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グリーンスパン元FRB議長が仕掛けた「金融爆弾」 ゴールド現物は投資家を救うか?

アラン・グリーンスパンは、彼の論文「金と経済的自由」で主張していたように、金本位制の信奉者であることは間違いありません。しかし、FRB議長に就任するや否や、彼が実行した政策のすべてが、それと正反対のものになりました。それもそのはず、グリーンスパンこそが、今日の世界恐慌の危機を仕込んだ張本人だからです。(『カレイドスコープのメルマガ』)

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各国政府・中銀は金に対する戦争「ゴールド・ウォー」に敗北する

異口同音に警告を発しはじめた投資界の“レジェンド”

今年に入ってから、投資の世界では、いわゆる“レジェンド”と称されているファンド・マネージャーやアナリストたちが、日本の゛デフォルト・リスクについてコメントするようになりました。

【関連】パナマ文書の記事一覧 予期せぬ株高・米ドル高効果も?

最近では、ロバート・キヨサキとハリー・デントによる「2017年市場クラッシュ」予測を配信しました。
(※メルマガ第151号パート2「トランプ、キヨサキ、デントの3人とも『避けられない財政ハルマゲドンが迫っている』と断言(2) 」で詳述)

また、つい4、5日前にも、エゴン・フォン・グレヤーズ(Egon von Greyerz)という“レジェンド”が、「日本に最後の審判の日が迫っている」とありがたくない警告を出しています。

こんなことは、日本の証券アナリストやストラティジストなら、たとえ口が裂けても言えないでしょう。

彼は、ロシアの英語圏向けメディア「RT」にコーナー番組を持つマックス・カイザーのプログラムによく出演しています。

「銀を買ってJPモルガンを潰そう!」運動

マックス・カイザーとは、怪異な風貌をした独特の語り口で知られる金融ジャーナリストです。

カイザーは、2013年6月25日の「RT」で、このような過激な発言をしました。

「私は、ロシア、中国、エクアドルに、米国と英国にいる金融テロリストたちに断固、立ち向かってほしいと思っています。決して、途中で諦めたりせず、ウォールストリートの金融テロリストたちに決して温情を示さないでほしいのです」

カイザーが「ウォールストリートの金融テロリスト」と呼んでいるのは、JPモルガン・チェースのような大銀行を動かしている国際金融資本家のことです。

彼が提唱している「銀を買ってJPモルガンを潰そう」運動(Crash JP Morgan Buy Silver)は、米ドルが崩壊するまでに市民が銀の現物を買い占めてしまえば、JPモルガン・チェースのような巨大銀行が保有する莫大なペーパーマネーは紙くず同然となって破産してしまう、という愛すべき無邪気さから来ています。<中略>

Next: グリーンスパン元FRB議長「我々の財産を守るにはゴールドが不可欠」



グリーンスパン元FRB議長「我々の財産を守るにはゴールドが不可欠」

カイザーは、フェルディナンド・リップス(Ferdinand Lips)の著書『Gold Wars』を読んだのかも知れません。(邦題:『いまなぜ金復活なのか―やがてドルも円も紙屑になる』)

フェルディナンド・リップスは、金投資の世界では「金の教皇(Pope of God)」の異名をとる“レジェンド”です。

彼は、パリのモルガン銀行、トロント・ドミニオン証券、スイス・バンク・コーポレーション、ユリウス・ベアといった名門金融機関を渡り歩き、1968年、英国とフランスの両ロスチャイルドが手を結んで開業したチューリヒ・ロスチャイルド銀行の設立に参加した後、マネージング・ディレクターに就任しました。

リップスは、「金価格は月に届くほどに上昇する。必ず経済的な大惨事が訪れる。世界経済は崩壊の危機に立つことになる。金を持っていれば、そうした中でも自分を守ることはできる」と常々主張していた筋金入りの金信奉者です。

リップスは、著書『Gold Wars』の前書きで、このように書いています。

「金と経済的自由とは不可分である。金本位制という制度下でなければ、インフレーションという名の略奪から資産を守ることはできない。われわれの財産を守るには金は欠かせないのである。このことを、しっかり理解していれば、政治家たちが金本位制に反感を抱いている理由が容易に理解できるだろう」

……これは、後のFRB議長、アラン・グリーンスパンが1966年に書いた論文「金と経済的自由」の中の一節です。

この文章が書かれてからわずか5年後の1971年には、ブレトン・ウッズ体制、つまり金ドル本位制が廃止され、以来、世界の主要国の通貨は、みな金の裏付けから切り離されてしまいました。

国家は自由に通貨を発行できるようになり、「政府の信用」という幻想を「裏付」とした不換紙幣が世界中に蔓延するようになったのです。

基軸通貨の発行国であるアメリカは、際限なくドルを発行していますが、そのドル紙幣の実質的価値は下落し続けているのです。

ところが、各国の政府と中央銀行は、自国の通貨の実質的価値が下落していることが露見するのを防ぐため、金の価格を操作するという道を選びました。

そうして金から貨幣としての機能を奪い去り、紙幣だけが本物のお金であるという信仰を広めようとしているのです。

まさに、各国政府・中央銀行は金に対する戦争「ゴールド・ウォー」を仕掛けているというわけです。

そうすれば、金融政策のデタラメさが覆い隠されるとでも信じているのでしょう。ところが、結果は、いくつもの通貨危機、経済危機、そして、戦争でした。

リップスは、『Gold Wars』の中で、「すでに金の戦争は2002年に決着し、われわれ、すなわち、ロスチャイルドはこの戦争に勝利した」と述べています。『Gold Wars』が出版されたのは2002年のことです。

Next: リバタリアンとゴールド信奉者、2つの顔を持つグリーンスパンの正体



リバタリアンと金(ゴールド)信奉者、2つの顔を持つグリーンスパン

アラン・グリーンスパン(第13代FRB議長)は、60年代以降、リバタリアニズムの政治思想を代表する女流哲学者として頭角を現したアイン・ランドの一番弟子として知られています。

グリーンスパンは、ジェラルド・フォード政権下で1974年から1977年まで大統領経済諮問委員会の議長を務めました。このとき、フォードにグリーンスパンを推薦したのがアイン・ランドだと言われています。

このアイン・ランドを一躍有名にしたのが、アメリカで「聖書の次に影響力のある小説」と言われている『アトラス・シュラッグド(Atlas Shrugged/邦題:肩をすくめるアトラス)』でした。

アイン・ランドは、パトロンであったフィリップ・ロスチャイルドから、多くのインスピレーションとサジェスチョンをもらい、この本を書き上げました。

なぜ『アトラス・シュラッグド』が「聖書の次に影響力のある小説」と言われているのかというと、それは、この本がロスチャイルドの世界支配計画の青図を描いたものであるとされているからです。

事実、宗教者の多くが「世界は、この小説のとおり流転している」と言って、20世紀の奇書として扱っています。

アラン・グリーンスパンは、フォード政権で働いた後、アルコアやABCの取締役に就いていましたが、1987年からは第13代連邦準備制度理事会(FRB)議長を務めることとなりました。

このときにも、フィリップ・ロスチャイルドの愛人であったアイン・ランドの口添えがあったと言われています。

グリーンスパンの「二面性」が意味するもの

アラン・グリーンスパンは、彼の論文「金と経済的自由」で主張していたように、金本位制の信奉者であることは間違いありません。

しかし、FRB議長に就任するや否や、彼が実行した政策のすべてが、それと正反対のものになりました。

それもそのはず、グリーンスパンこそが、今日の世界恐慌の危機を仕込んだ張本人だからです。

Next: グリーンスパン元FRB議長が仕掛けた「金融爆弾」とは?



グリーンスパン元FRB議長が仕掛けた「金融爆弾」とは?

彼は、1999年、米議会でデリバティブに規制をかけないように声明を出し、中央銀行に金のリースを促して金価格の上昇を阻止し、金利を引き下げて住宅バブルを引き起こしたのです。

ここからFRBは、米政府の債務残高を増やす政策を取り続け、2008年のリーマンショックを機に、その後7年にも及ぶゼロ金利・量的金融緩和を継続してきたのです。

米国の財務長官にはユダヤ系が就任することが多いのですが、2009年1月26日、オバマ政権下で第75代財務長官に指名されたティモシー・フランツ・ガイトナーも同様、「ユダヤ系」でした。

ガイトナーは、2009年から2013年までの任期中、米政府の債務限度額の上限を引き上げて果敢に政府債務を増やしました。これが原因で米国の経済破綻が不可避となったのです。

FRBを辞めゴールド信奉者に戻った“金融のマエストロ”

グリーンスパンがFRB議長を辞めた後、彼は再び金本位制度の信奉者に戻り、「金融システム全体の崩壊」について繰り返し警告するようになりました。

金本位制度の下では決して金融システム全体の崩壊は起こりえない。金を手放す中央銀行は愚かだ」と古巣のFRBを批判し続けています。

彼は、2014年の暮れに金価格の高騰を予測しましたが、果たしてそれは現実となりました。

このとき、「ドルは幽霊通貨」とさえ言いながら、量的金融緩和政策を露骨に批判していましたが、今の彼は、「金融崩壊を回避するのは難しい」という諦めの立場を取っています。

この一連の流れから鮮明に浮かび上がってくること――それは、「アメリカは金融システムを自ら崩壊させるために革命を必要としている」ということです。

Next: ドル崩壊と金本位制の復活/金現物を勧める専門家たちに意外な共通点



ドル崩壊と金本位制の復活~ロン・ポールの予言

グリーンスパンがFRB議長時代に取った金融政策のすべてが、確かにアイン・ランドの自由放任経済=リバタリアニズムを果敢に推進し、結果、米政府の財政をコントロールできなくなるまで疲弊させることにつながっていきました。

一方で、共和党の元議員、ロン・ポールは、「すでに全米の金融システムは崩壊寸前で、今年2月19日からドルの崩壊が始まり、金本位制の復活が考えられる」という予想を出しました。
「2016年2月19日、米ドルは完全崩壊する」元連邦議会議員ロン・ポールの予言

その最初の兆候は「急速なドル安になるだろう」と。

今日(4/28)は、たった3分で3円も円高ドル安になりました。過去の経験からは、とうていありえなことが今後、次々と起こるでしょう。

過去、何度か同じ予想を出しているので、人々はこれを「ロン・ポールの予言」と言っています。

すでに、FRB議長のジャネット・イエレン、ドナルド・トランプは、ドル安・円高政策を強く主張しています。

ヒラリー・クリントンは態度を明確にこそしてはいませんが、彼女もまた、ドル安政策をほのめかしています。

ロン・ポールも、アイン・ランドを強烈に支持するリバタリアンとして知られています。そして、彼は「アメリカで革命を起こせ!」と声高に叫んでいるのです。

ロン・ポールの予言のダイジェストは、コチラで読むことができます。メルマガの第140号パート2「ロン・ポールの警告―2016年2月19日 ドル完全崩壊」にはさらに詳しく書かれてあります。

金の現物保有を勧める専門家たちに「意外な共通点」

この2年ほどの間、グローバルな金融崩壊を警告している“レジェンド”たちが発している未来予測の多くに目を通してきて分かったことは、リンゼイ・ウィリアムズ牧師を始めとして、彼らの多くがクリスチャンである、ということです。

彼らに共通するのは、不換紙幣、株式、債券などのペーパーマネーを、金(ゴールド)や銀(シルバー)などの貴金属の現物に換えておくことを推奨している点です。

そうすることが彼らにとって、「来るべく世界的な経済崩壊に備えるもっとも有効な方法」だという信念になっているのです。その信念は、どうやら聖書に基づいているようです。

聖書には、「金貨1枚で多くの民の飢えをしのぐことができる」という意味の記述があることから、最後の審判の日がやってきて艱難辛苦が訪れたとき、金を保有しておくということを「神の預言」として受け止めているのです。

Next: ウォール街のトレーダーとは正反対の“投資”スタイル



ウォール街のトレーダーとは正反対の“投資”スタイル

アメリカの投資家は、ウォール街のトレーダーに代表されるように「利回り」で儲けようとします。

彼らにとっては、元本は利回りを生まないので、そもそもが投資の対象ではなく、レバレッジを利かせたプット・オプション、コール・オプションといった、うまく立ち回ることができればそれこそ短期間で巨万の富を手に入れることができるデリバティブに全精力を注ぐようになるのです。

当然、こうしたトレーダーは、世界規模の金融崩壊こそ千載一遇の儲けのチャンスだと捉えています。

彼らと正反対の投資スタイルを基本としているのが、こうしたクリスチャンの投資家たちなのです。

彼らの多くは、潜在的に「利回り」に罪悪感を抱いているかのごとく、ペーパーマネーには見向きもせず、「元本」そのものに対する投資を勧めています。それが、この地球上で唯一の「正貨」である金と銀の現物投資なのです。

「正貨」こそが真の通貨であることは疑いのないことです。しかし、「正貨」ですから利回りは付きません。

彼らは、聖書の教えから「正貨」は絶対的な価値を持っていると考えているので、本当のところ、金や銀の現物を買うことを、彼らは投資とは呼んでいません。

そもそも「利回り」が付かないのですから、「投資ではない」ということになるのです。

そうした意味において、リンゼイ・ウィリアムズやハリー・デント、そして、このエゴン・フォン・グレヤーズを、果たして投資家と呼んでいいのかどうか迷うところです。

投資家というより、経済崩壊によって資産が大幅に目減りしてしまうことを避けるため、金と銀という「ハイパー・インフレが到来したときに備えてのもっとも優れた保険」を勧めているライフ・プランナーのように見えます。<後略>


本記事は『「カレイドスコープ」のメルマガ』(2016年4月28日号第154号)を一部抜粋、再構成したものです。興味のある方はぜひ初月無料の定期購読を。5月中に購読手続きをすれば、今回の記事全文もすぐご覧いただけます。

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「カレイドスコープ」のメルマガ』(2016年4月28日号第154号)より一部抜粋、再構成

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