの空港への攻撃で亡くなった人は18人にのぼります。空港は10日から閉じられ、民間航空庁は閉鎖を少なくとも17日まで延ばしました。空港とは、国がどれだけ世界に開かれているかを示す玄関です。その玄関が、1週間のうちに何度も撃ち抜かれたのです。

サウジ当局は、防空態勢が攻撃を防げなかった経緯を調べています。AP通信は関係者の話として、初期の分析では、先に飛ばしたドローンが防空網を引きつけ、その間にミサイルが通り抜けた可能性があると報じました。ただし、これは当局の調査結果が公表される前の説明で、攻撃の手順として確定したものではありません。

揺らいだのは、サウジアラビアの防空だけではありません。サウジアラビアは迎撃ミサイルの在庫が細り、同盟国に支援を求めていると、AP通信や米ウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じています。ウクライナのゼレンスキー大統領は13日、キーウへの弾道ミサイル攻撃について、パートナーから早期の警戒情報を受け取れなかったと訴えました。

英フィナンシャル・タイムズ紙のギデオン・ラックマン氏は、ロシアの核の脅しが以前ほど恐れられなくなったことを論じ、それが米国の「核の傘」の信頼性にも跳ね返ると警告しています。そして10月9日、ノーベル平和賞が国際法の守り手に贈られたその日に、米国は国際刑事裁判所(ICC)そのものに制裁を科しました。

迎撃ミサイル、早期の警戒情報、核の傘、そして国際法。守りの仕組みの弱さが各地で相次いで表に出た1週間でしたが、それ以上に深刻なのは、約束を守らせる「保証人」の席が空きつつあることです。

トランプ大統領は11日、ロシアとウクライナの「エネルギー停戦」を一方的に発表しましたが、ロシアは合意を一度も認めていません。14日の未明にはウクライナの電力施設が大規模な攻撃を受け、15日にはゼレンスキー大統領が、製油所への攻撃を控える措置は終わったと表明しました。発表から3日余りで、停戦はその形を失ったのです。

「誰が約束を結び、誰がその履行を確かめ、破った者に誰が代償を払わせるのか」

この問いは、サウジアラビアとイエメン、米国とイラン、ロシアとウクライナ、そして国際法をめぐる今週の動きのすべてに通じており、日本にもそのまま跳ね返ってきます。

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