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残された家族を困らせない“終活”準備。シニアライフに不可欠なお金の基本【第3回~持ち物をどう整理するか?~】=牧野寿和

シニアライフに不可欠なお金の基本も、今回が最後となります。持ち家や金融商品などを持っている人、借金を残している人、残された家族が困らないように正しい”終活”準備の方法をご説明します。(『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』牧野寿和)

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プロフィール:牧野寿和(まきの ひさかず)
ファイナンシャルプランナー、牧野FP事務所代表。「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務のほか、不動産投資、賃貸経営のアドバイスなども行う。著書に『銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法』(河出書房新社)など。

持ちものをどう整理するか?

3回に渡り、老後の生活に向けたお金の基本について、これまでに、

・1つ目「金融商品」
・2つ目「保険商品」
・3つ目「住まい」

と3つお話ししてきました。

そして、今回は、4つ目です。「持ち物の整理」についてお話いたします。

次の順番で話を進めていきます。

・4つ目 持ち物の整理の基本
・4-1.持ち家
・4-2. 金融商品
・4-3. 借入金の処理
・4-4. 事業の継承
・まとめ

なお、ここではご自身の子ども(相続人)に、ご自身のものは、相続をすることを前提に、お話を進めていきます。

また、子ども(相続人)がいない場合や、相続人以外にご自身の財産を遺言書を作成して「遺贈」する場合や、公共施設などに寄付する場合は、あらかじめその遺志を明らかにしておくことが必要です。

持ち物の整理の基本

先回までにお話しした、金融商品や不動産を含め、自分の持ち物を、子どもたちに残しても、自分で処分しても、そのための費用が掛かります。

老後の生活に入ってから思わぬ出費が増えないように、老後の生活に入る前に考えておくことをお話いたします。

早急すぎる話と思われるかもしれません。また、いわゆる「終活」の話とも思われるかもしれません。

しかし、いずれにしても、現役中にご自身、または子どもたちと相談して方向性を決めておく話です。

Next: 持ち家や金融商品は老後にどのように整理するべきか?



4-1.持ち家

自分の持ち物の中で、資産価値があり、整理に時間がかかるもののひとつは不動産です。具体的には、持ち家です。

ご自身、それに配偶者ともに亡くなった後、持ち家は、通常、子どもに相続します。
そして、相続した子どもが、その家を今後どうするのか考えます。

・自分(子ども)家族が住む
・孫が住む
・リフォームして借家として収益を得る
・建物をリフォームや建直しをし、商売を始める
・売却し現金を得る

といった方法を考えることができます。

しかし、売却をするにしても、そのための建物の解体といった費用が必要になることもあります。

また、子どもがすでにほかの所に持ち家があり、住んでいれば、上記の利用をすることなく、物置きとして使っても、事実上「空き家」の状態になることもあります。

しかし「空き家」の状態になっても、相続人(相続後は所有者になる)が、防火・防犯の面でも、その家を管理することが必要です。

また、固定資産税や都市計画税も、納付しなくてはなりません。

ここにも費用が必要になります。

従って、持ち家をどのようにするのか、その方法によっては、持ち家を引継ぐ、つまり子どもの家計に負担がかかることが懸念されます。

4-2. 金融商品

金融商品には、

・現金
・銀行への預貯金、
・株式、債券、投資信託
・保険商品

などが該当します。

運用しながら、資産を増やしていってもいいのですが、高齢になれば心身が衰弱しかねません。

意に反した取引をしないように、金融商品の取引をする年齢を事前に決めておきます。

そして、その年齢に達した後の取引は、子どもなどの助言をもらいながら続ける。または、株式、債券、投資信託といった、元本の保証のない金融商品は止めて、現金化してもいいでしょう。

また、加入中の保険商品は、老後の生活に入る前に見直し、また、高齢になってからの新規の加入は、本当にその保険商品の保障が必要なのか、子どもや親族に相談してから、加入するかを決めた方がいいでしょう。

Next: 子どもには迷惑をかけないですむ、借金返済や事業承継の方法



4-3. 借入金の処理

借りたお金の返済は、具体的には住宅ローンや自動車ローン、また、クレジットカードのキャッシングで借りたお金やリボリング(リボ)払いも、極力、現役中に完済するようにすべきです。

なぜなら、老後の生活では、現役中より収入が減るため、現役中と同じ金額を返済することは無理だからです。

したがって、老後の生活では借入れをしなくてもいいように、現役のうちから老後の収入で生活していけるように慣れておくことが大事なことです。

4-4. 事業の継承

アパートやマンションなどを建てて、賃貸住宅経営をしている場合、家賃収入が老後の安定した収入と思っている方もいるでしょう。確かにその通りです。

しかし、老後の生活は数十年続きます。その間に賃貸物件も傷んできます。入居者を確保して空室を減らすため、また住んでもらい商品である建物を維持するためにも、修理やリフォームといった費用が必要になります。

このような状態になる賃貸物件を、子どもに相続するのか、ご自身で処分するのか、相続にするにあたっては、子どもの家計の負担も考え、子どもの考え方も聞いて、決めておくことも必要でしょう。

なお、子どもが相続をするにあたって、家賃収入は見込めますが、それに伴う所得税などの納付、上記のような維持費の負担も考慮すべきです。

また、相続の時期に当たっては、相続時精算課税制度(※1)を利用することも、検討すべきことです。

このほかの事業の承継についても、承継する人を早めに決めて、承継の準備を進めていくことが大切です。

(※1)相続時精算課税制度の詳細は、国税のHPを参考にしてください。
相続時精算制度の選択

まとめ

現役を引退したら、あれもこれもしたいと考えていても、実際にすぐに行動する人もいれば、もう少しして始めると言いながら、すでに70歳を過ぎている人もいます。

また、老後の生活に入ってから、行動計画を立てても実際に行動するためには、費用がかかることや身体の衰えで思い通りの行動ができないこともあります。

また、上述の相続や事業承継のように、結果的に子どもの家計が潤うかもしれません。しかし、負担を掛けるだけになりかねません。

親の老後の生活でのお金の計画がしっかりしていれば、子どもの負担は少なくなるでしょう。

つまり、老後に向けてのお金の基本は、

・お金の使い方の動線は、現役の間に決める
・一時的であっても、子どもの家計に負担がかかることは、子どもの意見を聞きながら決める

つまり、持ち物の処分を含め、ご自身のお金を使っていくことを決めなければなりません。

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image by:metamorworks / Shutterstock.com

【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』(2022年8月31日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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