米国議会にて、現在7ドル25セントの最低賃金を15ドルに倍増させる法案がいよいよ審議されることになり注目を集めている。もし通過となれば、大失業時代が到来しかねない。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2021年2月24日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
米国の最低賃金「15ドル(約1,580円)」に引き上げ
トランプ弾劾も予想通り不発に終わり、米国議会はいよいよ民主党政権が掲げる経済対策等の中身について審議入りしています。
そして、予備選挙のときから左派のバーニーサンダースが声高に掲げていた「最低賃金15ドル」の法案がいよいよ審議されることになり、注目を集めています。
コロナ対策景気刺激法案には、現在7ドル25セント(約765円)の最低賃金を、15ドル(約1,580円)に引き上げることが盛りこまれているわけです。
人件費が高い米国でも、765円で人を働かせていたのか?という驚きがあるのも事実。
たしかに15ドル程度まで引き上げるのは低所得者にとってはかなりプラスに働くでしょうし、実態として7ドル25セントで働いている人などはほとんど存在しないといった議論も聞かれます。
しかし、需給で決めればいい雇用単価を政治が法律で縛るとなると、想像以上に抵抗が起きるのもまた米国社会の特徴です。
特にこの法案が段階的実施でも成立した時には、結果的に企業からの雇用が減る可能性があるといった指摘も多く出てきています。
企業が人を雇用しなくなる?失業者「急増」の危険性
バイデン氏は大統領就任直後に40以上の大統領令にそそくさとサインをした以外は、記者会見にも積極的に応じることはなく、最近のメディアへの登場ではまるでカマラ・ハリス氏が大統領であると錯覚させるかのような見え方もしており、かなり微妙な存在になりつつあります。
そんな中でこの15ドルへの最低賃金引き上げは、反トランプを掲げるこの政権の中では最も具体的な公約となっています。
そのことから、単純に議会で否定されて反故になるのか、サンダースの強烈なアピールに応えるように見事に議会を通過させられるのかが大きな注目点になりつつあるのです。
ただし、この法案が見事成立してしまいますと、労働コストに危機感を覚える企業がパートタイムをはじめとして労働者を逆に雇用しなくなるという最悪の事態に進展することも考えられます。
労働者の待遇を改善するはずの法案通過が逆に、失業者を増加させるという皮肉な事態に陥る可能性が出始めているわけです。
財務長官のイエレンは経済学の中では労働関連の専門家ですが、時給を上げると雇用が減るからやめたほうがいいとは言えないはずで、この問題は意外な形で大きな波紋を呼ぶことになる危険性がありそうです。
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米雇用統計に出てくる数字は「ギミック」だらけ
そもそもFX投資家の界隈では、今も依然として月1回の米国の雇用統計は特別なイベントとなっています。
しかし、この統計を冷静に見ますと、まずNFPと呼ばれる非農業部門雇用者数は、週に1回1時間でもパートタイムを雇い入れれば1人とカウントできる相当お気楽な数字です。
こうした限られた労働時間に従事する人たちを含めて10万人だ100万人だと言っては泣いたり笑ったりしているのが現実で、実際は本当に誤差範囲で大勢に影響がないのが実情でしょう。
毎月NFPとともに発表される平均時給も、5%上昇だ!8%上昇だ!と良い数字が出ればドル買いにはなっています。
ですが、そもそも時給15ドルを法定単価にすると言ったとたんに大きく雇用機会が消滅するというのですから、こんな数字はおよそ何の役にもたたないことが窺われる状況です。
格差を広げたコロナ相場
昨年のコロナ禍の相場の暴騰で、持てる者と持たざる者との経済格差はますます広がりをみせています。
株価上昇で儲かったのは、結局の所、もともと金持ちの長者だけという非常に大きな問題が顕在化しつつあります。
この最低賃金15ドル確定のよる失業者増加は、数からいえば大したことではないのかもしれません。
しかし、貧乏人で単価の安い仕事しか受けられない層にとっては死活問題ですから、ここからは相当、注意して見守る必要がありそうです。
Next: トランプが去っても平穏は来ない。バイデン政権が次の波乱要因に
バイデン政権が次の波乱要因に
なにより新政権では、ことごとく民主党左派の連中を排除してしまったバイデン氏。
ほとんど社会主義者に近いサンダース、ウォーレン、AOCなどがこの件でどれだけ政権を攻撃してくることになるのか。
これも大きな注目点となりそうです。
そもそも、最初から軍産複合体礼賛者と左派とがうまくやっていけるはずもないのは見えていることですから、実際の審議の進捗も見ものになりそうです。
トランプがいなくなって米国には平穏と民主主義が戻ってきたかのような印象を持つ方も多いと思いますが、問題はなんら片付いていないのが実情です。
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