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誕生・出産を全否定する“反出生主義”が間違っている7つの理由。「なぜ貧乏なのに僕を産んだの?」にどう答えるか=午堂登紀雄

いま「反出生主義」という考え方が注目を集めています。人生は苦痛であり、生まれることや産むことを否定する考えです。私はこの考え方に反対の意見です。(『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』午堂登紀雄)

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プロフィール:午堂登紀雄(ごどう ときお)
米国公認会計士(CPA)。1971年生まれ、岡山県出身。中央大学経済学部 国際経済学科卒。株式会社エディビジョン代表取締役。一般社団法人 事業創造支援機構代表理事。

生まれることも産むことも悪いこと?

いま「反出生主義」という考え方が注目を集めています。ウィキペディアには、「生まれることおよび子を持つことを否定的に価値づけ、子を持つことを道徳的に悪いと判断する倫理的見解である」と書かれていました。

私はこの考え方に対して、反対の意見を持っています。なぜ間違っていると言えるのか。今回はその根拠を説明したいと思います。

反出生主義について調べると、おおむね次のような主張で構成されています。

「生きていれば苦痛を感じる。逆に言えば、生まれてこなければ苦痛を感じることもない。だとしたら全ての人にとって生まれてこないのが一番いいに決まっている。つまり全ての人間は生まれてこない方が良い。だから全ての人間は子どもを産むべきではない」

「人生には苦しいこともあるが、楽しいことや喜びもあるじゃないか”という反論があるかもしれないが、楽しいことがたくさんあったとしても、苦しみが一つでもあったら意味がない。楽しみが何かの苦しみによって一瞬にして無意味になったという経験は誰にでもあると思う。ならば生まれる前の楽しみも苦しみもない無の状態の方が100%いいに決まっている」

「一旦生まれた人に対して死んだ方がいいなどという考え方ではなく、産まないことで人を減らしていくということ」

「環境破壊や核戦争のような不幸を伴う人類滅亡よりも、子を出産しないで人口減少による人類滅亡ならそれほど苦痛を伴わないし、そのようにして苦痛の犠牲者が存在しない世界になっていくのは、むしろ良いことではないか」

「幸福な人生を送る人がたくさんいる一方、地球のどこかに必ず不幸な人生を送る人が少なからずいるはずで、こんなにひどい絶望を味わっているのは生まれてきたせいだ。その意味で出産は一定の犠牲者を作り出すシステムだし、だからこそ全ての人は出産すべきでない」

「“子どもが欲しい”というのは、根本には“親のエゴ”がある。そして、まだ生まれてきてない子どもの視点に立てば、不幸になる可能性をどこまで考えてるの? と問いたい。“幸せにしてあげる”と親が思っていたとしても、病気に罹ったり、不慮の事故に遭ったりする可能性もある。今のコロナ禍でも、不幸に巻き込まれる可能性が実際にある。例えば子どもが性被害やDV被害に遭ってPTSDになっても、親も社会も責任なんて取れない」

「すでに生まれた人が生きていく意味や苦痛を乗り越える方法を考えたり、人生を肯定していくことは大切。ただ、そもそもそういう苦痛が生じさせないというのが、反出生のいいところ。“それじゃあ幸せも生まれない”という反論もあるかもしれないが、主体が幸せか不幸せかを認識しない状態になれば、別に問題にはならないのではないか」

「出産を否定し、まだ生まれてきていない人たちが不幸になる可能性がゼロになることの方がメリットは大きい」

「苦しみが存在しない世界を作るのは、むしろ良いことではないか」

間違っている理由その1:人生に疲れて現実逃避している

この「反出生主義」は、どこか傷つきやすく、打たれ弱い現代人の典型的な思考パターンだなという印象を持ちます。

たとえば、フラれて傷つくのがイヤだからといって「人を好きになってはいけない」「人類は恋愛をしてはいけない」と周りに説いて回っている人をどう感じるでしょうか。

そういえば最近、ライトノベルや少年コミックで「異世界転生系」というジャンルが人気になっていることと無縁ではないような気がします。異世界転生系とは、現世でパッとしない主人公が、事故で死んだり魔術で召喚されたりして、異世界に転生するというストーリーです。さらにほぼ共通している要素が「魔法が使えて、異世界で大活躍する」という点で、そこでカワイイ女の子ばかりに囲まれて冒険者になるとか、おおむね似たようなパターンです。

ここから透けて見えるのは、大活躍して周囲から賞賛されたいのに、現実はそうではなく、未来に希望も持てず、かといってやりたいこともなく努力も面倒で、手軽に変身したいという願望です。

この願望と、出生を否定し無の状態になれば苦しまずに済むという反出生主義も、同じような現実逃避的思想のように感じます。

Next: 苦痛は「本人がどう受け止めるか」次第。喜怒哀楽はぜんぶ必要だ



間違っている理由その2:苦痛は「本人がどう受け止めるか」次第

「苦しみや苦痛がない世界が望ましい」ということですが、そもそも客観的な「苦しみ」というものは存在せず、本人がどう受け止めるかの要素が非常に大きいため、人類全体に拡大解釈するのは論理的に無理があります。

たとえば部活の練習を「苦しい」と感じる人もいれば、「楽しい」「充実してる」「強くなるためだ」と感じる人もいるとおり、「苦しみ」だと感じる「その人の問題」であって、「人類の問題ではない」のです。

また、「楽しいことがたくさんあったとしても、苦しみが1つでもあったら意味がない」というのは、受け身で心が未成熟な人の発想に感じます。たとえばパラリンピックの選手が、「苦しみがあったから自分の人生は意味がない」と考えるでしょうか。障害をきっかけに、自分のやりたいことや方向が見つかったという人もいるはずです。

そもそも大人になれば、仕事も住む場所も人間関係も選べます。だから苦しいとかイヤだと思えば自分で(ある程度は)変えることができます。

「そんなに簡単ではない」という人は、檻の鍵は空いているのに、鍵がかかっていると思い込んで檻の中に居るようなものです。

これは「自分も頑張っているのに報われない」と悲観する人の思考パターンに似ていて、「環境は誰かから与えられるものだ。その中で努力して報われないということは、その環境を作った誰かが悪いんだ」という環境に依存した発想です。でも実際には、全部自分で決められること。

また、自分がひとつひとつ物事を達成していくことで、自分に自信を持てるようになり、自己信頼感や自尊心を獲得していくものです。そういう鍛えられた自尊心・自己肯定感があれば、ちょっとやそっとの苦しい出来事があっても、いちいち悲観したり絶望したりなどしなくなります。筋肉は運動によって細胞が破壊され、それが補修されることで強くなりますが、心も同じ。恋愛でも、傷つき苦しんだからこそ次の恋愛ではもっとうまくできる、ということもあるとおり、自分がバージョンアップするための苦しみというのもあるわけです。

私も公認会計士の受験勉強はしんどかったですし、外資コンサルでのハードな経験もありましたが、だからいまの自分があると思っています。

つまり「ひとつでも苦しいことがあるのはダメだ」というのは、逆境を乗り越えた経験、努力して成し遂げたという経験が乏しく、それによって自分が成長したという実感を得られていない人なのかもしれません。

間違っている理由その3:苦しみも不安も「必要な感情」

たとえば「不安」という感情は、危機察知能力のひとつです。不安がなければ、たとえば安易にヤブの中に立ち入ってヘビなどにかまれるリスクがあります。

つまり不安とは、自分の命を守るために動物に備わっている生存本能の1つであり、生きるうえで不可欠なものです。

ほかにも「悩み」には「向上心」「成長欲求」という意味があります。「こうなりたい」「こうありたい」という成長欲求があるからこそ、まだ理想に到達できない自分や自分の状況に悩むわけです。

嫉妬という感情が起こるのも「自分の優位性が脅かされたとき」ですから、恐怖や不安と同じく、人間の防御本能ととらえることができます。「他人のほうが自分より優位にある」のは「自分の生存が脅かされる」ということで、「このままではいけない」と気づくことでもあります。つまり嫉妬は「もっと努力が必要だと気づくチャンス」「自分が大切にしているものの自覚」になると考えることができます。

そして私たち人間は、それら喜びや悲しみ、嫉妬や劣等感、達成感や感動など、ネガティブにしろポジティブにしろ、様々な感情を体験するなかで、重層的な「自分」を形成していきます。

しかし、傷つき悲しみ悩むといった感情を経験しないと、その方面では非常にもろく、偏ったメンタル、弱点を残したまま大人になります。そしてもし、自分の弱点がさらされる場面に遭遇すると、ひどく動揺したり、落ち込んだり、思考力が低下し適切な判断ができず、不利な状況になってしまいかねません。

一方、これら人間が抱くあらゆる感情を経験し、それを適切に処理し乗り越えていくと、精神は成熟していきます。その積み重ねによって、少々のことでは動じない強い心が養われます。逆境や絶望を感じる場面においても、安易にパニックになったり挫折したり自暴自棄になったりすることなく、冷静に対処できるようになります。だから多感な10代の頃は最も悩みや不安を抱える時期で、これも必要だからこそなのでしょう。身体が成長するだけでなく、そうやって心も成長していく。

だから「苦しい」と感じるのも、自己防衛本能かもしれないし、成長途上の「産みの苦しみ」かもしれませんが、必要だから起こっているのです。

つまり苦しみはそもそも「悪いこと」「いけないこと」「避けるべきこと」「忌み嫌うこと」ではないということです。

反出生主義者は、このところに根本的な誤解があるように感じます。

Next: 人間の存在は無意味か?「みんないなくなればいい」という思考停止



間違っている理由その4:人間が存在しているのには意味がある

「人間のあらゆる感情は意味があるから起こっている」と述べたことと同じく、「地上に人間が存在するのも意味があるから」なのでしょう。必要がなければ人類など生まれてこなかったはずです。

たとえば、ゴキブリなんてただ歩いているだけで殺虫剤を吹きかけられますし、蚊はただ食事をしているだけなのに問答無用で叩き潰されます。こんな理不尽な生き方はないでしょう。

それでも、意味があるから存在しているわけです。

本当にサルから人間に進化したのか、あるいは突然ひょっこり人類が誕生したのかはわかりませんが、いまだ地球上には人類以外に高度な知能を持つ生命体は存在しない(存在したら戦争になりそうですが)。

むろん人間の存在が他の種を絶滅に追い込んだり、生態系を乱すこともあるわけですが、逆に知性があるからこそそれに気が付き、知性があるから防ごうとするわけです。ノラ猫がよそのネコに「ささっ、ここのおいしいところを先にガブっとやってください」と魚を分けることはしないでしょう(ライオンなどは序列があるようですが)。

だから人間には、ゴキブリや蚊のような理不尽な仕打ちを受けるのを防ぎ、なくそうという知性がある。苦しんでいる人がいれば救済する仕組みを作ろうとしている。だから人間はいまだ存在し続けるのでしょう。というわけで(?)いまのところ、人間の存在を否定できるのは「神様」ぐらいではないでしょうか(知らんけど)。

人類が文明を築き、社会活動が複雑化し、その中でいろいろな立場の人が生まれるのは必然であり、「苦しみから逃れる」というただ1点のために出生を否定するのは、かなり短絡的な発想のような気がします。

多くの人は、「苦しみを感じるくらいなら生まれない方がいい」とは感じないと思います。なぜなら、苦しいことだけで生が否定されるほど、人間の人生は浅くないし単純でもないことを本能的に悟っているからです。

「苦しみから逃れる」というメリットは、「人生を謳歌する」という巨大なメリットの前にはかすんでしまうのですから。

間違っている理由その5:「みんないなくなればいい」は思考停止

反出生主義は「存在しなければ幸福も不幸も感じないから何も問題はない」というのですが、これは究極の思考停止のように感じます。

なぜなら、何も考えなくていいからです。

生きていればいろんな問題に直面するわけですが、そのたびに私たちは考え、解決しようとします。しかし生きていなければ何も問題は起こらないので、考える必要はありません。こんなラクなことはないでしょう。

しかし私個人は、いろんな問題を乗り越えていくことで自分が成長する実感が得られるし、(精神的な)痛みを感じるからこそ、生きている感覚があります。もちろん本当に痛いのはイヤなので、虫歯治療に麻酔は必須です(笑)。

たとえば、私は交通事故に遭わないよう、仮に遭っても自分が不利にならないよう備えを万全にしています。先進の安全支援システム搭載の車を選び、前後ドライブレコーダーを付け、自動車保険には弁護士特約を付けて安全運転を心掛けています。死亡事故が多い川遊びもしないし、スカイダイビングも怖いのでやりません。首都直下型地震や富士山の噴火といった災害に備え、備蓄や避難場所の確認をしています。お金があればたいていの問題は解決できるので、いかに収入を増やすかに比重を置き、不動産や太陽光、株や仮想通貨などに投資しています。

そんなふうに苦しいとか痛みとかが予想されるなら「どうすれば避けられるか」を考えることも充実した時間だし、仮に直面しても乗り越える方法を考えるのもまた充実を感じられます。そうやって考えること、課題を設定し解決することは、私にとって重要かつ満ち足りた在りようで、毎年最高益を更新する自分を実感できる人生は楽しいと感じています。

しかし反出生主義者は、そういうことを考えることすら面倒なのかもしれません。

Next: 子どもが欲しいのは親のエゴだが、産まないのもまたエゴである



間違っている理由その6:子どもが欲しいのは親のエゴだが、産まないのもまたエゴである

「子どもが欲しいのは親のエゴだ」は確かにそのとおりですが、とはいえ、そもそも生物としての本能でもあり、これを否定すればすべての生物の存在を否定するということになるでしょう。ノラ猫だって他のネコとケンカして傷つくなど苦しい思いをしていると思いますが、それでも生きようとするからこそ命の尊さを感じます。野生動物のドキュメンタリー番組や映画が一定の市場規模があるのも、そういう理由もあるのだと思います。

それに、「子が不幸になる可能性を考えているのか」という意見ですが、幸福か不幸かは死の床を迎えて人生が終わるその日でなければわかりません。人生の前半で大活躍しても、後半で台無しになることもあります。あるいはケンタッキーフライドチキンの創業者、カーネル・サンダース氏のように、人生の最終コーナーで大逆転ということもあるわけです。

たとえば学校でいじめられている最中は、そのピンポイントを見れば不幸かもしれません。しかしそれを乗り越えて成長し幸福な最後を迎えられたとしたら、それは「あの頃があったから」というポジティブな評価になる場合もあるでしょう。すると、その人の人生にとって、その不幸(だと当時感じた出来事)は「その人の幸福のための必要悪だった」「その人が幸福を得るために克服すべき試練だった」と言えなくもありません。

確かに子どもが事故や病気、虐待に遭うということは現実にも起こっています。しかし、だから子を生まない方がいいというのは拡大解釈というか短絡的過ぎで、逆に「どうすれば防げるか」「起こったときに救う方法」を考える方が、社会全体からすれば効率的でしょう。

飛行機事故が起こるから飛行機なんて作らない方がいいとはならないように、全否定ではなく対策を考えることこそ「知性」でしょう(まあ、現実には「原発事故が起きるから原発はなくせ」という意見は多いですが)。

人生を楽しむのは自由。同じエゴなら「子を産むエゴ」を選びたい

もうひとつ、私は子が「自分の人生を自ら切り開くという醍醐味」を、親のエゴで奪いたくないと考えています。たとえば、子に財産を遺すのは親のエゴですが、逆に私のエゴは「遺すと考える力を奪う」と考えて財産は遺さないつもりです。

同様に「産まない」のも親のエゴなわけですが、同じエゴなら私は産む方を選びたいです(あ、私は男なので産めませんから「子を持つ」でしょうか)。

なぜなら、資産も人脈も能力も何もないゼロから切り開き、何かを成し遂げるという醍醐味は、生きていればこそ味わえるわけで、これは本当に素晴らしいことだと思っています(私自身が無職・貧困から成り上がっただけに、おそらく生存者バイアスがあるとは思います)。

Next: 子どもに「産んでくれと頼んだ覚えはない!」と言われたら?



間違っている理由その7:「生き方を選べる」のが最大の民主主義

結局「反出生主義」は、そう思う本人だけがそうすればいいだけで、他人に押し付ける性格のものではない、というのが私の率直な感想です。

私個人は自分の生き方について他人からの干渉を徹底的に排除したいと思っています。そのため、生き方を自分で自由に選べる民主主義国家である日本は素晴らしいと思っています。

コロナでもロックダウンといった厳しい外出制限が行われないのも、一国の宰相をコケにする発言をしても逮捕されないのも、日本は世界でもトップクラスで人権・主権・私権が保護されているからです。

たとえば「ヴィーガン」という菜食主義者がいますが、これもやはり本人がそういう生き方を選ぶのは自由です。しかし私が彼らを好きになれないのは、それを周囲にも押し付け、自分とは違う他人を否定する言動をする人が少なくないためです。「健康のために菜食中心にしてます」程度ならいいのですが、「動物を殺すのはエゴだ、生命の軽視だ」などと肉食を否定するから胡散臭く感じます(そもそも植物も生命のひとつですよね?)。

彼らは自分の正義が正しく、その正義を周囲も実現するべきだという思い込みがあるのでしょう。しかし正義なんてひとりひとり違いますし、そもそも客観的な正義などありません。ほとんどの場合は「自分にとって都合が良いこと」が正義なのですから。

同様に、子を持つ持たないのは本人の自由なのに、「全ての人間は子を産むべきではない」などとその人の正義を他人に押し付けようという圧力を感じるから、余計に胡散臭さが増します。というか「他人を道連れにして自殺したい人」のような、ちょっと危うさすら感じます。

そういえば「正義という剣を振るってもいい人の定義」を、あるアニメで見たことがあります。「自分の正義を他人に押し付ける傲慢さへの自覚、自分の正義を実現させるだけの力と能力、自分の正義が周囲を幸せにするという信念、自分の正義を貫いた結果の責任を取る覚悟、これらをすべて満たせる人だ」なるほど……。

そしてここでハタと気が付きます。「自分の考えを他人に押し付けるな」という押し付けをしている自分に(笑)。壮大な自己矛盾劇場でしたね。

子どもから「産んでくれと頼んだ覚えはない!」と言われたら

話はちょっと変わりますが、反抗期を迎えた子が、親子ゲンカのときに「産んでくれと頼んだ覚えはない!」というものがあります。

これを言われたらたいていの親はショックを受けると思いますが、これで親が動揺してオロオロたり、反対に「親に向かってその口のきき方はなんだ!」「誰が養ってると思ってるんだ!」などと怒りをあらわにすれば、かえって逆効果です。前者の反応をすれば子は親を見下すし、後者の反応をすれば子はふてくされるだけ。

それこそ親が逆ギレし、「あんたなんて産むんじゃなかった」「こっちだって頼んだ覚えはない」などと言おうものなら、子の自尊心は大きく傷つき、その後の人生に悪影響を与えかねません。

とはいえ、理論的に考えても生まれる前に親に頼める人なんていないわけで、「産んで」と頼むことも「産まないで」と頼むことも現実には不可能なわけです。

実際、「それじゃ逆に聞くけど、親に頼んで生まれてきた人っている?」「どうすれば生まれる前に産んでとか産むなと親に頼めるの?その方法を教えて」と反論してみても、イヤミぐらいの効果しかないでしょう。

あるいは、「じゃあ、どうしたら生まれてきて良かったって思える?パパとママが家を出ていくこと?パパとママが死んだ方が幸せ?」などと強迫してみる感じでしょうか。

Next: 親は感情的にならず寄り添うこと。反出生主義の押し付けは間違っている



親は感情的にならずに寄り添うこと

ただ、このセリフは子どもなりに不満やら不安やらを抱えた心の悲痛な叫びでもあるので、寄り添ってあげることが必要ではないかと思います。

もちろんいろいろな親子関係があるし、子の心の成熟度合い、精神状態にもよるので一概には言えませんが、「もし私が自分の子に言われたら、どう返すか」を考えてみました。

「そうだねえ。誰も頼んでもいないし誰からも頼まれてもいないけど、パパとママはお前が生まれて来てくれてうれしいよ。パパとママも、自分の親、つまりあなたのおじいちゃんとおばあちゃんに産んでくれと頼んだことはないけど、やっぱり同じように喜んでくれたよ。親子って、頼んだり頼まれたりしてできる関係じゃないからね。でもそう言うってことは、何か不満があるということだろう?それを教えてもらえるかな?」

「それと、親は親としての保護責任がある。それを放棄すれば、パパとママは「保護責任者遺棄罪・不保護罪」で逮捕・収監される。そしてあなたは児童相談所に連れて行かれ、見ず知らずの他人と生活しなければならない。しかしそこでは今以上に自由を奪われることもある。だからパパとママはそうならないよう、パパとママが良いと思っていることをしている。違うというなら何がどう違うのか、どうしたいのか、わかるように説明してほしい。あなたの考えに納得できるならもちろん取り入れたい」

「ただし、権利と義務はワンセットであるように、受け入れてほしいことがあれば、自分も何かを受け入れる必要があるというのはわかるよね。もし一方的に自分の主義主張だけを受け入れてほしいというなら、それは「ムシがいい」ということになる」

「そして高校を卒業すれば家を出て好きに生きればいい。大人になったら親に関係なく何でも自分で決められる。でも未成年では契約の当事者になれず、親の同意がなければ家も借りられない。だから成人するまではパパとママがあなたの生活と教育に責任を持っている。その間はいろいろ不自由だと感じるかもしれないけど、成人後は80年間も自由な時間が生まれることになるわけで、これってすごいことじゃないか?」

これが効くかどうかはわかりません。しかし子が自分のことを見てほしい、聞いてほしいという願望からのセリフなので、この場面で親がやってはいけないことは、「逆上する」「無視する」「抑えつける」ことではないかと思います。

ほかにも親子ゲンカの勢いでたまたま飛び出す「このクソジジイ!」「このクソババア!」などの暴言程度なら、軽くかわすだけでも問題ないでしょう。

「へえ、どのへんがクソなの?」「ジジイは祖父でババアは祖母だから日本語間違ってるよ。クソパパ、クソママでは?」「じゃあお前はクソ夫婦から生まれたダブルクソ野郎や~♪」などというのは余計に怒りを買うでしょうか?(笑)

「貧乏なウチ、サイテー」

ほかにも、子が欲しいものを買ってもらえないときに親に向かって言うセリフに「貧乏なのになんでオレを産んだんだ!」「貧乏なウチ、サイテー」というものもあるでしょう。

実際、ネットでも、「娘(15歳)が開業医の娘と仲良くなり、スマホ2台目を欲しいと言い出した。そんな余裕ないし、そもそも2台も必要か?友だちは使い分けしてるらしい。それで『貧乏人の子で最悪!』と言われた。うちは裕福じゃないけど普通の家庭です。ああ、腹立つわー」という親の嘆きが投稿されていました。
※参考:お金持ちの友達ができた娘が「うちは貧乏で最悪!」と文句。親はどう対応するべき? – ママスタセレクト(2021年2月13日配信)

そこで、自分ならこう言うかもしれません。

「1台のスマホで電話番号2つ持てるしメールアドレスも複数持てるから全然使い分けられるよ。そのお友達、ITリテラシーが低いから2台持たざるを得ないんじゃないの?それじゃ家がお金持ちでも、むしろ気の毒では?」

つまり貧乏だから買えないのではなく、必要性・重要性・優先順位・費用対効果が低いから買わないということ、代替手段やほかの方法があることで説得する必要がありそうです。

そういえばわが家でも最近、長男(6歳)が「ニンテンドースイッチが欲しい!」とねだるようになっています。どこで知ったのか、おそらく学校の友達からの情報だと思いますが、いまでも帰宅するとタブレットで動画やゲームアプリに夢中なので、与えてしまうとゲーム廃人になりそうな予感。いまは「高学年になったらね」とかわしていますが、本気モードになってきたらどうしよう。「ゲームがしたいなら自分で作れ」といってPCを与えようかと思っています。

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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2021年7月6日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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フリー・キャピタリストとは、時代を洞察し、自分の労働力や居住地に依存しないマルチな収入源を作り、国家や企業のリスクからフリーとなった人です。どんな状況でも自分と家族を守れる、頭の使い方・考え方・具体的方法論を紹介。金融・経済情勢の読み方、恐慌・財政破綻からの回避方法。マネタイズ手段としての資産運用、パソコン1台で稼げるネットビジネス、コンテンツを生み出し稼ぐ方法。将来需要が高まるビジネススキルとその高め方。思考回路を変えるのに役立つ書籍や海外情勢など、激動の時代に必要な情報をお届けします。

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