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日経14700-15250円、1ドル102円が目先ターゲット~歴史的転換点の可能性も=江守哲

今回の下落で日経平均株価は上昇トレンドラインを明確に下抜け、下落に向かう可能性がきわめて高くなっている――有料メルマガ『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2016年5月2日号の一部を無料公開します。

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プロフィール:江守 哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

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2019年まで続く「株式からコモディティへの資金シフト」の序章

米国株の上昇持続への疑念

米国株にやや陰りが見え始めています。

26・27日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策変更はありませんでした。景気見通しがやや下方修正された一方、次の利上げのタイミングについては、明確な方向性が示されませんでした。米国がドル安を志向していることが窺えます。

第1四半期の米実質GDPは予想を下回りました。前期比年率で0.5%となり、前期(15年10~12月期)の1.4%から大幅に減速しました。最近の米国経済指標はまちまちになっており、ひところの強さはみられません。米連邦準備理事会(FRB)もFOMCの声明で、米国景気の減速を示唆しています。

今回の景気減速は、原油安と新興国の減速で、設備投資と輸出が二期連続で減少し、個人消費もさえなかったことが背景にあるようです。

こうなってくると、米国株の上昇の持続性について、疑念が出始めてもおかしくありません。まして、この時期は「Sell in May」が意識されやすくなります。米国では、「5月に株式を売却し、10月に戻ってきて株を買い直しなさい」という格言があります。

2000年に似ている米国株の動き

今年の米国株の動きが2000年に非常に似ている点がやはり気になります。1月に暴落し、4月まで戻す。しかし、5月には暴落し、6月にまた戻すというパターンです。しかし、年末には最終的に大きく下落しています。前回のメルマガで指摘した通りです。

米国企業の業績もかなり悪化しているようです。株価収益率(PER)はかなり高めですし、株価水準の正当性が問われる動きが広がってもおかしくありません。

またトレンド的にもかなり厳しくなっているように見えます。昨年来高値を更新せずに下げに転じれば、まさに「高値確認」となり、これまでの上昇に対する利益確定売りが出てくるでしょう。

このように考えると、やはり高値いっぱいのような気がします。そして、これからは調整期間に入るような気がします。楽観せずに見ていくことが肝要といえるでしょう。

これまで世界の株式市場をけん引してきた米国株が下げに転じれば、その動きは世界に広がることでしょう。そうなれば、いよいよ世界的な株価調整の動きの始まりです。

コモディティに資金シフトも

株価の調整が進捗すれば、投資資金は金などのコモディティにシフトするでしょう。私が昨年から唱えてきた「株式からコモディティへの資金シフト」「パフォーマンスは世界株式<コモディティ」の構図が鮮明になりそうです。

過去のパターンを踏襲するのであれば、コモディティが株式のパフォーマンスを上回る期間は2019年まで続くでしょう。コモディティ投資が優位な時代になるとの従来からの見方が正当化される動きに入りそうです。

このようなパターンに入った場合には、「原油高=株価高」などと楽観的になりすぎないことが肝要です。過去にも原油高で株安になっている場面はたくさんあります。そして、その際の株価の下落率が非常に大きいのが特徴です。

これまで続いてきた投資パターンを一度リセットする時期に来ているのかもしれません。

今後の米国株の動向には注意が必要です。無用な期待はやめましょう。

Next: 日本株の下落トレンドが鮮明に/悲惨なシナリオも想定内



日本株の下落トレンドが鮮明に

日本株は「日銀の空砲」で厳しい局面に陥る可能性が高まっています。

前号で「これまでは、17600円が上値の限界とみていましたが、その考えを変える必要があるかは、28日の日銀金融政策決定会合の結果次第になりそうです」としました。その上で、「政策の内容を受けて、強い動きに入るのか、それとも期待外れで本来向かうべき方向に行くのか」としました。

結果的に、期待されていたような、ゴールデンウィークを前にした思い切った政策は出てこず、市場の失望はきわめて大きなものになりました。29日のシカゴ市場の日経平均先物は15800円台まで下げています。

こうなれば、日本株のトレンドは再び下向きになったといわざるを得ません。

市場を混乱に陥らせたブルームバーグ報道

22日の一部報道機関(ブルームバーグ)による報道が、市場を混乱させたことはいうまでもありません。その報道の内容は、「民間銀行が日銀から資金を借りる際、マイナス金利を付与される」というものです。これまで銀行側からは、マイナス金利の悪影響が声高に叫ばれており、日銀が何かしらの新たな政策を導入すると見られていました。

しかし、ふたを開けてみれば、日銀の政策は現状維持でした。これでは、市場はたまったものではありません。一部には緩和期待から株価押上げを想定した買いが入っていたはずです。しかし、それがものの見事に梯子をはずされたのです。誰が悪者かといえば、その報道を流した本人もそうですが、その報道を信じた投資家にも責任がありそうです。

私は報道を信じて取引することはしません。したがって、今回の政策決定会合の結果については、予断を持たずに見ていました。もちろん、ポジションも保有していませんでしたので、痛手は全くありませんでした。とにかく、わからないときや怪しいときには、ポジションを持たない勇気も必要です。

打つ手が限られる日銀、悲惨なシナリオも想定内

さて、これで日銀が打てる手がないことがはっきりしました。次の金融政策決定会合は6月15・16日です。かなり先であり、金融政策により円安・株高に動かすことはできないことになります。そうなると、早いタイミングでの財政出動が必要になるでしょう。

安倍政権は熊本の震災により衆院ダブル選挙をあきらめましたが、消費増税は予定通りに実行すると繰り返しています。このままで行くと、かなり悲惨なシナリオが現実のものになるかもしれません。

29日からゴールデンウィーク(GW)に入りました。GW前後の日本株の動きには特段の傾向は実はありません。

そのため、個人的にはポジションを持たずに、ゆっくりするのが良いのではないかと考えていました。これは、4月22日に出演したラジオ番組『GO!GO!ジャングルマーケット』(ラジオNIKKEI)でもお話した通りです。

しかし、今回の下落で日経平均株価は上昇トレンドラインを明確に下抜けました。下落に向かう可能性がきわめて高くなっているといえそうです。こうなると、「ポジションを取って、下落で利益を上げてやろう」という投資家が増えるでしょう。

Next: 日本株の浮揚は困難/PER14倍水準なら15250円



株価収益率(PER)からも日本株の浮揚は困難

大局的には、日本株の浮揚は困難になったと思われます。メルマガでも書いてきたように、株価収益率(PER)の15倍を中心に、上下は14倍から16倍の範囲で動くのが通常のパターンです。日経平均株価はPER16倍で17500円程度です。結局は上値の上限に達し、その後に下げたということに過ぎません。まさに「セオリー通り」だったわけです。

したがって、17500円を買わなかったという私が行った投資判断は、今回は最高の判断だったということになります。あとは、今後の買い場をどうみるのか、ということになると思います。

私はこれまでセミナーなどで、「日経平均株価が12000円以下になったら、真剣に買い場を考える」と言い続けてきました。もちろん、現在持ち株はありません。年初にすべてを手放しています。あとは、暴落時に買うタイミングを待つだけです。

しかし、そのタイミングは意外に早く到来するかもしれません。その際に、EPSがどの程度の実力なのかを見極めてから、投資判断をしたいと思います。

PER14倍水準なら15250円

日本の休みの間にドル円が107円を割り込んで、安値を更新しました。これを受けて、海外市場で取引される日経平均先物は16000円を割り込みました。そのため、目先は15250円を目指す展開になりそうです。ここは、先ほど説明した、PER14倍の水準に相当します。まずはここがターゲットと考えるのがセオリーです。

しかし、そこで止まるかは、現在発表が続いている企業業績および今期見通しの内容次第です

状況が厳しい企業や業界では、今期(17年3月期)の予想を出せないところも出始めています。それくらい、状況が不透明ということになります。いずれにしても、企業業績は徐々に下方修正され、結果的にEPSも切り下がり、それにあわせるように日本株は下値を切り下げていくでしょう。

当面の安値ターゲットは14700-15250円

アベノミクス相場が始まった2012年12月以降の、ドル円と日経平均株価の関係から算出される、日経平均株価の理論値は、ドル円が110円で16430円、109円で16190円、108円で15950円です。

日経平均の下値ターゲットとしている15250円では、105円が妥当な水準になります。一方、106円では15500円程度ですので、現在の株価水準は、為替から見れば、日本株はまだ相当買われすぎということになりそうです。また17600円ではドル円は115円を回復する必要があります。そう考えると、今回の戻りはやはり無理があったと言わざるを得ないようです。

GW後は相応の調整相場を覚悟する必要がありそうです。いかに早く対応するか。これが今後の重要なポイントになりそうです。

目先は、4月8日につけた安値の15471円、さらに2月12日につけた安値の14865円がターゲットになるでしょう。25日移動平均線の10%下方乖離が15130円ですので、当面は14700-15250円が安値のターゲットになりそうです。

Next: ドル円の理論値は108円/今後102円は可能性大/介入はほぼ不可能



実質金利差から見たドル円の理論値は108円

ドル円がとうとう直近安値を更新し、106円台に入りました。そして、これが株価の下落を後押ししました。これも日銀が追加的な政策導入を見送ったことが要因であることは明白です。

22日の一部報道をきっかけに、109円台から一気に111円台後半まで急伸したドル円でしたが、残念ながら、金利差からはドル円は108円が実力ということが浮き彫りになりました。

今回の金融政策への期待は、為替市場でも非常に大きかったのだと思います。しかし、重要なチャート上の節目である112円を超えていなかったところに、何か見えない力が働いていたように感じます。結局は、こうなることが決まっていたかのような値動きです。

円安を日銀の政策に頼るしかない状況であることは、すでにメルマガで述べてきたとおりです。つまり、日本政府は、先のG20で円売り介入という手段を使えなくなりました。そのため、円安に方向転換させることはすでに出来ない状況にあるわけです。

とはいえ、市場では行き過ぎると警戒感が出ます。そのため、前回は107.61円で下げ止まったのですが、実はこれにもある力が働いていることは述べたとおりです。それが日米実質金利差です。現在の日米実質金利差から見たドル円の理論値は108円程度であることは認識しておきたい事実だと思います。

円の上昇に賭けていた投機筋

一方、4月19日時点のシカゴ円先物市場における投機筋の円ロングポジションは7万枚を超え、過去最高水準を2週連続で上回っていました。それだけ、投機筋が円の上昇に賭けていました。

日銀の政策発表前日には、米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げを見送りました。また、利上げ時期についても急いでいないことを示しました。これにより、ドル安傾向が進んでいます。

このドル安は、欧州通貨や資源国・新興国通貨を押し上げます。結果的に円も押し上げますが、その上昇ペースは、今後は円よりも他の主要通貨のほうが強まる可能性があるのではないか考えています。

こうなると、ドル円だけでなく、他通貨もトレードしながら、その恩恵を得るようにすべきということになります。コモディティ通貨と呼ばれる豪ドルやカナダドル、南アランドなどの買いを検討することになるでしょう。無論、ユーロやポンドなどの欧州通貨にも買いが入ってくるのではないかと考えています。

今回の例を見てもわかるように、金融当局の行動次第で為替相場や株価は大きく動きます。イベント前にはあまりポジションを持たず、イベント後に対応できるようにしておくのが王道といえます。

歴史的転換期――1ドル102円の可能性は大

しかし、今回は歴史的転換期にあるともいえます。この機会を逃さないようにする勇気も必要かもしれません。

ドル円は107.61円の安値を割り込みましたので、今後は102円まで落ちる可能性が高いと考えられます。この水準は、ドル円の52週平均の15%下の水準です。このあたりで下げ止まるのが、過去のパターンです。ここまでの下げは念頭に入れておきたいところです。

円はリスク回避先通貨として世界の市場で認識されています。世界中がリスクオフになった場合には、今後も円が買われると思われますので、ドル円を中心に円の動向には注意が必要です。GW後半にさらに円高が進む可能性もありますので、特に気をつけたいところです。

米「監視リスト」指定で円売り介入はほぼ不可能に

ところで、米国が為替政策「監視リスト」に日本を指定しました。現在、この指定国には、日本のほか、ドイツや中国も含まれています。半期為替報告書で、貿易相手国の通貨政策を分析していますが、その中で日本は初めて監視リストに指定されています。

指定されただけでは、特に何もないのですが、日本が円売り介入しづらくなっている中での指定は、介入がほぼ不可能になったことを示しています。

麻生財務相は「G20において介入に一定の理解を得ている」としていますが、現実的にはほぼ不可能とみてよいでしょう。週明けの為替相場は大荒れになりそうです。

長期的にはドル円は最低でも87円に向かうとみています。メインシナリオで83円、状況次第では75円から最大で65円(2020年ごろ)までの円高もあると考えています。円高トレンドが終わるのはかなり先と見ておくべきでしょう。

Next: コモディティ市場は上昇トレンド継続/1994年や2009年の動き再現も?



コモディティ市場は上昇トレンド継続

前号で「コモディティはいよいよ上昇基調に入った可能性が高まっています」としました。一週間の動きを見ると、そのような思いをさらに強くする動きだったように思います。

金相場は1300ドルに迫る勢い、非鉄市場も回復基調が鮮明です。そして、何より、原油相場が下がらなくなってきました。いよいよ、コモディティ時代の再来となりそうです。

1994年や2009年の動き再現も?

私が思い出すのは、GW後にコモディティが急伸した1994年や2009年の動きです。GW後に大幅に上昇したときは、いずれもそれまでに大幅な調整がその前にありました。その後はほぼ棒上げとも言える上昇となり、想定を超える上昇相場になったのです(後述のマーケット人生物語~私の人生を変えたアノ事件でも触れています)。

市場の関心は、原油相場の底堅さに向かっているようです。産油国会合のブレイク(決裂)にもかかわらず下がらなくなっています。これは非常に不思議に見えますが、これこそが強い相場のパターンのように感じます。

これだけ弱材料が揃っているのに下がらない。まさに、トレンドの転換期に見られる事象です。そして、ファンダメンタルズ要因があとから付いてくる。これが本当に強い相場であり、底値から上昇に転じる際に見られるパターンです。

09年のときもそうでした。30ドル割れ目前まで売り込まれたのに、結局は数年掛けて100ドルを回復しています。結局は、売られ過ぎた相場は戻すということなのでしょう。今回のコモディティ相場も、過去の経緯から見れば、かなり売られ過ぎです。それも、ドル高でさらに助長された面があり、ドル高に変化が見られるわけですから、これから基調は変わっていくのだと思います。

とはいえ、やはりファンダメンタルズも気になります。注目しているのは、やはり米国内の原油生産量で国内の原油在庫です。増加傾向は変わっていないのですが、産油量は減少傾向が続いています。これからガソリン需要期に入りますし、石油製品を含めた石油在庫全体が減少に転じれば、これはかなりの強材料として意識されるかもしれません。

円高・株安・商品高

私は、これから4年程度は「コモディティの時代」、とまではいかなくとも、コモディティに注目すべき動きがみられると考えています。これは、円高・株安とともに、昨年から言い続けてきたことです。もちろん、金にも関心が向かうでしょう。先週の金相場の動きを見ると、その予兆といえそうです。

金と原油。この中心的な銘柄を良く見ながら、全体の投資対象の選定と投資タイミングを計る必要がありそうです。

「商品先物は胡散臭い。」このように考えている投資家は、今後4年間、苦しむことになるでしょう。


江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2016年5月2日号ではこの他にも、以下の内容を詳しく解説しています。

今週の「ポジショントーク」~コモディティを主軸に

ヘッジファンド投資戦略~「解約が続くヘッジファンド投資」

マーケット・トピック~「サウジアラビアの戦略」中東で何が起きているのか?

マーケット人生物語~私の人生を変えたアノ事件

次回は5月9日配信予定です。興味のある方はぜひこの機会に初月無料の定期購読をお願いいたします。本記事で割愛した購読者限定記事もすぐ読めます。

【関連】「日経1万円割れ&1ドル最低でも87円」が十分あり得るこれだけの根拠=江守哲

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株式・為替・コモディティなどの独自の市場分析を踏まえ、常識・定説とは異なる投資戦略の考え方を読者と共有したいと思います。グローバル投資家やヘッジファンドの投資戦略の構築プロセスなどについてもお話します。さらに商社出身でコモディティの現物取引にも従事していた経験や、幅広い人脈から、面白いネタや裏話もご披露します。またマーケット関連だけでなく、野球を中心にスポーツネタやマーケットと野球・スポーツの共通性などについても触れてみたいと思います。

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