今回の下落で日経平均株価は上昇トレンドラインを明確に下抜け、下落に向かう可能性がきわめて高くなっている――有料メルマガ『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2016年5月2日号の一部を無料公開します。
※次回は5月9日配信予定、興味のある方はぜひこの機会に初月無料の定期購読を!本記事で割愛した購読者限定記事「今週のポジショントーク」「ヘッジファンド投資戦略」「マーケット・トピック」「マーケット人生物語~私の人生を変えたアノ事件」も手続き後にすぐ読めます。
プロフィール:江守 哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。
2019年まで続く「株式からコモディティへの資金シフト」の序章
米国株の上昇持続への疑念
米国株にやや陰りが見え始めています。
26・27日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策変更はありませんでした。景気見通しがやや下方修正された一方、次の利上げのタイミングについては、明確な方向性が示されませんでした。米国がドル安を志向していることが窺えます。
第1四半期の米実質GDPは予想を下回りました。前期比年率で0.5%となり、前期(15年10~12月期)の1.4%から大幅に減速しました。最近の米国経済指標はまちまちになっており、ひところの強さはみられません。米連邦準備理事会(FRB)もFOMCの声明で、米国景気の減速を示唆しています。
今回の景気減速は、原油安と新興国の減速で、設備投資と輸出が二期連続で減少し、個人消費もさえなかったことが背景にあるようです。
こうなってくると、米国株の上昇の持続性について、疑念が出始めてもおかしくありません。まして、この時期は「Sell in May」が意識されやすくなります。米国では、「5月に株式を売却し、10月に戻ってきて株を買い直しなさい」という格言があります。
2000年に似ている米国株の動き
今年の米国株の動きが2000年に非常に似ている点がやはり気になります。1月に暴落し、4月まで戻す。しかし、5月には暴落し、6月にまた戻すというパターンです。しかし、年末には最終的に大きく下落しています。前回のメルマガで指摘した通りです。
米国企業の業績もかなり悪化しているようです。株価収益率(PER)はかなり高めですし、株価水準の正当性が問われる動きが広がってもおかしくありません。
またトレンド的にもかなり厳しくなっているように見えます。昨年来高値を更新せずに下げに転じれば、まさに「高値確認」となり、これまでの上昇に対する利益確定売りが出てくるでしょう。
このように考えると、やはり高値いっぱいのような気がします。そして、これからは調整期間に入るような気がします。楽観せずに見ていくことが肝要といえるでしょう。
これまで世界の株式市場をけん引してきた米国株が下げに転じれば、その動きは世界に広がることでしょう。そうなれば、いよいよ世界的な株価調整の動きの始まりです。
コモディティに資金シフトも
株価の調整が進捗すれば、投資資金は金などのコモディティにシフトするでしょう。私が昨年から唱えてきた「株式からコモディティへの資金シフト」「パフォーマンスは世界株式<コモディティ」の構図が鮮明になりそうです。
過去のパターンを踏襲するのであれば、コモディティが株式のパフォーマンスを上回る期間は2019年まで続くでしょう。コモディティ投資が優位な時代になるとの従来からの見方が正当化される動きに入りそうです。
このようなパターンに入った場合には、「原油高=株価高」などと楽観的になりすぎないことが肝要です。過去にも原油高で株安になっている場面はたくさんあります。そして、その際の株価の下落率が非常に大きいのが特徴です。
これまで続いてきた投資パターンを一度リセットする時期に来ているのかもしれません。
今後の米国株の動向には注意が必要です。無用な期待はやめましょう。