いよいよ年末相場ですが、最近のボラティリティの大きさに不安を抱いている方も多いかと思います。そこで今回は、私が考えている来年起きそうな経済や相場のメインシナリオ・リスクシナリオをご紹介します(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)
株式会社銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。
2022年の注目点の筆頭「アメリカの金融政策」
みなさんこんにちは。そろそろ年末ですね、歳のせいか年々ときが経つのが速くなってきます。
僕は年初1回目のこのメルマガで、その年の経済や相場について予想していますが、今回は来年のエッセンスをかいつまんでお話ししたいと思います。
2022年の注目点の筆頭は、アメリカの金融政策だと思います。
日本時間の12月16日未明、FRBは金融政策決定会合(FOMC)の結果を発表しました。内容は事前の予想よりタカ派的で、以下のようなものでした。
1. 「インフレは一時的」との文言を削除
2. テーパリングの速度を2倍に加速
3. 来年3回の利上げ実施を示唆
その心は「予想よりインフレが強いので、より引き締め気味に来年の政策運営を行う」ということでしょう。
通常ですと、このように予想を超えたタカ派的な姿勢を示しますと、株価は大きく下げるものですが、今回は逆に上げました、しかも金利や為替も落ち着いています。
おそらく市場は足元のインフレ傾向を強く警戒しており、FRBがハト派的スタンスを続けることに、以前から不安を持っていたのだと思います。
つまり、「利上げの遅れ → 景気過熱/インフレ拡大 → いずれ大幅な利上げに追い込まれる」という不安です。
今回のFOMCで利上げのピッチを早める見通しとなり、市場は来年のアメリカ経済に対し、適切な利上げ → 景気の緩やかな回復/インフレのソフトランディング、という明るいをイメージ持ったのだと思います。
その点で、FRBはうまく市場と対話したといえるでしょう。
そしてこのスタンスを維持する限り、FEBは2022年のアメリカ経済をうまくコントロールできると思います。
以上は、明るい話題です。
中国の経済成長は緩やかに維持される?
2022年の関心事の2つ目は、中国経済です。
年明けには北京でオリンピックがあるので、自制的に動くと思いますが、それが終われば秋の共産党大会まで8か月ほどしかありません。
習近平さんは3期目を目指して、内にも外にも強い姿勢で臨むしかないでしょう。
このようなことから中国当局は「共同富裕」を旗印にして、あいかわらずテック企業や不動産会社への締め付けを続けると思います。
でも、それが逆に中国経済を失速させてしまえば、習さんの3期目は難しくなります。
従って、中国が採りうる政策は1つだけ、6%前後の(中国にとっては)緩やかな経済成長を目指し、「規制と成長の間にある細い道」を進むことになるでしょう。
以上のような推測から、中国もアメリカ同様、熱すぎず、冷たすぎず、適度な成長を目指して政策運営を続けるでしょう。
この点も世界経済にとって悪いお話しではありません。
Next: 日本の未来も暗くない?世界的なインフレは2022年後半には収束へ
世界的インフレの行方
あともう1つ2022年の注目点を挙げるとすれば、世界的に進むインフレの行方です。
コロナの終息傾向によって需要は随分と戻りましたが、供給量のほうは急には増やせません。世界的に物価は上昇し、アメリカで足元で39年ぶりの物価上昇を記録しました。
日本では消費者物価は落ち着いていますが、それは企業がコストアップを吸収しているからです。
では、2022年はどうなるのでしょう。
FRBは足元の物価上昇を「一時的ではない」と路線転換しましたが、かといって、再来年(2023年)も5%を超えるインフレが続くとはみていません。
半導体不足や物流の混雑は解消の方向ですし、コロナによる人手不足も年後半には解消されるでしょう。
このようなことからFRBは、少なくとも2022年の後半、アメリカの消費者物価は2〜3%程度を目指して落ち着いてくるとみているようです。
物価が2%台に下がれば、FRBは利上げを急ぐ必要が無くなります。懸念されている、新興国からの資金流出も杞憂に終わるでしょう。
以上3点ほど、2022年の注目点を見てきましたが、メインのシナリオは上記のように決して悪くはないと思います。アメリカ企業の業績も拡大しそうですし、日本も同様です。
2022年最大のリスクは「景気加熱」と「米中間の衝突」
懸念があるとすれば、コロナ終息に伴って起きる「景気過熱」のほうではないでしょうか。
その場合、FRBは利上げのピッチを早め、世界経済や世界の株価にとって思わぬ波乱を招くかもしれません。
あと可能性はとても低いですが、米中間で起きる突発的な衝突も、一応は頭の片隅に置いておきたいと思います。
以上、来年のメインシナリオと、リスクシナリオの一部をかいつまんでお話ししました、詳細は年初のメルマガでゆっくりお話ししたいと思ます。
『一緒に歩もう!小富豪への道』(2021年12月16日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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