世界初の超高速鉄道「0系新幹線」と「零戦」の知られざる関係

jog20170327
 

旅行、出張、帰省など、私たちの日常になくてはならない日本の大動脈・新幹線。一度も大事故を起こしていない高速鉄道として、世界中から高い評価を受けています。今回の無料メルマガ『Japan on the Globe-国際派日本人養成講座』では、新幹線の「生みの親」である島秀雄にスポットをあて、新幹線誕生までのあゆみと、それを支えてきた日本人たちの「叡智と努力」を振り返ります。

島秀雄~新幹線の生みの親

もし東海道新幹線が建設されていなくて、同じ人数を乗用車で運んだとすると、毎年1,800人の死者と1万人の負傷者が出ることになる。
(『新幹線がなかったら』山之内秀一郎 著/朝日新聞社)

イギリスの経済雑誌「エコノミスト」はこう書いた。開業以来一度も大事故を起こしていない新幹線の驚くべき安全性を見事に表現している。

効率性も抜群だ。東海道新幹線の旅客数をバスで運ぼうとすると、10秒ごとに走らせねばならない。東名高速道路がバスで数珠つなぎになっていまうだろう。ジャンボジェット機なら100機余計に必要だ。

新幹線はまさしく日本の大動脈である。驚くべき安全性と効率性を備え、環境にも優しい。もし新幹線がなかったら、戦後日本の高度成長は大きく損なわれていたであろう。

「東海道の息子たち」

新幹線は世界の鉄道に強い影響を与えた。新幹線が登場した当時は、鉄道斜陽論が盛んで、米国では線路がどんどん取り外されて、ハイウェイ中心の自動車輸送に置き換えられていた。21世紀には世界中から長距離列車は消え去っているだろう、とさえ言われていた。それを一挙に覆したのが、新幹線の成功だった。

東海道新幹線が開通した翌年の暮れ、フランス国鉄はTGV(超高速列車)」の構想を策定した。1981年にフランスで出版された『TGVの挑戦』という本には以下の一節がある。

TGVは東海道の息子であり、イタリアのディレティシマの従兄弟だ。1950年代の日本での研究、60年代の開業と営業の推移について、フランス国鉄は大変な関心を持って見守っていた。常識をくつがえした全く異なったシステムを採用したことによって日本はそのパートナーたちと競争相手に強い印象を与えた。
(同上)

ディレティシマとは、東海道新幹線開業の6年後に建設の始まったローマとミラノを結ぶヨーロッパ最初の高速鉄道である。フランスのTGVの建設が始まったのが、さらにその6年後。ドイツも負けじと、同じ年にICEという高速鉄道の工事にかかった。このICEは98年に脱線事故を起こし、100人もの犠牲者を出して、高速鉄道での事故の恐ろしさをみせつけた。

2004月に開業した韓国の高速鉄道は、フランスのTGVの技術を導入したもの。しかし平野が多い欧州で開発されたTGVは、トンネル対策や台風対策など、安全面の問題が発覚し、日本に技術支援を求めたが、「入札時に安全管理面での日本の優位性を強調したにもかかわらず、いまごろ支援要請するのは虫がよすぎる」との反発が出る一幕もあった。それとは対照的に、台湾は自然条件の似ている日本の新幹線の安全性を高く評価して導入を決めた。

それぞれのお国ぶりが如実に現れているが、いずれにしろ世界中の高速鉄道はすべて新幹線の息子たち」なのである。

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