「保険は不要」と考えるFPや経済評論家がいることが不思議です。節税効果を踏まえると、なかなか利回りの高い運用商品に仕立てることができます。それを考えると活用しない手はありません。(『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』午堂登紀雄)
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プロフィール:午堂登紀雄(ごどう ときお)
米国公認会計士(CPA)。1971年生まれ、岡山県出身。中央大学経済学部 国際経済学科卒。株式会社エディビジョン代表取締役。一般社団法人 事業創造支援機構代表理事。
「保険は無駄」という論調に違和感
以前から不思議だなと思っているのですが、相変わらず「保険は不要」という専門家がいます。
もちろん、「機能としての保険」は私も不要だと考えていて、ほとんどの人は死なないし入院もしないので、確率論から考えると貯蓄で代替するほうがオトクです。
それに保険は保険金が下りる条件・制約がありますが、「現金」はマルチに使えます。たとえばがん保険はガンの診断が出ないと保険金は下りないけれど、現金ならどんな病気やそれに伴う入院でも使うことができます。
しかし!このメルマガでも過去の著作などでも何度か書いていることですが、改めて保険の節税効果を踏まえると、なかなか利回りの高い運用商品に仕立てることができ、それを考えると活用しない手はないと考えています。
保険で合法的に「節税」できる
保険料はその払込金額に応じて所得控除を受けられ、これは国が制度として用意した、合法的かつ有利な方法です。
保険料控除は、次の3種類があります。
・一般生命保険料控除:死亡保険、養老保険、収入保障保険、学資保険など
・介護医療保険料控除:医療保険、がん保険、介護保険など
・個人年金保険料控除:個人年金保険など
平成23年12月以前の契約は旧制度の申告となり、計算が異なるのですが、平成24年1月1日以後に締結する新制度では、
一般生命保険料控除(所得税4万円・住民税2.8万円)
介護医療保険料控除(所得税4万円・住民税2.8万円)
個人年金険料控除(所得税4万円・住民税2.8万円)
で、所得税で最大12万円、住民税で最大7万円(住民税は3種類合わせても上限7万円)の所得控除が受けられます。
年収500万円~600万円で、家庭がある一般的な会社員の場合、所得税率はおおよそ10%、住民税は一律10%なので、節税できる(サラリーマンの場合は還付される)金額は、
所得税12万円 × 10% = 1万2,000円、住民税7万円 × 10% = 7,000円
所得税1万2,000円 + 住民税7,000円 = 1万9,000円
となり、年間24万円の払い込みで最大で1万9,000円の節税を受けられる計算になります(税率は他の収入や家族構成によっても変わりますので、あくまで例として)。
この時点ですでに年利7.9%という高利回りの運用商品です。
Next: 掛け捨てではなく「貯蓄型」をオススメする理由
掛け捨てではなく貯蓄型がオススメ
これらを掛け捨てではなく、満期返戻金がある貯蓄型のタイプで、返戻率(払い込んだ保険料に対し、満期や中途解約で戻ってくる金額)が高い保険に加入するのです。
たとえば私が加入している生命保険は、60歳まで払い込み65歳で受給すれば、返戻率が105%を超えます。個人年金は60歳以降の受給で110%を超えます。
確定給付型の保険はインフレに弱いですし、年間8万円以上保険に入っても税制上はメリットがありませんので、年間の保険料支払額が各々8万円を超えるギリギリの金額で加入すれば(月々7,000円弱)、少ない出費で最大の控除を受けることができます。
さらに、たいていの保険料はクレジットカードで支払うことができてカードのポイントも付きますから、1%ポイント還元のカードなら利回りはプラス1%アップ。
こうして、最大の控除が受けられる最小の金額で加入すれば、年利10%近い利回り商品となり、これが保険料を払い込んでいる期間ずっと続きます。
年利10%の運用ですよ!マイナス金利の時代、定期積立などをするよりも断然有利となるのがおわかりいただけると思います。
しかも、本人の努力や能力とは無関係、相場や為替レートなどとも無関係、誰でも恩恵にあずかれます(ただし変額保険などは外貨で運用するため為替レートの影響を受けます)。
なぜ多い?「保険は不要」と切り捨てる経済専門家
それなのに、保険は不要と切り捨てる経済専門家はなぜなのか。おそらく、節税機能を考慮せず、単に保険としての機能面のみを捉えているのでしょう。
しかし、合法的にお金を残すこともまた家計にとっては重要なはずなのに、節税を無視するのはやはり視点が欠けていると言わざるを得ないように感じます。
そして、もっと有利なのは確定拠出年金(DC)です。所得控除に上限がなく、掛け金全額が控除となりますし、これにも生命保険機能があり、加入者が障害状態になれば「障害給付金」が、死亡すれば「死亡一時金」が支払われる保険機能があります。
また、DC内で運用した金融商品の運用益は非課税で、投資信託の手数料も一般の証券口座のラインナップよりも格安。
節税や運用だけでなく、老後対策という意味でも最も有利な方法のひとつがDCだと私は考えています。
Next: どの保険に入るべき?米国公認会計士の筆者が考える保険活用術は
米国公認会計士の筆者が考える保険活用術
そこで私が考える優先順位ですが、まずDCにマックスの金額で加入し、家計の余裕があればプラス個人年金か確定給付型の生命保険(子どもがいれば学資保険もOK)、そして医療・介護保険の順です。
もちろん、いずれも所得控除が受けられる範囲の最小金額にとどめ、あとは貯蓄か別の運用に回すことが利回りを高めるポイントです。
特に医療保険で貯蓄型というのは非常に種類が少ないので、保険の相談所のようなところに相談に行くことをおススメします。
保険の種類は多く複雑で、個人が個々に情報収集するのは非常に効率が悪いように思うからです。それに、保険屋さんに相談すれば、キャッシュバックやポイントバックが受けられるところもあるので、それを利用すると相談できてお金までもらえるという、一石二鳥です。
ちなみになぜ相談は無料でさらにキャッシュバックができるかというと、保険代理店は保険会社から契約金額の〇〇%といったキックバックが受けられるからです。
個人向けの保険は金額が小さいですが、法人向け(経営者向け)の保険は契約金額も大きくバック率も高いので、私の知人で年収2,000万とか3,000万を稼いでいる人はたいてい法人保険を得意としています。
<個人年金保険>
個人年金保険はどこも同じような商品設計なので、自分の年齢から考えて何年ぐらい運用するか、そのタイミングでの返戻率が最も高いものを選べばよいと思います。
<民間の介護保険>
民間の介護保険は今のところ加入していません。要介護認定が出なければ下りない保険で、その要介護認定は公的介護財政の悪化で厳しくなっているようです。とすれば、せっかく入った介護保険なのに、認定が受けられず保険金が出ないこともある。また、その公的介護の仕組みも今後数十年経てば変わる可能性は十分ある。すると、自分が加入した介護保険では不利になるリスクがあるわけです。たとえば、公的介護保険で十分賄えるようになっているとか。というふうに、介護をめぐる制度は不透明なので、いまは入らない方が良かろうという判断です。
<生命保険と学資保険、どっちに入る?>
お子さんがいらっしゃる場合、生命保険と学資保険で迷うかもしれませんが、ここも最大の返戻率のものを選べばよいと思います。実際、そんなに死なないですからね。
ただし、住宅ローンを組む場合は団信(団体信用生命保険)には入った方が良いと思います(銀行によっては住宅ローンを出す条件になっているところも多い)。団信は生命保険と同一機能ですので(借り手が死亡や高度障害になれば、保険会社が住宅ローンをすべて払ってくれる)、住宅ローンがある人は生命保険は不要に思えます。
とはいえ、学資保険の利回りは現在は非常に低いので、返戻率ベースでの商品選定としてはやはり生命保険でしょうか。
<定期か終身か>
あと、定期か終身かという選択もありますが、私は定期にしています。
老後は年金もありますし、寿命を迎えるころには子どもたちも自立しているでしょう。老後に私が死んで家族が困窮するということも想像しにくいので、私が自分で受け取って自分で使おうと思っています。
Next: なぜ掛け捨てはNG? 貯蓄型保険にも大きなリスクがある
貯蓄型保険のリスクは途中解約
ほかに入っているのは、たとえば10年間で払い込みが終了し、その後10年間預けっぱなしにしておくことで、つまり20年後には110%とかで戻ってくる保険にも入っています。
この場合、10年間で払い込みが終了しますから、保険料控除を受けるに11年目から新たに別の保険に加入する必要がありますが。
ちなみになぜこうしているかというと、途中解約のリスクを軽減させるためです。貯蓄型保険の最大のリスクは、保険料を払えず途中解約を迫られる局面です。
途中解約すれば手数料という名目の違約金をとられ、元本割れする商品がほとんどですから、そもそも着実に払える金額に設定しなければなりません。
同時に、期間が短ければ、仮に途中で困窮しても、なんとか払込満期までは継続できる可能性が高いからです。
掛け捨て保険がNGの理由
私は現在、個人法人合わせて月100万円ほどの保険料を払っていますが、私は掛け捨ての保険は否定的で、1本も入っていません。家賃と同じく、払ったお金が戻って来ることはないからです。
確かに月額数百円とか非常に安いのが魅力ですが、これは負の宝くじのようなもので、病気やケガや入院といった望ましくない状況になった人だけがもらえる保険ですから、健康な人には逆に無駄になります。
火災保険などと違って医療費には高額療養費制度という救済制度がありますから、月10万円以上はかからない(いったんは払ってもあとで申請して戻って来る)ようになっています。
損害が甚大になるリスクがある火災保険や自動車保険、個人賠償責任保険は必須ですが、個人の医療費はそこまで備える必要性はない、そして払った保険料が全損となるのは避けたいというのが私の考えです。
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『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』(2021年1月18日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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