内閣府の発表資料によると、老後の住宅利用方法について、配偶者や子どもに相続するという方が6割以上いることが、判明しました。しかし、急に家を相続することで、困惑するケースが多いのが現実です。(『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』牧野寿和)
ファイナンシャルプランナー、牧野FP事務所代表。「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務のほか、不動産投資、賃貸経営のアドバイスなども行う。著書に『銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法』(河出書房新社)など。
老後の住宅相続の調査結果
今回は、ある調査結果を参考に住宅の相続を考えます。
今回の記事の構成は次の通りです。
1.住宅資産の老後での活用予定
2.自分が亡くなった後の現在の住まいの見込み
3.空き家数と空き家率の推移
4.現実を直視しないと子どもが困る?
1.住宅資産の老後での活用予定
最初のふたつは、全国の60歳以上(2018年1月1日現在)の男女を対象に実施し、1,870人から回答を得た「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」(2018年度・内閣府)の調査結果です。
この調査の中で「土地や家屋などの住宅資産の老後での活用予定」という質問の結果です。
・子孫に残しておく:61.8%
・リバースモーゲージ(※)を利用して生活資金を得る:2.9%
・住み替えなどのため売却・賃貸する:9.1%
・その他:13.0%
・わからない:13.3%
と、子孫に残しておく人が、回答の半数以上を占めています。
また、その他や、わかないといった回答も合わせると26%と全体の4分の1を占め、将来、自身での住宅資産の運用や相続のことを決めてない方も多数いるようです。
なお、リバースモーゲージ(※)とは「土地や建物を担保に生活資金の貸し付け」とこの調査では定義しています。
2.自分が亡くなった後の現在の住まいの見込み
次も上記の「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」(2018年度・内閣府)の調査結果からです。
「自分が亡くなった後の現在の住まいの見込み」と質問した結果です。
・子供や配偶者(あるいはパートナー)等が住む:66.8%
・売却・賃貸等にされる:10.7%
・住む予定がなく空き家となる:2.7%
・リバースモーゲージの返済にあてる:0.7%
・その他:8.1%
・わからない:11.0%
と、子供や配偶者(あるいはパートナー)等が住むが、66.8%と、半数以上の方はしかるべき人に相続をすることを考えているようです。
ただ、前項の結果で、リバースモーゲージを利用して生活資金を得るとの回答が、2.9%あったのに対して、この項の回答では、リバースモーゲージの返済にあてるとの回答は0.7%でした。
2.9%-0.7%=2.2%の人は、どのような返済を考えているのか?そのしわ寄せが相続人の子どもに及ばないか心配なところです。
また、住む予定がなく空き家となるが2.7%と、空き家になることが分かっていれば、今から対策が必要です。
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3. 空き家数と空き家率の推移
その空き家については、総務省が5年ごとに実施する「住宅・土地統計調査」の結果のうち、空き家と空き家率の推移」を見てみます。
なお、この調査では「空き家」とは、建築中や一時現在者のみの住宅を除いた、居住世帯のない住宅のことと定義しています。また、「空き家率」とは、総住宅数に占める空家数の割合と定義しています。
・この2018年の調査結果で、全国の空き家は8,489戸、空き家率は13.6%
・前年の2013年の調査では、全国の空き家は8,196戸、空き家率は13.5%
・1998年の調査では、全国の空き家は5,764戸、空き家率は11.5%
と、年々空き家の戸数が増加していることがわかります。
私のところにも、持ち家や実家が将来、空き家になることを心配して相談にみえる方がいますが、空き家になる理由はいろいろとあります。
4.現実を直視しないと子どもが困る?
上述の1.2.の回答者は、60歳以上で全国に住んでいる1,870人です。回答者には80歳以上の方もいます。
また、回答者の住まいは、
・持家(一戸建て)81.4%
・持家(分譲マンション等の集合住宅)6.8%
と、88.2%の人が住宅資産を持っている人です。
当然、年齢や住んでいる地域によって考え方に開きはあります。
しかし、上記の3つの調査結果から、親から子どもへの相続を考えたとき、
1.の住宅資産の老後の活用予定では
・子孫に残しておく:61.8%でした。
2.の自分が亡くなった後の現在の住まいの見込みでは、
・子供や配偶者(あるいはパートナー)等が住む:66.8%でした。
3. の空き家数と空き家率の推移では、2018年の調査結果で
・全国の空き家は8,489戸、空き家率は13.6%でした。
つまり、これらの結果から、親は自分が持っている資産としての家を子どもに相続する場合、すでに子どもは親が住んでいるところ以外に家を持っていれば、親が子どもに自分たちの住んでいる家を相続したくても、もらう側の子どもにとっては手に余ってしまう。
これは、3.の 空き家数と空き家率の推移の調査をするたびに数値が上昇していく一因だと思うのです。
そう考えると、自分の資産の現実を直視して対策を考えないと、子どもが困ることになります。
自宅を相続するなら相当な準備が必要です。なぜなら不動産を活用するには、時間も費用も必要だからです。
子どもにとって不要だと思った実家も、時間をかけて検討すれば思わぬ資産価値が生まれる活用があるかもしれません。
『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』(2022年10月26日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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