日銀黒田総裁が1月27日の参議院予算委員会に登場し、現在の株価水準から試算した日銀が保有するETFの含み益が12兆から13兆円あることを明らかにしました。これは意味のある数字なのでしょうか。利益を確定できなければ、何の意味もありません。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2021年1月28日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
実現益として利益確定できなければ何の意味もない
日銀黒田総裁が1月27日の参議院予算委員会に登場し、現在の株価水準から試算した日銀が保有するETFの含み益が12兆から13兆円あることを明らかにしました。
議員から質問を受けたからそう答えたのか知れませんが、この答弁にいったい何の意味があるのか。かなりクビをかしげる状況となっています。
アベノミクススタート以降、日銀が延々と国内株式ETFを買い集めているのは皆様ご案内の通り。
このETF、自作自演で購入してはさらに買増して値を吊り上げる作業をしているのですから、含み益が出ても別に何らおかしいことではありません。
逆に利益確定に動こうとしようものならば、市場が察知して株式相場は売り一色になりかねない状況です。
ですから、含み益を確定利益にできる機会はこの先もほとんどない状態で、現状でいくら含み益がありますなどと胸を張られても、何の意味もないことがわかります。
高値で買い向かうから保有コストは上昇
このETFの購入コストは、昨年までは1万9,500円とされていました。しかし、今回の発表での購入コストは2万1,000円に高まっており、明らかに高値で買い進んでいることが窺われます。
株を下げさせないように人工値付けをするということ自体、相当、自由な資本市場を疎外する動きになります。
それにもかかわらず、さらに高値を買い上げて上昇を画策することが、本当に日銀に与えられた使命なのかどうか。その点については、かなり異論も出るものと思われます。
米国FRBも資産買い入れに積極的ですが、株価を吊り上げるためにETFを買うという極めて個別株に近いところでの資産買い入れはさすがに行っておらず、このやり口は日銀ならではの手法となっています。
Next: 資本主義市場をやめるつもり? 日銀の買い支えに出口はない
資本主義市場をやめるつもり?
株価は日銀が買ってくれるから下がらないというのは、個人投資家にとってはこの上ない魅力なのかも知れません。
しかし、相場が自律的に保有する循環機能は完全に失われ、価格で調整ができない分、日柄で調整して延々とヨコ展開する相場が続くようになるのは、まさにこの日銀のトレードのおかげともいえるものがあります。
国債(JGB)の市場は、日銀の圧倒的な買い集めのおかげで、事実上、まともな相場は完全に崩壊しています。このままでいくと、日本株の市場も、債券同様にぶち壊しになる危険性は高いと言わざるをえまえせん。
旧ソ連の計画経済を模索するなら話は別ですが、今の状態のまま、日本は資本主義の相場を続けていけるのか。かなり疑問がよぎるところです。
また、これだけ圧倒的なシェアを日銀がもっていても、株価が下がるときは間違いなく下がります。2万円を下回るようになれば、日銀は確実に債務超過となって国庫から資本金を補填することも必要になるはずで、本末転倒も甚だしい事態に陥ることが予想されます。
中銀総裁は失敗したら辞任するだけ
主要国の中央銀行総裁というのは、時の政権や議会から承認を得ているとはいえ、実に不可解な政策を行うケースが多くなっています。
しかも、ひとたび甚大な損失を被るような事態に陥っても、辞任すればそれでお仕舞い。まともな責任を取らないのが現実です。
黒田総裁の場合も、そのままこのケースに該当しています。出口のないETFの買い付けに奔走しても、あとはさっさと退任するればお役御免というのは、なんとも理不尽さを感じさせられます。
Next: 為替への影響も甚大。日銀のETF買いは容認できない
日銀のETF買いは容認できない
恐らくETFで巨額損失が出れば、別法人を建ててそちらにETFを移管し、長期的に損失を減らしていくようなスキームをすでに考えているようです。
しかし、そんなことをして後世の社会にプラスになるのかどうか。相当、大きな問題が残りそうです。
果たして日銀のこんな動きを無制限に容認していいものなのでしょうか。これは為替にも相当な影響を及ぼすだけに、もはや見て見ぬふりはできなくなりつつあります。
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『今市太郎の戦略的FX投資』(2021年1月28日号)より抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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