昨今、奨学金が返済できずに苦しんでいる若者がいることで、「奨学金は悪質な学生ローンだ」などという論調を目にします。奨学金で進学した私にはちょっと残念に感じます。(『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』午堂登紀雄)
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プロフィール:午堂登紀雄(ごどう ときお)
米国公認会計士(CPA)。1971年生まれ、岡山県出身。中央大学経済学部 国際経済学科卒。株式会社エディビジョン代表取締役。一般社団法人 事業創造支援機構代表理事。
奨学金は「悪質な学生ローン」か?
今は受験シーズンですが、春からは奨学金を借りて進学する人がいると思います。あるいは4月から新社会人になる人の中には、学生時代に借りた奨学金の返済が始まる人もいるでしょう。
しかし相変わらずコロナ禍が続いており、不安を感じている人は少なくないと思います。
昨今、奨学金が返済できずに苦しんでいる若者がいることで、「奨学金は悪質な学生ローンだ」などという論調を目にすることがあり、それが奨学金で進学した私にはちょっと残念に感じ、感じることを論じたいと思います。
奨学金の「おかげ」で進学できた
私自身、高校・大学を旧日本育英会から借りた奨学金で進学しました。
返済猶予制度を利用しましたから、総額約350万円を完済したのは15年後の確か40歳頃だったと思いますが、私に東京に出る機会を与えてくれた奨学金制度には感謝しています。だから私の場合、好意的なバイアスがあるのは確かです。
もちろん、経済的に苦境に陥っている人もいて、奨学金を借りたことを後悔している人がいるのも事実でしょう。コロナで収入が減ったり、仕事を失ったり、病気などで働けなくなって返済が苦しいという人もいると思います。
延滞を繰り返し、ブラックリスト入り(個人信用情報データベースに事故記録として記載される)してしまった人もいると思います。もしかしたら、お行儀の悪い督促をする担当者に遭って精神的につらかったという人もいるのかもしれません。
世の中にはいろんな状況、いろんな立場の人がいますから、「これが正しい」とか「これが絶対だ」というわけではありません。
しかし昨今、奨学金に関して世間の注目を集めるのは、こうした社会的弱者の存在を根拠に、奨学金悪玉論に傾きがちな世論です。
しかし私はそれは制度へのミスリードにつながると感じており、そうした見方に対して、「奨学金は社会に必要な救済制度である」ということを主張しておきたかったからです。
なぜなら、お金がない家庭でも「奨学金のおかげで進学できる」からです。
「奨学金は借金だ」という意見がありますが、もちろん借金です。それをことさら「借金だ」とネガティブにいう人は、「奨学金はもらえるという前提」があるのでしょうか。
「だったら教育ローンとか学資ローンという名前にした方がいい」という声もあるようですが、奨学金には給付型と貸与型があり、前者は返済不要、後者が返済が必要なので、すべてがローンというわけではありません。
奨学金はその名のとおり、学ぶことを奨励するための資金であり、ローンであろうと何も問題ないと思います。大学に進学するかどうかは本人の自由意志であり、進学しなければ奨学金も不要だからです。
Next: ローンとして好条件。底辺からでも這い上がれるのが奨学金の素晴らしさ
奨学金は好条件
そもそも奨学金のメリットは、
・保護者が低所得でも学業の機会が開かれる
・無担保で約15年という長期間借りられる(保証人・連帯保証人は必要)
・無利子もしくは低利
・就学中は利払いすら不要
という、大盤振る舞いな好条件です。これが仮に事業主の読者なら、こんな条件で借りられるとはなんて優遇されてるんだ、と感じるはずです。
そして、これは他の借金にも言えるのですが、最初から良い借金と悪い借金が決まっているわけではありません。良い借金にできる人と、悪い借金にしてしまう人の両方がいるというだけだと思います。
たとえば私は借金をして不動産投資をしていますが、家賃収入から返済額を引いた残りが手取りとなって、私の収入を増やしてくれています。
一方、新しい服やブランドバッグが欲しいからと借金すれば、返済は自分の収入の中からですから、生活が苦しくなるようなものです。
底辺からでも這い上がれるのが奨学金の素晴らしさ
当時の私の状況を少し紹介します。私は、父親が希望した高専(高等専門学校)への進学を拒否し、東京の大学に進学しようと高校は普通科を選択しましたから、学費の支援も仕送りもないと言われていました。
だから学費も生活費もすべて自分で捻出しなければならず、奨学金を借りることは大前提でした。
それで無利子の第一種奨学金を借りられたのですが、当然ながら卒業後は返済が始まるという説明は受けました。
母親からは「利息がつかないからちょっとオトクよ」と言われ、当時は利息はなんのことやらという感じでしたが、安いなら良かろうという程度の認識でした。
しかし自分の貯金は受験料と東京での宿泊費・交通費でほぼ使い切ってしまい、初年度納入金が足りません。どうしたものかと思案していたら母親から新聞奨学生制度を紹介してもらい、新聞配達をしながら進学することにしました。入学金などを立て替えてくれ、格安の寮に住めて上京の新幹線チケットも出してくれて助かりました。
学生時代はちょうどバブルの頃で、バイトの時給も高いし先輩たちも二桁の内定をもらっていましたから、このままなんとかなるだろうと思っていました。
しかし私が就職活動を始める直前にバブルが崩壊し、就職氷河期第1号になってしまったのです。私は結局どこにも就職が決まらず、卒業式を迎えます。
卒業後はフリーターとして、居酒屋やビル清掃のアルバイトで細々と食いつなぎました。だから奨学金の返済が始まる通知が来たときも、とても払えないと旧日本育英会に電話し、返済猶予制度で返済開始を遅らせてもらいました。
その半年後くらいにようやく就職が決まり、その後はコンビニエンスストア本部、外資戦略系コンサルを経て独立起業し、いまに至ります。
という感じで、底辺から這い上がった経験があるがゆえに、私には生存者バイアス(自分の特殊な経験や価値感を一般化しすぎる)傾向が強いのも自覚しています。
しかし奨学金のおかげで救われたのも事実です。だから奨学金を悪という人には、やはり次のような疑問が湧いてきます。
Next: ぜんぶ納得して借りたのでは?奨学金を悪く言う人への5つの疑問
奨学金を悪く言う人への5つの疑問
<疑問その1. 奨学金は借入であり、卒業後には返済が始まるという説明を受けたのではないか?>
大学の職員として勤務する私の友人曰く、奨学金は借金であり、卒業後に返済が始まるということはしっかり説明しているそうです。
つまり自覚があるなら、将来の奨学金の返済は織り込み済みで学生時代を過ごし、就職し、社会人生活をスタートさせると思うのですが…。
よく聞くのが、どこにも就職が決まらずとりあえず派遣に登録したが派遣切りに遭ってしまって返済できないというケースですが、そういう人に限って「自分はどういうスキル・能力を獲得しなければならないか」という戦略がないことがほとんどです。
<疑問その2. 借り過ぎかもしれないという自制は働かなかったのか?>
私の場合、高校は公立だったので月6,000円ちょっと。大学は自宅外・文系だったので確か月5万円台だったと思いますが、学費が高い医学部や理工学系はもっと借りられるようです。さらに大学院まで奨学金で進めば、その金額は高額になります。
それで何かの記事で600万~800万円借りて返済が苦しいという取材記事を読んだことがあり、それは親の金銭感覚でさえ厳しいと思いますが、親はセーブさせなかったのでしょうか。
むろん、国公立でも学費は高くなり、かつてとは状況が違うことは知っています。また、私のようにバイトしないと生活できないという場合、生活費も含めて手当できるよう、奨学金は借りられるだけ借りるというケースもあるかもしれません。
しかし卒業後の職業選択がほぼ視野に入っている医学部や一部の理工系学部などはともかく、総額600万円を超えるような金額は、さすがに親でもビビるのではないかと思います。
<疑問その3. 借金してまで進学する以上、元を取るべく学生時代に努力をしなかったのか?>
お金を借りて進学するとは、それ相応の覚悟が必要です。では自分はそもそも何のために進学するのか?進学して何をするのか?
ただ周囲が進学するから、親が大学に行けというから、なんとなく大学に行くのが当たり前だから、メディアが高卒と大卒では生涯年収が違うと煽るから、などという流されての進学では得られるものは多くなく、それは就職先選びやそこでの収入にも反映されるような気がします。
私は当時は幼くてそこまで明確ではなかったものの、講義のほとんどがつまらないと感じてからは公認会計士を目指して専門学校に通うようになりました。
その費用も分割払いで、さらに借金が増えてしまったわけですが、お金を借りた以上は当然ながらそれ以上の人間になろうともがいていました。
そもそも私が進学しようと普通科高校へ進もうと決意した中学当時、いまから約35年前は大学に行くことが人生の可能性を広げるための、限られた方法でした。
スマホもないしネットで起業なんて生き方は存在しなかった。今ならネットショップの出店には1円もかかりませんが、当時はそんなものはありませんでした。
今ほどの選択肢がないあの時代、大学に行くのがベストだろうと思っていました。
しかしもはや大学に行けばすべてがうまくいくという時代環境ではありませんから、そもそも大学進学は必要なのか?から問い直してみた方が良いかもしれません。
それでやはり進学したいということであれば、自分はどのように学生時代を過ごすのか、ある程度のプランを立てておくことです。その4年間の過ごし方が、その先の進路を決めることになるからです。
Next: これでも悪い制度?人生を好転させるために最大限の努力をしたか
<疑問その4. 奨学金の返済を加味した家計設計を考えなかったのか?>
たとえば東京での大卒初任給は、手取りで16万~18万円くらいだと思いますが、スマホに月1万円以上、家賃が7万~8万円もする部屋に住んでいる人がいます。
そこに奨学金の返済が加われば、それはさすがに苦しい。だから本来は、収入に合わせて郊外のアパートに引っ越すなどして家計や生活構造を変えるはず。なのに家計の収支すら見直せないとしたら、いったい大学で何を学んだのか。
いくら勉強ができても生活の知恵が回らないとしたら、なかなか大変だろうと思います。
いまなら格安SIMで月2,000円程度でしょう。さらに東京でも、家賃3万円程度のアパートはたくさんあります。
<疑問その5. 苦しいなら返済猶予制度を使わないのか?>
前述の通り奨学金には返済猶予制度がありますから、事情を説明すれば返済開始時期を遅らせてもらうことができます。私もそうしました。
もし家計が苦しいなら、その制度を利用すればいい。誰だって経済的に苦しくなる可能性はあるから、返済できなくなることもある。それ自体が責められるわけではありません。
なのに、学生支援機構にまったく相談もしないで、勝手にしれっと滞納してしまう人がいます。電話の1本ぐらい入れればいいのに、なぜ何も言わずに滞納してしまうのでしょうか。
これは住宅ローンの返済に行き詰まり、家を差し押さえられる人に似ています。
金融機関に相談もせずずっと滞納し、督促が来ても無視。そしてある日突然、「いついつまでに残債全額を返済せよ」などという最後通告が来る。
そこから慌てて銀行に連絡を入れ、じゃあ任意売却しようということになる。競売にかけられるより市場価格に近い金額で売れる可能性があるとはいえ、期限が決まっているからどうしても安くなる。売っても残債が残り、それを細々と返済し続ける。
これも、苦しくなったらすぐに金融機関に相談すれば、リスケ(リスケジュール:たとえば当面は利息部分の返済だけでよいなど)に応じてくれることもあるはずなのに。
いまは返済が苦しくても、あとで元を取れれば良い
奨学金の返済は、次の世代にバトンを渡すことだ、というのが私の考えです。先輩が返済した奨学金が、自分が進学する際の原資になっている。同時に自分が返済する奨学金が、次の世代が進学するための原資になる。
しかしもしいま自分が苦しいからと、そのバトンを落としてしまったら?自分は先輩方のお金を使って進学していながら、世代間扶助のサイクルを自ら断ち切り、後輩が学ぶ機会を奪ってしまうかもしれないということに、想像力を働かたいと思います。
という感じでちょっと辛辣な書き方になってしまいましたが、だからといって奨学金の返済が苦しいからと、若干20代で人生に絶望する必要はありません。仮にいま25歳だとして、職業人生はあと40年もあり、いくらでも逆転できるからです。
20代はまだ周囲から教えてもらっている状態ですから、収入が低く生活が苦しくて当たり前。でもそれを乗り越え、30代、40代になり、仕事の実力がついてくれば、いくらでも挽回できます(と、私は希望を持つことを推奨しています)。
振り返ると、人生は後半戦を尻上がりで迎えられる方が幸福度が高いと感じます。なので、いまの状態で悲観するのではなく、人生の時間軸を長く見据えてじっくり実力をつけていけばいいと思います。
Next: 奨学金は自己投資。学費を用立ててあげられない保護者にも一言
奨学金は自己投資
そして、学費を用立ててあげられない保護者にも一言。
奨学金という借金を背負わせてしまうなんて子がかわいそうだとか、学費を工面できない情けない親で申し訳ないなどと思わないでいただきたいのです(むろん、身の丈に合わない金額の借り過ぎは問題ですし、親の口座に奨学金を振り込ませて親が使い込むなどは論外ですが)。
なぜかというと奨学金とは、お金がない世帯でも進学できるという、チャンスをモノにする手段のひとつだからです。
前述のとおりギャンブルや遊び、ブランド品を買うなど欲望を満たす自己満足のための借金は、あとから苦しくなる可能性があります。
しかし自分の価値を高める自己投資としての借金は、むしろ将来の可能性を広げチャンスを引き寄せる行為です。
就職先にもよりますが、生涯年収が3億とか4億とか稼げるなら、それが数百万円くらいの借入で手に入るなら、安いものではないでしょうか。
奨学金は自立への一里塚
もうひとつ。奨学金で進学することを親子でしっかり話し合って納得すれば、それは自立への一歩になる得るからです。
たとえば行きたい学校の学費はいくらか。生活費はどのくらいかかるか。そのためにいくら借りて、卒業後は毎月いくらの返済が、何年間続くのかはすぐわかります。
そういう状況を想定したうえで、将来はどういう職業に就くためなのか。具体的なものがなければ、その学校・学部を卒業して就くであろう平均的な職種を選び、新卒時の年収や年代別の平均的な収入を調べてみる。
ではその収入の中から、借りた奨学金を返済できるのか、計算してみることは誰でもできるでしょう。
そしてその中から家賃はいくらまで負担できるのか。ではその家賃で住めるのはどういう場所のどんな物件か。さらにはスマホ代金や食費などはいくらまで使えるのか。そうやって計算してみたとき、自分が思ったような生活ができるのか、できないのか。
むろん妄想に近い部分もあるので厳密に計算することにはあまり意味がありませんが、これら一連の想像力を働かせることは、高3にもなれば理解できない話ではないと思います。
そして進学後も、「やりたいことと豊かな生活が両立できる企業や職種に就くには、学生のうちにこういう経験が必要だ」とか、自分のスキルに対しても「自分の大学・学部レベルでは難しいから、今からこのスキルの習得をしておこう」と考え、より真剣に学ぶ動機づけになる。資格を取得したり語学を学んだり、仲間とプチ起業してみようか、などと経験を広げようとする。
そうした姿勢は仕事やお金の面に限らず、人生のリスクすら極小化できるのではないでしょうか。
奨学金の返済という緊張感があるからこそ将来の展望を考えるでしょう。そしてこれは自立につながる。だから奨学金で子を進学させることに、罪悪感など抱く必要はない。
子が納得し、それでも進学したいという強い意志を持っているなら、堂々と奨学金を借りて送り出してやればいいと思います。
Next: そもそも、大学進学は本当に価値があるのか?
大学進学は本当に価値があるのか?
私個人は日本の大学に進学することに、そんなに価値があるのかなあと少し懐疑的に見ています。
むろんいまは起業しているので学歴が関係ない状況だからというのもありますが、大学に進学して自分の価値が上がるのか、成長するのか、実感がなかったからです。
たとえば私の経験で言えば、大教室での講義は本当につまらなかった。理系はまた違うのだと思いますし、個別の学校、個別の教授によってもピンキリだと思いますが、教授は教育者というより研究者という感じで、教えることにあまり熱心ではない印象でした。
確かに勉強以外にも、たとえば友人との出会い、恩師との出会い、恋人との出会いなど、貴重な経験を得られることもあるとは思います。4年間じっくりと自分がやりたいことを探せるモラトリアム的な時間として有意義な人もいるでしょう。
しかしそれらも、仮に高卒で就職したとしても、真摯に取り組んでいれば機会は開かれるのではないかと思います。
私の場合はアルバイトで学ぶことが多かったです。仕事で評価されるとはどういうことかが早くにわかりましたし、接客業は「標準語で丁寧に接する言葉遣い」が身に付きました。(そういえば彼女もバイト先のコだったなあ笑)
まあ、私は前半はバイト三昧、後半は会計士の専門学校に入り浸っていましたから、キャンパス生活を楽しめなかっただけでしょう。なので上記は自分の狭い狭い経験に過ぎず、あくまで個人的感想です。
高学歴と能力は比例する傾向にある
とはいえ、高学歴と能力は一般的には比例関係にあることは私も理解しています。以前書いたこちらの記事から一部抜粋してご紹介します。
たとえば2018年時点での東証マザーズ上場の経営者の出身大学1位は慶應義塾大学、続いて2位が早稲田大学、3位には一橋大学、関西学院大学、東京理科大学が、7位には青山学院大学や日本大学、明治大学がランクインしています。
また、経産省が発表した令和2年度の大学発ベンチャー企業数ランキングでは、1位東京大学、2位京都大学、3位大阪大学、4位筑波大学、5位東北大学と続きます。
高学歴、つまり基礎学力の高さは、「チャンスを手に入れられる素養」につながる可能性の高さを示唆しています。
海外を見ても、ビル・ゲイツ氏やマーク・ザッカーバーグ氏はハーバード出身(中退)、特にシリコンバレーを擁するスタンフォード卒の起業家も多く、グーグル創業者のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、ナイキ創業者のフィリップ・ナイト、ほかにもヒューレッ・トパッカード、サン・マイクロシステムズ、シスコシステムズ、ネットフリックスといった有名企業の創業者を輩出しています。
スペースX社やテスラを率いるイーロンマスク氏は、名門ペンシルバニア大ウォートンスクールを経て(しかもスカラシップを獲得している)、スタンフォード大学院に進んだほどの学力を持っています(が、2日で中退)。
では、なぜ高学歴と起業が両立するかというと、自ら主体的に勉強して進学する子は、下記の能力があまり勉強しない子よりも高い次元で獲得できるからではないでしょうか。
・進学しようという向上心やチャレンジ精神
・家から遠く離れてもチャンスを掴もうという自立心
・日常的に勉強に取り組む姿勢・集中力
・自らモチベーションを維持しあきらめず勉強を続ける精神力
・自分に合った勉強法を自分で考え工夫する創造力や応用力
・勉強方法を試行錯誤し必要に応じて都度変更し最適化させる柔軟性
・受験までの戦略を描く時間感覚やプランニング能力
・複数の科目を同時に勉強するバランス感覚や並行処理能力
・力を入れる範囲、手を抜く範囲を取捨選択する分析力や判断力
こうした資質・素養は、日頃の勉強や思考習慣を通じ、おそらく根源的な学習能力や思考力が高いレベルに育っているからであり、つまり高学歴は彼らの能力の副産物みたいなものなのかもしれません。
Next: 高校を出たら人生は本人だけのもの。奨学金を借りる価値はあるか?
無理に奨学金を借りてまで進学する必要はあるのか
そう考えると、難関校ならともかく、定員割れしているような偏差値の高くない大学、つまりさほど勉強しなくても受かる学校、勉強があまり得意でない人たちが通う学校に、果たして借金をしてまで進学する必要があるのだろうかと(差別的にならないようこのあたりの表現は難しいですね)。
あるいは親の老後の資金を削って生活を犠牲にしてまでも、そんな大学に行かせる必要があるのだろうかと。
まあ、人によって考え方は違いますが、たとえば勉強だけなら、海外国内含めて大学が解放している無料のオンライン動画講義なども多数アップされていますし、大卒資格が欲しいなら安価な通信制大学もある。
無理をせず大学ではなく専門学校に通って税理士や会計士などを目指すという道もあり、仕業で独立すれば定年退職とも無縁です。自分の得意を探ってみると、他の可能性に気づくかもしれません。
※参考:専門学校をさがす – マイナビ進学
大卒でないと就職で不利になるからという点は理解できますし、大手企業はほぼ一流大卒しか採らないかもしれませんが、実力次第で転職や起業によって地位も報酬も掴めると思います。
大学のすべてを否定するわけではありませんが、大卒でも就職できないとか、貧困に陥ることがあるわけで、大学に行けばすべて解決して幸福になれるわけではない。なのに大学に行くのが絶対価値という、大学至上主義的な風潮には違和感を覚えます。
この「大学に行かなければならない」という思い込み、親の「子を大学まで行かせなくてはならない」という固定観念が、少子化を含めいろいろな問題、いろいろな不幸を招いている原因にもなっているように思います。
もっと多様な生き方があっていいはずなのに。
高校を出たら人生は本人だけのもの
だからというわけでもないですが、わが家の2人の息子には起業を教え、高校を卒業したら家から追い出し、進学したいなら奨学金で行けと早くから言い聞かせる予定です(特に海外の大学は給付型のスカラシップが豊富に用意されているし、日本の大学のように勉強をサボれませんから、本人の意志・能力次第ですが留学を勧めると思います。この場合、学生ビザだと働けないので生活費は親が出さないといけないですかね)。
親がお金を持っているかどうかは関係ない。親が子の学費を出さなければならないなどと決まっているわけではなく、親が出すべきだという世間の常識、固定観念に過ぎない。他人が考える「こうすべき」に自分が合わせる道理などない。
私が親の役目だと考えているのは、子が自分の足で立って歩けるようになるためのサポートであり、どんな状況になっても乗り越えていける土台を作ることです。
だから高校までは、子がやりたいことを応援し、没頭できる環境を与えます。そのためのお金は惜しまない。
でもそれ以降は本人自身で自由に人生をデザインさせようと思います。法律上も令和4年度から18歳で成人になり、契約の当事者にもなれますしね。
基本的にはもう親の支援も援助も不要という状態にして送り出したい(これが私が「子育ては18年間の娯楽」と呼んでいるゆえんです)。
そもそも子は親とは違う。そして子は親とは違う時代を生きなければならない。親のアドバイスが通用しない可能性もある。
そんな時代環境下において、親の古い価値観を押し付けたり、旧来の常識に従ったり、旧来の教育を受けても適応できるとは限らない。
だから進学するか否かも含めて自身で判断させる。自分の頭で考えさせ自己責任で行動させる。
そのためにも、高校を卒業したら家を出て自立する。親と離れ、親の価値観から脱却し、経済的にも精神的にもひとり立ちする。そして自分の人生は自分自身の手で切り開く、それが人生の醍醐味というものです(私の価値観の押しつけなので矛盾しているようですが、これは真理だと思っています)。
という私の考えを子どもたちが受け入れてくれるかどうかはわかりませんが(これすら私のエゴに過ぎませんからね)、そのような教育をしていこうと思っています。
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2022年2月7日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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