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強制力あるロックダウンは必要か?初動失敗を認めず「不要不急」で日本経済を壊す医療行政の闇=原彰宏

世界の感染症対策は「(1)感染者特定 →(2)感染経路対策 →(3)ワクチン接種」の3原則が基本です。しかし、日本は(1)のための「PCR検査」を増やさず、(2)の法的拘束力のある「ロックダウン」を推し進めようとしているようです。原則を守らず、これ以上経済を止めることを国がするということは許されるのでしょうか?(『らぽーる・マガジン』原彰宏)

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※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2021年8月30日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

感染症対策「3原則」を守らない日本

感染症対策は「感染者特定 → 感染経路対策 → ワクチン接種」が基本とされています。

どこの教科書にも、それこそ国が出している感染症対策マニュアルにも書いてありますし、小学校の教科書にも載っている「感染症対策の3原則」です。

感染症が発生したら、ただちにこの「3原則」通りに行動すれば、いずれは事態を収束させることができるというものだそうです。

感染を広げる3つの要素は、以下となっています。

1. 病原体(感染源)
2. 感染経路
3. 宿主(しゅくしゅ)

この3つが揃うことで感染は成立するので、これらのどれか1つを取り除くことで、感染症を予防することができます。

(1)に関しては、なにより感染者の特定が大事で、感染した人を隔離して感染拡大の初動を抑えるのが大事です。そのためにはPCR検査をして、無症状者でも感染しているかどうかを確認して、隔離して処置することが急がれます。特に新型コロナウイルスは、感染していても無症状であることが多いのが特徴ですから、それだけ検査の必要性は増します。素早い検査と隔離が、その後の感染拡大を防ぎます。

(2)は、感染経路を断つことです。接触回避や感染者の行動把握など、感染者の他者との接触を徹底的に避けることが、目的とされています。

(3)の「宿主(しゅくしゅ)」とは病原体が増殖する人や動物のことで、抗体を作ることでウイルスへの耐性を強めることにあります。具体的にはワクチン接種になります。

これに伴う「社会的免疫」というのがあります。

厚生労働省ホームページには「ある病原体に対して、人口の一定割合以上の人が免疫を持つと、感染患者が出ても、他の人に感染しにくくなることで、感染症が流行しなくなり、間接的に免疫を持たない人も感染から守られます。この状態を集団免疫と言い、社会全体が感染症から守られることになります」とあります。

日本では(1)がなくて、対策のほとんどが(2)に集中してます。3密(密閉、密集、密接)回避を基本とした対策ばかり。この言葉は官邸スタッフが考えた言葉らしいですね。

この「3密回避」が「社会的距離(Social Distancing)」という意味付けがされて市民権を得た一方で、絶対ルールのように取り扱われ、新たな「常識」とされていることに、不自由さを感じるところがあります。ちなみに、社会的距離の英語表記は「Social Distance」ではなく「SocialDistancing」のほうが正しいそうです。

「3密」対応で経済縮小

この「3密」「社会的距離」が、postコロナ、afterコロナ、withコロナと呼ばれるこれからの経済を「8割経済」にしてしまいました。単純にイメージして、お店が満員ということは、これからは考えづらいでしょう。

業種によっては「8割」どころか「5割」になるところもあり、beforeコロナと同じ売上を上げるには単価を上げるしかありません。

ところが、単純に単価だけを上げるわけにはいかない場合は、単価を上げるための付加価値を考えなければなりません。afterコロナはまさに「アイデアの戦い」でもあります。

Next: 日本政府が排除した「不要不急」こそが経済を支えている



日本政府が排除した「不要不急」こそが経済を支えている

また「不要不急」という言葉があります。日常では使わないお役所言葉のようで、小池百合子東京都知事がこれみよがしに多用しているイメージが強くあります。

「3密」とか「不要不急」とか都知事会見のときに、常にプラカードを作ってアピールしているイメージがあります。「コロナ対策東京かるた」には唖然としましたけどね。

この「不要不急」の活動を排除したことが、経済を殺しました。外出自粛は、完全に経済を直撃します。

個人消費とは「不要不急の無駄遣い」です。この「不要不急の無駄遣い」が経済を支えていることを、政策策定側は、理解していないと思われます。

「感染者特定」を蔑ろにする日本

海外のコロナ対策は、「(1)感染者特定 → (2)感染経路対策 → (3)ワクチン接種」の基本通りです。

しかし、日本には(1)の対策はなく、もっぱら(2)のみしかありません。

そこに大きな問題があると思われますが、政府や関係者、マスコミも、決してそのことには触れないようです。

むしろ、(1)の対策である「PCR検査」を否定する論調が多く、明らかに安倍前総理支持と思われる保守系論客は、こぞってPCR検査を否定し、その拡充に強く反対していました。

最初は医療施設等の受け入れ側の混乱もあったでしょうが、その後は「偽陽性」を全面に出して反対していました。

なぜ、そこまでPCR検査を拒絶したのでしょう。

そこに、今日の感染拡大のきっかけがあるように思えます。まるで宗教論争のような、はたまたイデオロギーの戦いのように、PCR検査の是非が語られていました。

政府が認めないコロナ対策「初動の失敗」

新型コロナ感染者拡大が日本で取り上げられたのは、2020年初頭、横浜港沖停泊の大型客船内に感染者が出たことによります。その対応のまずさから日本国内に広がったという構図は否定されないのですが、当然、政府はそれを認めることはありません。

また、新型コロナウイルスは中国武漢が発祥地と言われていますが、その中国人観光客の入国を、日本は制限しませんでした。むしろ「インバウンド需要」を求めて、積極的に受け入れていました。

当時の安倍総理は、中国に向けて日本に来てもらうためのコマーシャル映像にも出て、日本に来て欲しいと中国国内の人に向けてアピールしていました。世界各国が、中国人の入国を一斉にシャットアウトしていた最中にです。

2020年は東京五輪開催の年でもあり、4月には中国習近平国家主席が国賓扱いで来日することになっていたというイベントのめぐり合わせも関係していたのではないでしょうか。

PCR検査拡充をすれば、間違いなく感染者数は大きく膨れ上がっていたと思います。いま現在でもおそらく、PCR検査をきちんと拡充すれば、きっと感染者数はとんでもないものになるでしょうね。

Next: 感染者の実数を把握しない政府。経済を止めるロックダウンは必要か?



コロナ患者の実数とかけ離れた数字の発表

つまり、発表されている数字以上に、実は感染者は多いのではないか。このことは、街中ではみな「酒の肴」のように語られているのですけどね。

パラリンピックと総選挙が終われば、全国的にPCR検査が拡充され、実体が把握できるようになるのではないでしょうか。

世界ではPCR検査は、当然のようになされています。いつでも、どこでも、だれでも無料で実施されています。スポーツイベント前には、関係者全員がPCR検査を行います。それは各国共通の対応方法です。

日本でもやっていることで、オリンピックのときもそうでしたよね。あれだけ保守系論客が否定したPCR検査をやっているわけです。

重症者数のカウント方法も東京都だけが基準が違うことも、最近になって知りました。東京都の実数は、いったいどうなっているのでしょうかね。
※参考:重症者の数え方 8都府県で国と異なる基準で集計 新型コロナウイルス – NHK(2021年8月20日配信)

そもそも、感染症対策「3原則」(1)のPCR検査拡充による感染者特定には、政治パワーが必要です。PCR検査費用についても、世界と同じように「誰でもどこでも無料で」行うには政治の力が必要です。

経済を完全に止める「ロックダウン」は必要なのか?

しかし、日本ではこのような動きはまったく見られず、もはやPCR検査を政府が増やすことはありえないようで、今は民間企業が無償で配布したり、投資家が企業とタイアップして検査拡充を試みています。

民間企業や海外在住の投資家は、日本でのPCR検査拡充を応援しているのです。不思議な国ですよね。

むしろ議論は(2)の行動自粛、いま話題になっている法的拘束力のある「ロックダウン」をおし進めようとしているようです。

(1)の感染者を確定して隔離して、感染者でない人に積極的に経済を回してもらうという対策はダメなのでしょうか。(1)のPCR検査拡充と、(3)のワクチン接種をセットにして、初めて効果があると思うのですがね。

(2)に関しては、完全に経済を止めることになります。これ以上経済を止めることを、国がするということは、許されるのでしょうか。

安倍前総理「PCR検査を増やす」の約束はどこへ?

なぜ、PCR検査を拡充しないのか。

安倍前総理も「PCR検査を増やす」と言っておきながら、全然なされていない実体は、一体どういうことなのでしょう。官邸には情報が入っていない、総理が命令しても動かない組織があるのでしょうか。

厚生労働省、国立感染症センター、医系技官…。

早々と新型コロナウイルスを(「新感染症」ではなく)「指定感染症」に指定
データ独占
官僚の無謬性(「絶対に間違わない」という神話のようなもの)
民間PCR検査の否定…

これらの言葉をかけ合わせて出てくるものの中に「答え」があるようで、日本の医療行政の闇があるような気がしますね。

ここに、日本医師会が初動対策の肯定(失敗を認めない)していることや、極めて政治的な判断が何よりも優先しているこをも掛け合わせると……また違った景色が見えてくるのではないでしょうか。

Next: ワクチン普及が経済復興の鍵。総選挙に向けて各党の公約が出てくるが…



ワクチン普及が経済復興の鍵か

ワクチン接種の普及が、経済復興の鍵となりそうで、ワクチン接種が進んでいる国から経済は回復し、マーケットは伸びているようです。

なぜ、日本はもっとワクチンを買えないのでしょう。菅総理が訪米したときに、ファイザーのトップと面談してもらえなかったことがすべてを物語っているのでしょうか。

そもそもワクチン供給量に問題はなかったのか、そんな状態で集団職場接種を拡大した意図は、やはり政治的事情からなのか…。謎だらけですね。

野党独自のコロナ対策にも「検査拡充」ナシ

秋の総選挙に向けて、野党がコロナ対策の独自案を出し始めていますが、コロナ病床確保や給付金再交付の話ばかりで、検査拡充を対策に盛り込んでいるところはなさそうです。

日本維新の会は、ロックダウン実現の厳しい法的拘束力を整備することを公約としているようです。自民党は総裁選があるので、選挙公約はそれからでしょう。

秋の総選挙の行動判断材料として、コロナ対策の各党の主張を、ぜひ見比べてみてください。この国のあり方が分かるかもしれませんよ…。

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