部下に「それ、パワハラですよ」と言われないために上司がすべきこと

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部下から「パワハラ」と言われてしまうと、次の言葉が出てきませんよね。上司が部下を思って発した言葉を「パワハラ」の4文字で片付けられてしまうと、指導がやりにくくなります。メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では、パワハラと言われないために、上司が考えておきたいことについてアドバイスをしています。

部下に「それ、パワハラですよ」と言われないようにどうすべきか

逆効果」という言葉があります。例えば、部下に優しく接するのは良いことですが優しくしすぎる逆に甘えてしまって育たなくなるというような場合などがそうでしょう。

また、「逆差別」という言葉があります。例えば、女性の管理職を増やすため、同じレベルの実力のある男性社員を管理職候補からはずしてしまったり、女性だけ昇格テストに合格しやすいようにしていたら、それは逆差別と言えるでしょう。

もちろん、効果があることであればすべきですし、差別があるならそれは是正されるべきです。ただ、それが行き過ぎてしまうとまた別の弊害がうまれてしまいます。

これはパワハラについても同じことが言えます。「パワハラは悪」というのは間違いのない事実です。パワハラを防ぐために、会社は社員に対し注意指導を徹底すべきです。ただ最近は、パワハラと言われること自体を気にして本来言うべきこと、指導すべきことができない(やりづらいと感じている)と悩む経営者や上司が非常に増えてきています。

また、社員や部下もインターネットなどで知識をつけ、なにかあったらすぐに「それ、パワハラですよ」と言ってくることも多くなりました。これでは本来防ぐべきパワハラとは全くかけ離れた話になってしまいます。

では、これに対して、経営者や上司はどうすべきか? それについてある裁判があります。

ある土木工事会社で、上司に繰り返し叱られた社員が「怒られるのも、言い訳するのも、疲れました」という遺書を残して自殺をしました。一審では、その上司の行為を違法として、2800万円の損害賠償を認めました。ところが、その後の控訴審ではその上司の行為を「不法行為にはあたらない」として、その賠償請求は却下されたのです。

なぜか?

それをお話する前にもう1つ別の裁判例です。

ある病院で、試用期間中の事務職の社員がその上司から厳しく怒られ、それが原因で精神疾患になってしまいました。そこで、その上司の行為をパワハラだとして裁判で損害賠償を請求しました。ところが、この裁判でも、その損害賠償請求は認められませんでした

どういうことか?

このどちらの裁判でも、「厳しい叱責があった」ということは認められています。ただそれが「必要のある厳しさだったと判断されたのです。

前者の裁判例では、その叱られていた社員不正な経理を行っていました。上司はその改善を求めていたのでした。ところが、それが長期に渡り中々改善されなかったため、上司は厳しい言い方で指導するようになったのです。

また、後者の裁判例では、患者の命を預かる病院では、万が一の事故を防ぐためにはある程度厳しく指導することはやむを得ないと判断されました。

このように、厳しい指導がなんでもパワハラととらえられるわけではなく、その必要性が認められればそれは指導と判断されるのです。

ただ、必要であればどんなに厳しい言い方でも認められるわけではもちろんありません。

・叱る内容に正当性がある
・人格を否定するような言い方をしない
・叱るときは全員の前ではなく、個別に話す

などは、気をつける必要があるでしょう。また、社員や部下にパワハラと受け止められるのは経営者や上司とのコミュニケーション不足に原因がある場合も多いです。

正しい叱り方を身につけ、日頃からしっかりとコミュニケーションをとるのも経営者上司の大切な役割です。

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