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カジノ誘致で再び波乱「横浜市長選」が握る菅政権の命運。秋の衆院選を占う試金石に=原彰宏

秋の総選挙を占う重要な選挙として8月22日「横浜市長選挙」が注目されています。与党は菅首相の悲願だったカジノ誘致を諦めたのか、カジノ反対派の「勝てる」候補者を送り込んでいます。横浜市民のための選挙ではなく、政治のための選挙と化しました。菅首相にとって絶対に負けられない戦いとなっています。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)

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2021年は「選挙の年」

2021年は「選挙の年」です。国政の衆議院総選挙が必ずあるということもさることながら、大注目だった東京都議選があり、さらに多くの地方自治体の首長を選ぶ年でもあります。しかも主要都市の選挙が目白押しです。

終わった選挙も含め、1年を通してカレンダーに沿って見てみます。

<地方自治体>

1月  山形県知事選挙
    岐阜県知事選挙
3月  千葉県知事選挙
    千葉市長選挙
4月  秋田県知事選挙
    秋田市長選挙
    福岡県知事選挙
    富山市長選挙
    松江市長選挙
    名古屋市長選挙
5月  さいたま市長選挙
6月  静岡県知事選挙
7月  東京都議選挙
    奈良市長選挙
    兵庫県知事選挙
8月  横浜市長選挙
9月  茨城県知事選挙
10月  岡山市長選挙
    佐賀市長選挙
    川崎市長選挙
    神戸市長選挙
    山口市長選挙
    長野市長選挙
11月  広島県知事選挙
    宮城県知事選挙
    福島市長選挙

<国政>

4月  参院長野選挙区補選
    参院広島選挙区再選挙
    衆院北海道2区補選
10月  参院静岡選挙区補選

そして、秋には「衆議院総選挙」があります。

今の衆議院議員の任期は10月21日(任期4年)、任期満了による総選挙は、終わる日の前30日以内に行うものとなっていますので、任期満了選挙なら、投開票日は、原則9月26日、10月3日、10日、17日の4パターンとなります。

解散総選挙なら、公選法の規定で投開票日は11月28日まで先送りすることができます。

この国政を占ううえで重要なのが東京都議選と言われていますが、今年は都議選と同等、いやそれ以上に重要な選挙があります。

それが「横浜市長選挙」です。

衆院選の結果を占う重要な戦い「横浜市長選挙」

前述した2021年の選挙カレンダーを見ても、東京都議選と横浜市長選挙は折り返し地点に位置し、衆議院選挙直前の「ビッグイベント」と位置づけられています。

菅義偉総理のお膝元での選挙ということもありますが、ここまでの重要な選挙で、自民党はことごとく議席を落としてきていたという流れの中に、横浜市長選挙があるということが重要になってきます。

自民党は、国政の補欠選挙や再選挙は全敗、静岡県知事選も破れ、東京都議選は、第一党にはなったものの都民ファーストとは僅差でした。

ここで、総理のお膝元での選挙で野党に負けることがあれば、自民党内からは、菅総裁では衆議院総選挙には勝てないという機運が高まってきてしまいます。

Next: 菅総理を担ぐか降ろすか。横浜市長選が自民にとって負けられぬ戦いに



国会議員の仕事は「選挙に勝つこと」

そもそも国会議員は、自分の選挙のことしか考えていないですからね。

義理も人情もなく、総理も総裁も関係なく、自分が当選するために今の自民党総裁は担げるか担げないかしか、考えてはいません。

それは派閥の領袖も同じで、自分たちの勢力を伸ばすために1人でも多くの国会議員を選出しなければならないわけで、自民党総裁の評判は自民党議員の評判に繋がりますので、横浜市長選挙の結果次第では、派閥領袖たちは、菅総裁を担ぐか降ろすかを決めてくるのではなおでしょうか。

国会運営は「頭数」です。中身がなくても、数えられる「頭」があればそれで良いのです。

「数は力」「数が正義」そこに群がる“当選欲”むき出しの候補者たち……この構図が、政治家を劣化させたような気がしますね。

小選挙区制の「負の部分」が出ているようです。

対立する2つのしっかりとした勢力があることで常に政治に緊張感を持たらすのが、小選挙区制の目的なのですが、日本では、一党独裁を作る道具として、一種の“選挙テクニック”として使われているようです。

政党得票数と国会議員数が連動していないですからね。

得票総数は与野党僅差にも関わらず、場合によっては野党のほうが得票総数は多いにもかかわらず、実際の国会議員の数は、圧倒的に与党のほうが多いという現象が生まれています。

選挙制度の理念と現実のギャップが、どうやら大きくなってきているようです。

菅総理にとっては絶対に負けられない選挙

菅総理にとっては絶対に負けられない選挙が「横浜市長選挙」だということです。

それは言わずもがな、自身の保身のために…です。横浜市長選挙は市民のためではなく、自民党総裁延命のためにあるのです。地方選挙は、あくまでも国政選挙への“はずみ”に過ぎないのでしょうかね。

負けられない自民党としては「勝てる候補」を送り出さなければなりません。横浜市のことを考えている候補でもなければ、横浜を大きく育てようという志のある人でもありません。とにかく「選挙に勝てる人」が立候補しなければならないのです。

そういう観点から自民党党本部では、早くから林文子現市長は擁立しないと決めていました。菅総裁自ら、林市長に「不出馬」を促していましたからね。高齢であること、多選であることは、横浜市民の印象は悪いですし、何より、選挙期間中には言及していなかった「カジノ誘致」に舵を切ったことに対しては、横浜市民の印象はかなり悪いです。

単に「勝てる候補者」として、横浜市民に“受ける”として、三原じゅん子参議員などの名前も挙がっていました。このような候補者選別方法って、市民をバカにしていると思わないのでしょうか。三原議員に首長としての資質があるとするなら、謝ります。

おそらく水面下でいろんな調整があり、有力支援者たちのお眼鏡に叶うかどうかの品定めもあって、候補者調整を行った結果、「小此木八郎前国家公安委員長」という、現職閣僚を送り出したのでしょう。

国民の目からすれば、「東京オリ・パラが開催される直前に、国家公安委員長を交代させるような状況を作るとは何事か」という思いもあるのではないでしょうかね。

国家よりも横浜市長選挙ですか…?
国民の安全よりも選挙のほうが大切なのですか…?

横浜市長選挙を巡って何が起きているのか、横浜市長選挙から何が見えてくるのか、今のところ10人もの候補者が名乗りを上げている状況は何を意味するのかを、じっくりと考えてみたいと思います。

選挙なので、“表”で訴えている「争点」と、水面下での「選挙テクニック」は、分けて考えるべきでしょうね。

Next: なぜ小此木八郎氏なのか?横浜市長選で起きていること



なぜ「小此木八郎国家公安委員長」なのか

横浜には強力なフィクサーがいます。藤木企業株式会社、藤木グループ総帥・藤木幸夫代表取締役です。「ハマのドン」と呼ばれ、自身の会社が港湾物流を手掛けることから、横浜港運協会の会長も務めていました。横浜エフエム取締役会長、株式会社横浜スタジアム元取締役会長と、肩書だけを見ても、横浜という地域に大きな影響力があることが、容易に伺えます。

藤木氏が動けば、大きな票が動くのでしょう…。

「横浜プライド」という標語を掲げて、横浜港山下埠頭の再開発に関する提案、具体化を図ることを目的とする、横浜港運協会を母体とした一般社団法人ハーバーリゾート協会(YHR)があります。2019年に藤木幸夫氏が設立したもので、ここには、横浜港の港運事業者244社が加盟しています。

ホームページを開けば、一番最初に「横浜プライド」という言葉が目に飛び込んできます。その下に「先人たちが築いてきた礎の上に…」という表現から始まる文章がありますが、まさに、この年代の人たちが好んで使う表現のように思えてなりません。
※参考:横浜港ハーバーリゾート協会

「再開発」という言葉がキーワードです。この表現が、今までの藤木氏と自民党との繋がりの強さを強く感じさせる表現にも思えます。

横浜市選出の、小此木八郎元国家公安委員長のお父様の小此木彦三郎議員と懇意の仲だったことは、すごく頷けますね。小此木彦三郎氏は、第二次中曽根内閣で通産大臣、竹下内閣では建設大臣を歴任しています。地元有力企業が政権与党にすり寄るのは、自明の理ですからね。

安倍前総理の言葉を借りれば「美しい横浜を守る」ことが、藤木氏の根底にある思いなのでしょう。「美しい」という言葉は、捉え方によって、見る角度によって随分違った意味になってくることは、安倍前総理の表現で学びましたが、藤木氏の言う「美しい」と、おそらく市民連合が抱く「美しい」とは、違う景色になっているように思えますね。

ただ自民党とは、「美しい」という言葉を通して、同じ風景を共有しているのでしょう。

「美しい横浜」=「再開発」

藤木氏にとっての「美しい横浜」構想には、カジノ誘致は入っていないようです。ギャンブル依存症という言葉から、ギャンブル場があることでの風紀の乱れは、藤木氏にとっては、決して「美しい」ものではなかったのですね。

この1点だけは、市民連合と思惑が合致したのです。ここで、今まで相見えなかった野党勢力が、「ハマのドン」と手を握ることができたのです。

カジノ誘致問題が勃発

林文子市長は、意図せずして「虎のしっぽ」を踏んでしまったのですね。「俺の目の黒いうちは、カジノなんか誘致させない…」。林文子市長は、横浜市財政再建をカジノに託したのですが、その背景に菅首相の思惑があったのかどうかはわかりません。

東京が、お台場カジノ構想を前に進める動きが鈍くなってきていたこともあり、タイミングも合って、関東圏のカジノを横浜みなとみらい地区に誘致しようとする動きが、出てきたのでしょう。

藤木氏が「カジノ誘致をすすめる自民党議員は全員落とす」と息巻いていた頃は、横浜進出を狙っていたカジノ大手のラスベガス・サンズが撤退を表明し、IR汚職で逮捕・起訴された秋元司衆院議員は証人買収事件を起こし、再逮捕・追起訴されるなど、IRを取り巻く環境は激変していました。

Next: 菅総理はカジノ誘致を諦めた?野党の候補者選びにも大きな思惑



野党の候補者選び

野党の横浜市長選挙の陣頭指揮を取っているのは江田憲司立憲民主党代表代行で、早々と「ハマのドン」に接近していきました。江田憲司氏は神奈川8区選出の議員です。横浜市郊外、閑静な住宅地が並ぶ地区です。「ハマのドン」なくして選挙は勝てない……どうやら、このような不文律があるようです。

8月8日告示、22日投開票の横浜市長選挙に、立憲民主党が推薦する元横浜市立大学・山中竹春氏を全面支援すると、「ハマのドン」藤木幸夫氏は表明しました。報道では、江田憲司氏と山中竹春氏に挟まれてマイクを握る藤木幸夫氏の写真が載っています。

自民党が、林文子氏再選から、藤木幸夫氏の長年の盟友だった小此木彦三郎氏の息子を、わざわざ現職官僚を辞めさせてまでも横浜市長選挙に担ぎ出したのも、頷けますね。

菅総理と小此木国家公安委員長は、ともに小此木彦三郎氏の秘書をしていた同僚です。秘書仲間とは言いながらも、かたや地方か出てきた書生、かたや親の七光りを受けているご子息です。菅総理と小此木氏の関係がどうであったかは、周りからは知る由もないことです。

藤木氏は、菅総理を「おさんどん」と表現していました。「昼飯を持ってくるのが菅だった。秘書じゃないんだよね。おさんどんだね。悔しい思いをしているのよ…」。2世・3世ばかりの永田町にあって、“おさんどん”から成り上がってきた菅氏を、藤木氏は、ことのほか可愛がっていたようです。

ここで、自民党側は「横浜カジノ誘致」の旗を降ろしたのです。

「横浜カジノ誘致」の行方は?

マスコミは、こぞって小此木氏が菅総理に反旗を翻したような報道をしていますが、「ハマのドン」との関係修復には、絶対になくてはならないパーツですからね。

それを見込んで、菅総理が送り込んだ候補者ですから、菅総理自身も横浜へのカジノ誘致は諦めたのではないでしょうか。

ただ日本にカジノを誘致することは「継続」です。

小此木八郎横浜市長選挙立候補予定者は、横浜にカジノを誘致することは、現状では難しいと判断したが、他の地域でカジノを誘致することまどは反対していない…としています。菅総理の掲げるカジノ誘致を否定するものではないことがわかります。

ここで「『現状では』誘致しない」という表現が、林文子市長のように、当選後、頃合いを見計らって、再びカジノを誘致するのではないかという憶測が飛び交いました。

それともう1つ、菅総理が天敵小池百合子東京都知事と長時間親密な話し合いが持たれたなかに、「東京カジノ」の話が出ていたのでないでしょうか。

海外企業からすれば、横浜みなとみらい地区と東京お台場地区、どちらにカジノができたほうが嬉しいのでしょうね…。

そもそも「カジノ」のような巨大リゾート施設はすでに“オワコン”ではないでしょうか。ラスベガスでは、むしろ「オンラインカジノ」のほうが大きな収益を生むとされています。

ようはカジノでも万博でもオリンピックでも、なんで良いのです。「再開発」の大義名分ができれば何でも良いのです。

そのため、キーワードが「再開発」なのです。

それが地元企業が潤うことで、いやもとい、地元産業が活性化することで、地元経済が良くなり、雇用が生まれることにつながるのです。

Next: 争点から外されたカジノ誘致。選挙は「親菅vs反菅」の構図になった



争点から外された「カジノ誘致」

林市長が表舞台に出してきた「横浜カジノ誘致」も、小此木八郎氏が「カジノを誘致しない」と明言したことで、選挙の争点から外されました。

「反カジノ」で“漁夫の利”を得ようとしていた人たちは、はしごを外された感じになっているのではないでしょうかね。

最後に名乗りを上げた松沢成文参議院議員は日本維新の会所属、「カジノ誘致反対」の旗を掲げたままでは、大阪吉村知事や松井市長の応援はもらえないでしょう。

10人候補予定者のうち、林市長を含む2名が「横浜カジノ誘致賛成」、残り8名が「反対」という構図は、実質「自民小此木vs立民山中」では、ありえない話になってしまいます。

これまでカジノ誘致を支持してきた自民党横浜市議は林市長を応援するとしていますが、どうもその体制は盤石ではなさそうです。

「ハマのドン」なくして選挙は勝てない…。「ハマのドン」をめぐる綱引きが激しく行われていて、「ハマのドン」を手繰り寄せた方が勝つという構図になっているのは、よくわかりました。

カジノが争点にならないとすれば、横浜市長選挙の本質は、一体どこにあるのでしょうか。

郷原信郎氏出馬表明が横浜市長選の雰囲気を変えるか?

「市民と決める市民の政治」。これが郷原信郎氏の、横浜市長選挙におけるスローガンのようです(※編注:原稿執筆時点2021年7月30日。郷原信郎氏は8月5日、横浜市長選への立候補を取りやめると発表しています)。

カジノ誘致に関しても、単に反対するのではなく、住民投票を実施して住民に決めてもらうことを提案しています。「市民のための政治」という、ごくごく当たり前の言葉を全面に出してきているところに、その当たり前の言葉に目を引かれることに、昨今の政治のあり方の問題を浮き彫りにしているようにも思えます。

「市民のため」という表現、すごく新鮮な感じがしますね。郷原氏の言う「住民投票での決着」は、カジノ誘致の息の根を止めることにつながるというものです。

地方自治は、市議も首長も、選挙によって選ばれます。「二元代表制」という、どちらも「民意」です。権限の優劣はあるでしょうが、トップが“反対”でも議会は“賛成”ということは常にあり、それが互いを牽制し合う働きでもあります。

小此木氏の反対理由は「環境が整っていない」からであって、「その後、コロナ感染収束によって環境が整ってきた」場合には、再びカジノ誘致に乗り出す可能性だって考えられます。

だいたい政治家がはっきりとものを言わないときには、態度を表明していないのと同じで、どっちに転んでも逃げられるように布石を打っておくものです。自分には火の粉がかかっても、やけどをしないようにしているものです。

郷原氏は「カジノ誘致の是非を、市長選で決着をつけるのではなく、住民の意思で白黒つけよう」という提案になっています。その郷原氏は、カジノ誘致の是非ではない、市長選の争点を取り上げてきました。

それが…「政党、団体には一切頼らず、『横浜市を、菅支配から市民の手に取り戻す』ことをめざす」というものです。「菅支配からの脱却」という、とんでもない旗を掲げだしたのです。

これで横浜市長選挙は「親菅vs反菅」という構図ができあがったように思えます。

出馬表明での記者会見では、以下のように表明しました。

・横浜市を、菅支配から、市民の手に、取り戻す
・カジノに頼らない山下ふ頭の活用
   生鮮食品市場を中核とする「食の賑わい施設軍」
   フィッシャーマンズワーフを観光の起爆剤に

ただ、野党分裂選挙は自民党を利するだけとして「解除条件付き出馬表明」として、山中竹春候補が、野党一本化候補としてふさわしいと認めた場合、自身の出馬を取りやめることも示唆しました。

郷原信郎氏は、横浜市コンプライアンス委員会の顧問を務めていました。出馬に伴い顧問は退任しましたが、立憲民主党江田憲司氏から「広島参議院再選挙に出馬しなければ横浜市長選に出てほしい」と言われながらも、出てくる候補者を見ているうちに、横浜コンプライアンスへの重大な悪影響を考え、自身が出馬表明したと述べています。

この間、横浜DeNAベイスターズ初代社長の池田純市の名前も挙がっていました。結局は、立憲民主党も「勝てる候補」というのが、候補者選考基準となっているのではないでしょうか。

郷原氏が指摘している山中竹春氏への不信はいろいろありますが、なかでも、昨年8月に吉村大阪府知事らが行った、いわゆる「イソジン会見」で、データ解析者として山中氏の名前が表示されていた問題を取り上げています。

これら一連の郷原信郎氏の主張は、自身の「郷原信郎が斬る」で紹介されています。
※参考:横浜未来構想会議の提言で示された「横浜市長選後の住民投票」は“大きな流れ”となるか | 郷原信郎が斬る(2021年7月23日配信)

池田純氏の立憲民主党の誘いを断った経緯を見れば、立憲民主党も自民党と変わらないことをしていることがよくわかります。郷原信郎氏も、そのことを強く指摘されています。

※参考:横浜市長選挙、立憲民主党は江田憲司氏の「独断専行」を容認するのか〜菅支配からの脱却を – 郷原信郎 – 選挙ドットコム(2021年7月19日配信)

池田氏の主張はすごくよくわかります。まさに立憲民主党も、「ザ・政党」というか、なんとも言えない、政治の永田町の“嫌なもの”を感じますね。

ダイヤモンド・オンラインに掲載されている池田純氏の「さいたまブロンコス代表の退任から横浜市長選挙出馬の噂まで、その真相と真意について話します」という記事で、横浜市長選挙立候補打診の経緯と断った経緯を説明されています。

本当に政党って、政治家って…という感じですね。

この中で、「昔ながらの出馬要請でした」と語る池田氏の主張の一部を取り上げます。

カジノ反対なら全面的に応援と支援をする」「党を挙げて協力する。選挙資金も数千万円単位で用意するので推薦させてほしい」などなど、権威が欲しい人や、お金や利権に目がない人ならすぐにうなずくような口説き文句かもしれません。しかし、その背景には、立憲民主党が私の背後から横浜市をコントロールしたい、秋まで続く自民党との国政での戦いに横浜市長選を利用したいという意図が透けて見えます。<中略>

立憲民主党からの要請は政党の文脈に乗ることでした。そうした役割は願い下げです。なんて時代錯誤なのだろうか、私にはそうとしか感じられませんでした。<中略>

横浜の市民はもう過去の「白紙論法」や東京五輪の「なし崩しごまかし論法」には辟易しているわけですから。<中略>

選挙資金をもらって、しがらみにまみれて、背後からとやかく言われて、忖度しながら発言し、行動するタイプではありません。民意を無視して、嘘をついたり、ごまかしたり、なし崩しに何かを進めるといったことはもってのほかです。少なくとも、立憲民主党が期待する市長にはとてもなれないと思いました。

出典:さいたまブロンコス代表の退任から横浜市長選挙出馬の噂まで、その真相と真意について話します – 池田純のプロスポーツチーム変革日記 | ダイヤモンド・オンライン(2021年6月26日配信)

いやあ、全文を取り上げたいくらいですが、ぜひ「ダイヤモンド・オンライン」の池田純氏の言葉を聞いてください。

記事にもある池田純氏の「そもそも市長とは、市民の意思や自分の中から湧き出た目的を実現したいからその役割を担うのであって、『市長になることそのものが目的』の人では務まりません。」というセリフ。それと「今回の横浜市長選にとって重要なことは、『コロナ対策をどうするか』ではなく、『コロナ後の街づくりや産業構造の立て直しをどのようなビジョンで進めるか』ということです」という部分、まったく同意ですね。

私が冒頭で取り上げた「勝てる候補」選びに終止する政党政治の愚かさを痛感します。横浜のことを憂いで立ち上がる人を選びたいという思いで、選挙したいですね。

Next: テクニックが勝敗を分ける日本の選挙。横浜市長選の結果はどうなる?



テクニックが勝敗を分ける日本の選挙

終わった東京都議選挙でも、オリンピック中止がどうのとかコロナ対策がどうとかで、肝心の、与党は東京をどうしてきたかの検証、これから東京都をどのような都市にしていくのかという未来ビジョンは一切語られませんでした。東京五輪後の東京をどうするのか、将来のビジョンで議員を選ぶ選挙になっていなかったことに絶望感を感じました。

東京都知事選挙も同じです。小池都政の過去の検証、通信簿チェックは一切なされませんでした。こんなのは、選挙でもなんでもありません。

横浜市長選挙だけは、せめて「横浜の未来をどうするのか」を真剣に考えられる人を選ぶ選挙にしてほしいです。

大勢立候補している人の中には、まさかいないとは思いますが、ただただ大都市の首長になりたいとか、大都市の権力を握りたいとかで立候補している人はいないと思いますが、もしそのような片鱗が少しでも見える候補者がいるとしたなら、その人には投票しないでおきましょうね。

それが選挙です。

組織票 vs 市民運動

郷原信郎氏は、「ハマのドン」藤木幸夫氏に対しても、菅支配の恩恵を受けていると指摘しています。カジノ以外にも、自民党土建支配のもとに箱物行政が進められてきました。

藤木幸夫氏の協力を仰ぐのか敵対するのかで、選挙戦は大きく変わってきます。

カジノ誘致を真ん中に据えて「vs 林文子市長」の構図となれば、藤木氏と手を携えて地上戦やら空中戦やらなんでもできますが、藤木幸夫氏に自民党支援の選択肢が増える、つまり「反カジノ」の小此木氏支持に回れば、一転「小此木 vs 野党候補」という構図となります。

その場合、「藤木・小此木 vs 市民運動・野党」という構図になるのでしょう。

この場合、林文子市長は一気に泡沫候補となってしまいそうですね。

そうなると野党共闘がどれだけ進むか、ただただ「反カジノ」の漁夫の利で、あわよくば大都市の首長になれるかもと思っていた候補者は脱落するでしょうから、完全に国政選挙前哨戦が始まることになります。

そこで注目されるのは「組織票 vs 市民運動」です。

組織票の選挙は、もう選挙ではありません。1票は、意志を反映しないタダの「票」です。国政での組織票(タダの「票」)なんて、国会に「頭数」の1つを送りこむだけの機械に過ぎないのです。でも、タダの「票」でも、膨大に集まれば、それはそれで「民意」と見なされます。

一方、市民運動は、みんなの“意志”や“思い”を拾い集めて「票」にします。実に手間や時間がかかる面倒なものですが、本来の選挙の形であり、貴重な「1票」になると思います。

国政での地方選挙区では、地方の利益優先から最初から戦いにはならないところもありますが、横浜市のような大都市や無党派層の多いところでは、市民運動は、組織票に十分に対抗できる勢力になるはずです。

国政選挙前哨戦という要素から見れば、これで本当の「民意」がわかるというものです。

ましてや争点が郷原信郎氏が言う「菅支配からの脱却」であるなら、まさに前哨戦としては最高のサンプリングとなります。

野党共闘も試されます。

広島の選挙(参院補欠・再選挙)では連合の力が強く、舞台の上に立憲民主党の議員と共産党の議員が一緒に立つことを許しませんでした。

横浜では、山中候補演説会の舞台には、立憲民主党議員と共産党議員が、テーブルを並べて座っていました。同じ壇上に立っていたのです。

池田純氏の言葉ですが「偉い人の『しがらみ』と『保身』と『面子』。そして『民意無視』。どうせオリンピック後には忘れるだろうという『国民軽視』」と書かれています。

「政治を国民の手に取り戻そう」。こんなことを声高に言わなければならない国に、なってしまったのですかね。

マスコミや政治評論家は、テクニックの面から横浜市長選挙を見ていると思います。そのほうが面白いのでしょう。

立憲民主党が郷原信郎氏の提案をどう受け止めるのか、それで横浜市長選挙の意義や行方が決まりそうですね。

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