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なぜ原油価格の乱高下は止まらないのか。需給にこだわるバイデン政権が見落としていること=角野實

去年11月に、石油やエネルギーを買い占めしているやつは容赦しないと喝破したバイデンですが、その結果は10ドル程度、原油が下げただけで、その後は120ドルまで急騰をしています。このときに供給を増やす(SPRの放出など)ことを行いましたが、結果はよくなかったことは明らかです。供給量と原油価格に因果関係はないことが見えてきます。(『角野實のファンダメンタルズのススメ』)

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※本記事は有料メルマガ『角野實のファンダメンタルズのススメ』2022年3月22日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:角野實(かどの みのる)
大学卒業後、金融機関に10年ほど勤務。独立して投資家の道へ。現在は企業経営者として活動、FX関連の執筆を多数行っている。

供給が増えても原油価格は下がらない

去年11月に、石油やエネルギーを買い占めしているやつは容赦しないと喝破したバイデンですが、その結果は10ドル程度、原油が下げただけで、その後は120ドルまで急騰をしています。

つまり、このときに供給を増やす(SPRの放出など)ことを行い、結果はよくなかったことは明らかです。

今、バイデンがやっていることはイラン制裁の解除やベネズエラ原油などの輸出再開などを積極的に働きかけているのですが、この問題は供給をいくら増やしても、結果が伴わないことは去年の段階で明らかになっているのです。

つまり、エネルギー価格が高騰していることに対して供給サイドを刺激しても、価格が下がらない。

なので、供給サイドを刺激しても意味がない可能性が非常に高いのに、相も変わらず供給サイドに刺激をし続けている。この結果は言うまでもない、と私は考えています。

需給では決まらない石油価格

つまり原因はというと、供給や需要サイドに問題があると誰でも考えることですが、原油の価格というのは、結局、通貨の価値で決まっているのです。

なぜならば、生産できる原油は世界にありあまるほどあり、需給関係では価格を語れないからです。しかも原油需要というのは、先進国を中心に下がっています。

たとえば、日本のオイルショックのころの原油需要に対して、現在はこれだけ経済成長をしても、その需要は半分に減っているのです。それなのに価格は上昇しているのですから、これは需給の問題ではないというのは、エネルギー、原油関係者にとっては常識です。

ところが政府の方までいくと、2014年の黒田第二次緩和は原油価格の高騰を背景に追加緩和を決定しましたが、その後、原油価格は急落しました。

要は政府関係者は原油価格の価格決定メカニズムがわかっていないのです。

バイデンは需給の関係を元にいろいろな対策を講じているのですが、そこが原因である可能性はあるけれども、いくら需給を刺激をしても結果が伴わないのに、なぜ需給を刺激するのか。その意味が私から見るとわかりません。

つまり、もっと他の視点から、原油高騰の改善策を考えるべきなのに、需給を刺激する改善ばかりを行う。これでは結果はよくないであろう、と予測される。結果として、夏にはインフレの兆候は弱まるでしょうが、再び冬になれば、またインフレになるであろう……とかんたんに予測ができると思います。

Next: すべてはバイデンの失策。原因追求よりも戦略を変えればうまくいく



原因を追求するよりも戦略を変えればうまくいく

たとえば、私は香港株と日経の相関性をみていますが、これは因果関係ではなく、相関関係であることには変わりがないのですが、香港が上昇すれば、日経も上昇、という連鎖を繰り返します。

戦略として相関性ですから、信頼性は少ないですがそれを信用するほかない、ということです。相関性が崩れれば、その戦略を放棄すればよいだけです。

バイデンはロシアによるウクライナ侵攻を的中させているのですから、それを徹底的に遂行すると、ロシアの侵攻が報道によると止まっている、とのことですから、その先読みを徹底的に追及することによって、ウクライナ有利の展開を作り出せることでしょう。

一方のロシアは、当初の作戦から報道を見ていると、変更がないように思われます。ウクライナにおいてはロシアが劇的な戦略の変更がないと厳しい戦いになる、ということになります。

何が言いたいかといえば、原因を究明しても、そこから出る戦略を間違えると、ちっともうまくいかない、ということです。

しかし、そもそも原因を究明といっても、みなさんもご経験があると思いますが、何かわからなかいけど体に痛みがある、医者に行ってもその原因がわからない、だから鎮痛剤などを使い対処療法を行う、それが一般的です。しかし、それをずっと繰り返していてもコストと時間の無駄になるのは当然です。そして完治もしない。結果、人生全体の無駄、コストになる。だから、わからなくても痛みの原因を徹底的に考えるほかないのです。

言えることは体の痛みというのは、何らかの自分の不摂生によって起こるもので、正しい姿勢や健康管理をしていれば起こり得ないものだ、ということです。自分の体のことは自分が一番よく知っており、もちろん医者などよりも、そういった身体の不調というのは自分自身の責任なのです。他人から外傷を負わされても、それも本人の責任なのです。

原因がわからないことは世の中にはたくさんあります。しかし、基本的には、その原因を究明することがみなさんや私自身の時間やコストの節約になると私は思います。ガン患者にいくら鎮痛剤を投与しても、治らないのと一緒のことで、ガンを切除しなければずっとその痛みに苦しむことになるだろうな、ということは誰でもわかることだと思います。

その改善方法には当たりや外れがあると思いますが、外れの方法を一生懸命やって、結果が出ないと嘆いている人をたにくさん見かけます。

私からすれば方法を変えればいいのにと思います。

胡錦涛・オバマ会談で資源価格が高騰した過去を思い出せ

胡錦涛・オバマ会談で、G2構想をオバマが蹴ったことによって、エネルギー・資源価格の高騰を招きました。バイデンはその過去を忘れています。就任直後にプーチンを人殺しと呼び、また今回も人殺しと呼びます。

その結果、起こることはインフレのさらなる高進だろうな、とは思います。

中国に対しては、生意気な口調でロシア制裁同調を求めます。それが国際社会の要求だと。中国は、その前に中国制裁を緩和せよ、と言います。この交渉、うまくいくとみなさん思いますか?

G2構想とん挫の後に、チャイナショックが起こり、結果として資源の高騰が終わりました。そして今、再び、資源の高騰が起こっているのです。

バイデンのあまりにも人を小ばかにした態度、これを改めないと私はダメだと思います。

Next: 戦争の長期化は双方の損失。日米株価はどう動く?



戦争の長期化は双方の損失

アフガンからの撤退は、コストをいくら払い続けても、結果が出ないから撤退しただけの話で、決してバイデンの手柄ではないと私は考えています。誰だって、あれだけの戦費を投入して結果が出なければ、月日が経過すれば冷静になり、撤退をします。当然の判断をしただけの話です。

これはゲーム理論の典型的な人間の錯誤、バイアスの間違いの典型です。

そのゲーム理論でいけば、プーチンも長期化をさせてはいけない、とわかっているはずですが、これだけのコストをかけているのですから、最終的には大損とわかっているはずなのに、意固地になって撤退できない可能性もある、ということです。

まだウクライナに対してロシアの敗北と決定づけることはできませんが、いまの戦況を、事実だけを見ているとそうなる可能性も否定できません。

しかし、ロシアが譲歩する、停戦交渉で見せるロシアの譲歩なんてたぶんウソっぱちだろうな、と思います。停戦交渉などまとめる気はないだろうね、と私は思っています。ウクライナのつよがりもいい加減にしろよ、と思います。

ともかく原因をみつけ、それに対して正しい戦略を行うだけの話なのです。

因果関係が見られる2つの指標

今、私が示している中で正解だと思われる項目は私の中では2つあります。いろいろな材料を示しすぎていますので、ほかにもあるかもしれませんが、私の中では2つあります。

・香港株50種と日経平均の連動性
・アメリカのGDPとNYダウの関係性

香港株については、周知のとおりですので割愛をします。ダウに関して、記していきます。

GDPはアメリカの前年比は5.6%です。そして昨日(3/22)朝のNYダウの引け値は前年比で5.67%です。以前、アメリカの代表的な株価でダウとナスダックが前年比プラスマイナスゼロになったと記し、この場合は戻るか、停滞するか、突き抜けるかのどれか、と記し、突き抜ける可能性が高いと記したような記憶があります。

しかし、結果はセオリー通りの戻りという現実があります。このGDPの前年比を見た場合、10-12月の前年比が5.6に対して、昨日のNYダウは5.67だ、と言っているのです。参考までにほかの、インデックス、SPは年間比で13.34高、ナスダックは9.94です。

そのほか、人民元と資源、エネルギーの関係も有効だと考えています。しかし、昨日の人民元の対ドルレートは若干の人民元安だよ、という声もあると思います。

これも年間比でみると、人民元高が進行をしていますので、昨日との比較ではなく前年比で見ておくことも大事だ、と記しておきます。

Next: 当たっている相関性を大事にして作戦を変える



当たっている相関性を大事にして作戦を変える

何が言いたいかといえば、当たっている相関性を大事にして、外れていること(たとえば円が円高になる、なんて何か月言い続けても当たらないことなど)は捨てる、ということです。日本政府、財務省による米債券買い付けによるドル転作業が始まると、ドル買い円売りによって円安になる、と考えた方が成績が良いので、円高という相場観は捨て去るのと一緒です。

この期間、3月29日~30日くらいまでは円安だと思っておけばいいのです。多少、調整はあるでしょうが、初押しらしい初押しがない状態です。まだだま続くだろうな、と思っています。ただ新年度入りすると、円高になるのであろうな、と考えています。これまで見えている銘柄をやらないわけにはいきませんよね。

原油などは初めての押しで、初押し買うべしの格言通りの相場ですが、上伸はかなり緩和するだろうな、と思います。チャートを長年みている人にとって、ここから一気に新値というのは考えづらいと考えるのが妥当だと思います。

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2022年3月配信分
  • ようやく実質金利が上昇し始めた・・・と「円相場」の解説(3/23)
  • やはり因果関係が大事だと思います(3/22)
  • マーケットの流れ(3/21)
  • なぜ株価は上昇するのか?(3/20)
  • きのうの本日の解説を検証してみましょう(3/18)
  • 本日のマーケットの見方、を解説します・・(3/17)
  • たとえば中国最大手不動産業者エバーグランデはどうなったのか?(3/16)
  • 正念場の金融市場(3/15)
  • アメリカの凋落 ―目の前に起こっている現実を間違えてはいけませんー(3/14)
  • エネルギー価格はまだまだ高い(3/11)
  • 今の状態を整理してみましょう(3/10)
  • もっと冷静にマーケットをみるべき(3/9)
  • 無茶苦茶な経済情勢(3/8)
  • なぜ金利が大事なのか? 整理してみよう(3/7)
  • 石油ショックの意味(3/6)
  • マーケットも、考え方も偏りすぎはよくない(3/5)
  • ウクライナはオラウータンの集団行動と同じ(笑) そのほかユーロなどもりだくさん(3/4)
  • 2016年から続く「強気相場」の終了(3/3)
  • やはり3月1日はあたまになる可能性? とウクライナはやっぱり茶番(3/2)
  • 露中銀のドル使用停止の意味(3/1)

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※本記事は有料メルマガ『角野實のファンダメンタルズのススメ』2022年3月22日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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角野實のファンダメンタルズのススメ』(2022年3月22日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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