吉野家が牛丼戦争で一人負け、出前サービスで活路を開けるのか?

 

なぜ吉野家は「出前館」を利用することを選んだのか?

それでは、なぜ吉野家は自前でデリバリーを行わずに「出前館にアウトソースすることを選択したのでしょうか?

その答えはコストにあります。

自社でデリバリーの仕組みを構築するためには、受注のためのチラシ作成や受注システム、デリバリーの人員確保など多大なコストを負担しなければなりません。

デリバリーを導入すれば、売り上げアップにつながるのは当然ですが、問題は売り上げアップとコストアップの関係です。

売り上げアップがコストアップを上回るなら、それは取りも直さず利益アップにつながりますが、売り上げアップしてもそれ以上にコストアップすれば損失につながることになり、デリバリーの導入が却って業績不振の原因ともなりかねないのです。

たとえば、一注文当たり1,500円、配達料300円を徴収しても、コストが商品の原材料費はもとより、デリバリーの広告代やシステム料、人件費などを合わせて2,000円かかるようであれば、1回あたり、200円の損失が発生することにつながります。

もちろん、「出前館」にデリバリーをアウトソースする場合も、毎月のサイト掲載料3,000円に加えて、一定の受注代行手数料を支払わなければなりません。

ただ、自社でデリバリーシステムを構築する場合と「出前館」にデリバリーをアウトソース場合を比較して、最終的に「出前館にアウトソースした方がコスト負担が低く利益アップにつながるという結論から提携に踏み切ったというわけです。

また、「出前館」では2009年からTポイントと連携していて、6,000万人を超えるTポイント会員にアプローチできるというメリットもありますし、低コストで配達員を利用できる仕組みも提供されています。

出前館」では吉野家のデリバリーを請け負うにあたって、新聞販売店と提携し、新聞の配達がない時間に新聞配達員が飲食店のデリバリーを行うシェアリングデリバリーモデル」という新たな仕組みを導入しました。

mba20170607-2

出典:夢の街創造員会、吉野家、プレスリリースより

このモデルでは、「出前館」は配達員を確保できない飲食店に対しても、自社の受注システムを利用してもらえますし、デリバリーを請け負う新聞販売店は空き時間を有効に使って売り上げアップにつなげられます。

また、利用する飲食店にとっては低コストでデリバリーというオプションを追加できるという、まさに三者三様のメリットがあるうまくできたビジネスモデルになっているのです。

print
いま読まれてます

  • 吉野家が牛丼戦争で一人負け、出前サービスで活路を開けるのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け