フィナンシャルプランナーとしてお客様に家計見直しを提案すると、「私たちと同じような家庭はどうなの?」と聞かれることがあります。実は、他人の家計はほとんど参考になりません。参考になる場合もありますが、それには条件があります。(『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』牧野寿和)
ファイナンシャルプランナー、牧野FP事務所代表。「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務のほか、不動産投資、賃貸経営のアドバイスなども行う。著書に『銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法』(河出書房新社)など。
他人のやり方を参考にするのは悪手
日常生活で、複数の選択肢があったり判断に困ることがあると、その解決方法のひとつとして「同じような環境の人は、このような時はどのようにするのだろう?」と考えることは誰しもあるでしょう。
ただし、物事を決めるのに、他の人を参考にするのは、ご自身の準備が整わないと難しいことだと思っています。そこで今回は、他の人を参考にできるのはどんな人なのか、その条件をお伝えいたします。
フィナンシャルプランナーの提言をどう受け止めるか
たとえば、フィナンシャルプランナー(FP)に相談して、その対応策をFPが相談者に提案するとします。その提案を、すんなり受け入れてもらえる場合と、躊躇される場合があります。
通常、FPが相談者に提案するのは以下のような内容です。
・保険の見直しのような、家計支出の無駄をなくする提案
・資産を形成していく提案
・円満な相続が行える準備をする提案
・相談者固有のお金の問題を解決する提案
家計を改善したり、資産を形成したり、不動産を有効活用するといった提案を行います。将来に向けて、その人が思い描いた生活を送れるように資産の形成・運用をサポートしたり、また家族間でいざこざが起こらないように事前に準備しておくプランニングを提案して、そのサポートをすることもあります。
相談者の方は、FPからの提案を聞くと、将来に向けた資産形成や、相談したことの解決の道筋が示されたりして、ひとことで言うと「よい話」であることは理解できます。
しかし、提案されたことを実行すると、その提案内容によっては、毎月の小遣いを減らすことになったり、趣味の費用も削ったり、また今までの習慣を変えることが必要になったりと、実行することを考えるだけで、不安感を持つこともあります。
しかも、今は家計収支の運営は順調なのに、将来の準備のために相談したのに、今すぐに、家計支出を減らす提案をされて、FPへの不信感を持つ方もいます。
このような感情などから、「私たちと同じような家庭の方はどうなの?」という質問をされることもあるのでしょう。
Next: 「私たちと同じような家庭はどうしてる?」その疑問は無意味
比較できる家庭は存在しない
世の中で、比較できる家庭は存在しません。
なぜなら、
同じ誕生日の幼馴染の2人が、
同じ小中高校に通学して、
同じ成績で、
同じ会社に同期で入社して、
同じ給与、
同じ年に結婚して、
同じ年に子どもが生まれて、
同じ年に同じ金額の住宅を同じ街で購入して、
同じ額の住宅ローンで融資を受けて、
同じ期間で返済していくことにした。
そして、まだまだ同じことを生涯続けたとします。しかし、根本的に、個々人の性格も嗜好も違います。だから、同じような生活はできないのです。
従って、「私たちと同じような家庭の方はどうなの?」と問われても、比較できる家庭は存在しないのです。
とはいっても、比較はできなくても、参考にできる人はいます。ただし、それには条件があります。
他人の家計を参考にできる人の条件
私もFP業務で提案したことに、「私たちと同じような家庭はどうなの?」と聞かれれば、上述のように他の家庭と比較するのは難しいとお話しすることがあります。ただし、参考までにとお断りして、FPとしての業務経験をカスタマイズして、お話しすることもあります。
他の人の行動を参考にできる条件は、同じような収入がある、同じような家族構成である、といったことではありません。参考として他の家庭の例を紹介したときに、その方の行動を批判するのではなく、自分のことのように受け入れることができる。つまり、理解できる方にお話しするようにしています。
このような方であれば、他の人の行動をご自身に置き換えて、FPの提案が、その方にとって優しいものでなくても、ご自身やご家族でも受け入れて実行可能か、判断されるのです。そのためには、やはりその方ご自身の人生経験も必要となり、年齢的には40代以降の世代の方が対象となるでしょうか。
Next: 成功例をマネしてもうまく行かない。自分の家計と真摯に向き合うこと
成功例をマネしてもうまく行かない
同じようなことを他の人が行ったことを聞いても、それは参考例であり、成功例ではありません。成功例は、ご自身でしか作れないのです。
ほかの人の成功例を学ぶことは、大切なことかもしれません。しかし、お金に関わることでは、猿まねではダメなのです。
例えば、株式投資などで、収益を上げた方が執筆した本を読めば、読んだすべての人が、執筆者のように収益を上げることができるか。結果は、そうではありませんね。
『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』(2020年12月23日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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