円売り絶賛加速中!わずか3週間で10円の円安ということで、日本売りとの声も聞かれます。そんな中で、新年度初日の今日、雇用統計が予定されていますので、現状を踏まえつつトレード戦略について解説していきます。(ゆきママ)
急激な円安に3つの背景
戦争などが発生すると円が買われる、リスクオフ(回避)の円高というのは円の代名詞のようになって久しいですが、これはいわゆる円キャリートレード(円を売って金利の高い外貨を買う)の動きが活発だった過去の話。
現状は世界的な金融緩和、低金利化が常態化したこともあって、平時に円を売る動きはほとんどなくなりました。
したがって、リスクオフによる巻き戻し、円売りポジションを決済することによる円高がなくなったというのも、今回の円独歩安の要因のひとつでしょう。
この円高の動きがなくなったこと、そして、ウクライナ戦争による原油高騰、エネルギー価格の上昇を受けて資源国通貨が買われていること、日本以外の主要国の中央銀行(FRBやECB、BOE)がこぞって金利を引き上げ、日本と海外の金利差を意識した円売り、外貨買いの動きが活発化したことが、今の円安の流れを作っています。
<円安要因>
1. 平時の円売りがなくなったことで、リスクオフ時に巻き戻しの円買いがなくなった
2. 原油価格高騰による資源国通貨高、日本に資源はないので自ずと円売りになる
3. 中央銀行の政策スタンスの違いにより金利差が拡大、円売り外貨買いの流れが加速
これら3つの要因が重なったことで、急激な円安相場になったと考えられます。
今後も円安は継続か
そして、今後についてですが、ウクライナ戦争が収束して原油が徐々に落ち着いてくることを踏まえれば、(2)資源国通貨高という要因は消えることになりますが、(3)の中央銀行の政策スタンス差は今後も継続することになりますから、やはり円安は継続しやすいでしょう。
先日、日銀の指し値オペが発表されたことで大幅な円安となりましたが、これは金利の上昇を抑制するために一定の金利水準で国債を無制限に買い入れるオペレーション(公開市場操作)のことです。
日銀は長期金利の指標である10年物国債の利回りを±0.25%に誘導することを目標としているため、±0.25%を超えそうになると、無制限に国債を買い入れて金利の上昇などを抑え込みます。
一方、ご存じのように、FRB(米連邦準備制度理事会)やBOE(英国中央銀行)は、すでに金利の引き上げを開始しており、短期金利を中心に長期金利(10年債利回り)も上昇していますから、金利の低い円よりも金利の高い外貨(ドルやポンド)を買う、という見方が定着しています。
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ドルの今後はインフレと景気次第か
為替、FXの基本は弱い通貨を売って強い通貨を買うことですが、現状で弱い通貨は円が真っ先に挙げられるでしょう。そして、強い通貨はやはり米ドルということになりそうです。
欧州のようにウクライナ戦争の影響をダイレクトに受けることなく、欧州と比較しても経済は非常に強いですからね。
欧州の場合、エネルギー価格の高騰が深刻で、ここ2〜3ヶ月でガス料金が2倍という国も珍しくありません。ここ2〜3年で4〜5倍になったという国もザラにあります。欧州の大国でロシアからのエネルギーに依存してきたドイツでは、インフレ率が+10%に達するという声もあるほどで、危機的な状況と言えるでしょう。
これだけインフレになってしまうと、経済への影響は避けられませんし、このインフレがブレーキとなって景気が低迷するようであれば、ECB(欧州中央銀行)が年内に行うと織り込まれている利上げも遠のくことになります。
そして、これは米国、FRBにおいても同様です。米国の消費者物価指数は2月に前年同月比で+7.9%と40年ぶりの高インフレとなっています。
このインフレがブレーキとならなければ、今後もFRBは利上げを継続していくことになりますが、停滞感が出て雇用に緩みが出れば、当然ですが平均時給、賃金上昇率も悪化することになり、そうなれば利上げペースも後退するでしょうからね。
そういった意味で、今回の雇用統計も非常に重要です。雇用者数がしっかり増加し、平均時給も強ければ問題ないですが、雇用者数が大幅に鈍化、あるいは減少して賃金も前月と比べて伸びない、下がっているとなれば、織り込まれていた米国の利上げ後退意識で金利が低下し、強い米ドルの値動きが終わってしまう可能性があります。
労働市場のひっ迫度合いのバロメーター「平均時給」に注目!
それでは、いつものように先行指標を確認しつつ、雇用統計のトレードについて考えていきたいと思います。3月分のISM(全米供給管理協会)の雇用指数は未発表で、雇用統計後に発表されます。
ADP雇用報告は前回分を下回ってはいるものの、堅調さを維持。そして、新規失業保険申請件数も改善傾向ですね。特に新規失業保険申請件数は、今週発表分こそ増加したものの、先週は1969年9月以来、52年ぶりの低水準となり、労働市場がひっ迫していることを示しています。
インフレやウクライナでの戦争を懸念し、投資や貯蓄でやりくりしていた人々も労働市場に戻っており、雇用しやすくなったといった声もありますから、基本的には今月も予想並、堅調な数字が期待されていることでしょう。
ただし、人々が雇用を求めて雇いやすくなったということは、さらなる賃金アップというインセンティブは働かないことになりますから、非農業部門雇用者数が+30〜50万人程度の堅調な数字は当然として、あとは平均時給が伸びるかどうか、前月比で+0.4%という予想をどれだけ上回れるかが鍵となるでしょう。
FRBが利上げを急いでいるというのは間違い無いですし、市場の織り込みも過剰と言えるほど進んでいますが、やはり賃金が伸びない、ウクライナ戦争によるインフレなどの影響を受けて経済にブレーキがかかるような傾向があれば、利上げのペースというのは鈍化が想定されますからね。
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想定レートは1ドル=121.30〜123.60円
今日の午前は実需筋主導、年度始めの円売りやドル買いで一段高となっています。欧州市場で押し下げがあれば、押し目を狙いたいところですが、現在の高い状態のまま雇用統計を迎える場合は、やや悩ましいですね。
現状の122.60円、123.00円が上値目処で、ここの抵抗をこなせれば一段高もありますが、一足飛びで125円といった値動きに結びつくためには、非農業部門雇用者数が+80〜100万人に近い数字であることはもちろん、平均時給も前月比で+0.7〜0.8%といった数字をクリアする必要があるでしょう。
今回そこまで強い数字を見込めるかというと微妙なので、雇用統計前にポジションを持つのであれば、122.00円前後、121.90〜122.30円というレベルが目安でしょう。これで非農業部門雇用者数、平均時給が予想の数字を上回るのであれば、122.60円、123.00円という上値目処を目標にホールド、122円台後半で伸び悩む限りは利食いでしょう。
予想を下回ってしまった場合は、利上げペース後退意識から下げが強まる可能性がありますので、まずは目先の底となっている121.00〜121.20円レベルを守れるかどうか、守れれば押し目を狙って良いでしょう。
ただし、ここを割り込むと下げ足が早まったり、120円台で値動きが停滞する可能性がありますから、要警戒で121円台を割り込んだら損切りでしょう。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2022年4月1日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による