米大統領選にも影響? 嘘ニュースの脅威がアメリカで社会問題化

2016.11.29
by gyouza(まぐまぐ編集部)
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今や多くの人がニュースを読んだり情報を収集したりするのにソーシャルメディア(SNS)を活用しているなか、アメリカなどでは、本物そっくりに作り込んだ虚偽のニュースがSNSを中心に拡散される現象が相次ぎ、社会問題になっている。アメリカ大統領選の結果に影響したといわれるほど虚偽のニュースが拡散されるのはなぜなのだろうか。

虚偽ニュースはなぜ存在する?

「テロリストがヒラリーの政治活動資金の20%を援助」、「オバマ、不法移民にも投票を呼びかけ」など、目を疑うようなニュースがネット上で多く拡散されている。このどちらも、何の根拠もない虚偽のニュースだが、前者はFacebookで63万回以上もシェアされた。「オノヨーコ、70年代にヒラリーと不倫していたと告白」というニュース記事は、虚偽のニュースサイトで日付もない状態で掲載されたが広く拡散された。日本語にも訳されて紹介されていたので、目にした人もいるかもしれない。

ではなぜ、虚偽のニュースは存在するのか? その狙いは主に広告収入のようだ。バズフィード(英語版11月4日付)によると、虚偽ニュースの発信元に多いのは、デジタル・ゴールドラッシュを迎えているといわれるマケドニアに住むミレニアル世代だ。彼らがトランプ氏をネタにするのは単に金銭的な理由だという。これまでの経験から、最も効率よくトラフィックを獲得できるのが、Facebook上でトランプ寄りかつショッキングな内容のニュースを発信することだったという。

一方、ワシントン・ポストがインタビューした38歳の「虚偽ニュースライター」によると、虚偽ニュースを取り巻く今の状況を数年前と比べると、「間違いなく今の人の方がバカだ。事実かどうか誰も確認せずにどんどん拡散する」と話したという。また、虚偽のニュースがトランプ氏の当選を手助けしたのではないかという意見をどう思うかと聞かれ、トランプ氏が当選したのは自分のおかげだ、と主張した。「トランプ氏の支持者は誰も事実確認しない」と指摘し、実際にこのライターがでっち上げたウソのニュースをトランプ氏の選挙運動責任者が取り上げたことを明かした。この虚偽ニュースライターはGoogleの広告収入システムであるアドセンスで月に約1万ドル(約112万円)稼ぎ出していたという。

アイデンティティを示すために拡散?

CNNは、虚偽のニュースがなぜオンラインで広がるのか分析記事を掲載した。記事によると、ニュースをシェアするという行為は、単に情報を知らせるだけでなく、「アイデンティティのマーカー(印づけ)」として行うのだという。人はグループに分かれる傾向があり、自分自身のグループとの結びつきを大切にする。リアルな世界であればこうした社会的なアイデンティ(どこに属しているか、ということ)は服装や食べ物などで示すが、オンラインの世界では、物質的なマーカーはそこまで大きな意味を持たない。そのため、自分が属するグループとの繋がりを、そのグループの志向や信念を反映した記事へのリンクを投稿するという行為で主張するのだ。こうした心理により、信憑性が低い記事でも拡散されることになる。

バズフィード(英語版11月17日付)が行なった分析によると、大統領選前の3カ月間で拡散された大統領選関連の虚偽ニュースは、871万件以上の反応(いいねやシェア)を獲得し、一方で大手ニュースサイトでの大統領選関連のニュースは、737万件弱の反応(同)にとどまった。

虚偽ニュースを拡散しないために

一連の虚偽ニュース拡散の片棒を担いだとして指を差されているのが、FacebookとGoogleだ。両者とも、虚偽のニュースには今後、広告を規制するなど手を打つ意向を明らかにしている。一方で、ニュースの受け手がどうすれば虚偽ニュース拡散に加担しないですむかを特集するメディアも少なくない。

BBCは、虚偽のニュースを見破るポイントとして、「発信元は聞いたことがあるところか」、「他でも報道されている話か」、「1つ以上の証拠があるか」など、6つの点を挙げている。さらに、FacebookやGoogle、Twitterなど主なプラットフォームで虚偽ニュースと思われるものを見かけた場合、どのように報告するかを詳しく手引きしている。

前述の通り、海外の虚偽ニュースは日本語に訳されてまるで本物のニュースのように取り上げられることもある。目にした面白いニュースを拡散する前に、果たしてそれが信頼できる情報源からのものなのか、シェアボタンを押すその手を一度止めて確認して欲しい。

(松丸さとみ)

 

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記事提供:ニュースフィア

 
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