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2023年に長期投資家が仕込む3つの割安成長株とは?高配当株は要警戒、今こそ高成長株に注目すべき理由=栫井駿介

2023年の相場はどうなるのか?2022年は金融引き締めが行われる「逆金融相場」でした。一般的には、このあと「逆業績相場」がやってきます。景気後退が現実のものとなり、それにあわせて株価は下落します。特に昨年後半に勢いの良かった「高配当株」「割安株」は、景気減速によりダメージを受ける可能性があります。では、どんな銘柄を買うべきか?長期投資家が今まさに注目している国内高成長株について解説します。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

厳しい相場だった2022年……今年はどう動く?

2022年は日経平均株価が9.4%下落。米国株もダウ平均株価が8.7%下落し、ナスダック総合指数に至っては33.1%下落する、大変厳しい相場となりました。

下落相場の最大の要因となっているのが、米国を始め各国の中央銀行による金利の引き上げです。2020年に発生した新型コロナ禍に対応するため、各国は過去に例を見ない金融緩和や資金支援を実行しました。

その結果、倒産が連鎖するような最悪の経済状況は免れましたが、他方で禍根を残したのがインフレです。低金利のお金がばらまかれた結果、マネーは投機的な動きを加速させました。

ビットコインなど、現実社会と繋がりの薄い資産に向かっているうちは良かったのですが、やがて原油などの現物資産(コモディティ)にもその流れが向かい始めました。2月にはロシアがウクライナへの侵攻を開始し、原油のひっ迫感が高まりました。

そうでなくとも、コロナ禍による供給制約によりあらゆる場面で需給のひっ迫感が高まっていたところ、物価に大きな影響を与える資源価格が高騰するのはいただけません。中央銀行はこれを抑えるために、金融緩和を終了させ、利上げに舵を切ったのです。

知っておくべき「金融相場」と「業績相場」

そこで良くも悪くも大きく翻弄されたのが、株式市場です。

まず、一般的に金利が下がると株価は上昇しやすいことが知られています。単純に資金流入が活発になり、株式市場が盛り上がることに加えて、割引率の低下を通じて企業のバリュエーション(価値評価)が数式的に切り上がりやすくなる(※)のです。

(※企業価値は、原則として将来のキャッシュ・フローを現在価値に「割り引いた」ものです。例えば、3年後に100万円のキャッシュ・フローを生むなら、100万円を「5%」などの「割引率」で現在の価値に直して計算します。3年後の100万円なら、100万円 ÷(1+5%)³ = 86.4万円と計算できます。)

ここで言う「割引率」は、国債金利をベースに計算されます。すなわち、国債金利の低下(利下げ)は、割引率の低下を意味します。割引率が低下すると、将来のキャッシュ・フローを現在価値に引き直したときの価値がより高く評価されることになり、結果として株価を押し上げることになります。

金利の低下によって株価が上昇する局面を、「金融相場」と呼びます。金融相場では、PERの上昇が起こるので、もともとPERの高い成長株のバリュエーションが切り上がりやすくなります。この動きを通じて、各国がパニックに陥る中で株式市場は一気に上昇を続けました。

そして、金融相場の後にやってくるのが「業績相場」です。一般的には、金融緩和によって実体経済にお金が流れ、経済が活性化することで業績が向上し、それにしたがって株価も上がるというものです。

通常の景気循環では経済全体が潤うフェーズになるのですが、コロナ禍においてはその様子にかなりのばらつきがありました。相変わらず外出が難しい中で、デジタルシフトが急速に進んだのです。

したがって、この「業績相場」の恩恵を受けたのも、一般的に成長株と見られているハイテク株だったのです。「金融相場」と「業績相場」の双方の恩恵を受けて、ハイテク株が中心となるナスダック総合指数は大きく上昇しました。2020年〜2021年にかけての上昇率は73.7%にのぼります。まさにハイテク株の天下でした。

Next: 2022年は割安・高配当が席巻。2023年に高成長が期待できるのは?



レバナス民は「炭鉱のカナリア」となった

2021年末から2022年にかけてにわかに出現したのが「レバナス民」と呼ばれる人々です。「レバナス」とは、「レバレッジ・ナスダック」のことで、ナスダック総合指数にレバレッジ(信用取引)をかけて、大儲けしようと考えたのです。

彼らの思想の背景にあったのが、「ナスダックは永遠に伸び続ける」というものでした。世の中のハイテク化はますます進み、GAFAMに代表されるハイテク企業の力は日に日に高まっています。過去のチャートを見ても右肩上がりが続いており、それがこれからもずっと続くと考えたのかもしれません。

しかし、いま考えるとわかるように、レバナス民の登場こそが株式市場における「炭鉱のカナリア」だったと言えます。世の中において「永遠に続く」ことはありませんが、彼らはそれを正当化しようとしていたのです。

過去、金融市場はバブルとその崩壊を繰り返してきました。日本の1980年代には「土地神話」と言われ、不動産価格はもう下がることはないと言われました。2000年前後のITバブルでは、世の中はすべてインターネットに取って代わられるような風潮さえありました。しかし、それらはいずれも幻想で、やがて現実に返る瞬間がやってきます。

ここまで解説したように、ナスダックの上昇は「金融緩和」と「コロナ禍でのデジタル偏重」に支えられていました。ということは当然、これらが終わると上昇も終焉を迎えます。

金融緩和が終了し、金利は上昇。一方で、コロナ禍は徐々に収束し始め、デジタルに対する需要の減少、ところによっては反動減が生じ始めました。2022年は、これまでイケイケドンドンだったAmazonやMeta(Facebook)も人員削減に踏み切っています。

下落が始まってからもナスダックに執着するレバナス民に対し、相場の流れを決める機関投資家の動きは迅速です。金利が上昇に転じると見るや、一斉にこれらの売りに回りました。これまでの上昇で相当に利益が乗っているでしょうから、早いところ利益確定してしまいたいという思惑もあると思われます。こうして、ハイテク株は大きく値を下げたのです。

NASDAQ 日足(SBI証券提供)

「割安」「高配当」が席巻した2022年

ハイテク株に代わって好調を維持したのが、バリュー(割安)株と呼ばれる銘柄群です。これらは金融緩和の恩恵はあまり受けられませんでしたが、ハイテク株を売った資金の逃避先として重宝されました。株価が割安ということは配当利回りも高く、高配当銘柄もその恩恵を受けることになります。

以下が、投資信託の年間パフォーマンスランキングです。日本株を見ても、いかに「割安」「高配当」が調子の良い1年だったかがおわかりいただけるかと思います。

<投資信託パフォーマンスランキング(2021年12月~2022年11月)>

※国内株式型、純資産10億円以上、外貨建除く(出典:モーニングスター

Next: 2023年、狙い目の国内3銘柄は?今こそ高成長株を仕込むべき理由



今こそ高成長株を仕込むべき理由

この流れを受けて、2023年の相場はどうなるのでしょうか?

相場の流れの話に戻ると、2022年は金融引き締めが行われる「逆金融相場」でした。一般的には、このあと「逆業績相場」がやってきます。景気後退が現実のものとなり、それにあわせて株価は下落します。

IMFによる2023年の経済成長率予測は、2022年が+3.2%だったところ、2023年は+2.7%となる見通しです。足元をみても、アフターコロナにおける「リベンジ消費」からの疲れが見えます。経済を牽引していた半導体はダブつきはじめ、中国もゼロコロナ政策が失敗に終わり四苦八苦しているように見えます。

したがって、これだけを見るとあまり明るい材料はないというのがコンセンサスのようです。景気後退待ったなしというところですね。

昨年後半に勢いの良かった「高配当株」「割安株」は、景気減速によりダメージを受ける可能性があります。特に高配当株に関しては、業績が悪化すれば配当も減り、そうなると株価も下がるでしょう。昨年はじめに「レバナス民」が盛り上がったように、「高配当民」が盛り上がっているとしたら、これもまた「炭鉱のカナリア」として注意が必要かもしれません。

ただし、株価の特性として間違いなく存在する事実が「未来を織り込む」ということです。悪い悪いと言われながら、いざそれが最悪の状況に達すると、今度はその反対、明るい未来を予想しはじめます(現実には、悪材料で売る人が誰もいなくなった時、株価は反発します。)
逆業績相場の次にやってくるのが再びの「金融相場」です。景気減速から回復するため、各国は金融引き締めを終わらせ、再び緩和に舵を切るでしょう。そうなると、再びPERが上昇し、それに呼応しやすい成長株が脚光を浴びることになるはずです。

問題はそれが「いつになるか」ということですが、タイミングは誰にもわかりません。一方で、いざ株価が上がり始めてから動き出そうと思っても、普通の個人投資家はなかなかついていけるものではありません。したがって、そこがどこになるかわからないにせよ、今こそ高成長株を仕込むべきタイミングだと考えます。

これから仕込みたい国内高成長株3選

「高成長株」といっても、日本株と米国株のどちらにしたら良いか迷う局面かと思います。

米国株であれば、まずはGAFAMが選択肢になるのではないでしょうか。人員削減の波が押し寄せているとはいえ、これまでの急拡大からの調整の側面が色濃いと考えます。(ただし、「F」=Meta(Facebook)だけは状況が異なることは、以下の記事で解説しています。)

【関連】崩壊寸前のFacebook「衰退の5段階」の4段階目に突入へ。GAFAM脱落の日は近い?長期投資家が興味を失ったワケ=栫井駿介

ただし、問題になるのが円安です。1ドル=150円という超円安は落ち着きつつありますが、なお130円前後で推移しています。私は妥当な為替水準を1ドル=100〜110円程度だと考えており、まだ躊躇する水準です。もう少し円高になるのを待ってみても良いかもしれません。

だとしたら、国内の成長株にも焦点を当ててみたいと思います。国内成長株というと、どうしても中小型株に偏ってしまい、上記で解説した相場の流れに必ずしも素直に従わない部分もあるのですが、昨年はナスダックと同様に下落したため、割安感は増しているように見えます。

そこで、ここでは国内成長株として期待される銘柄を3つ取り上げたいと思います。

Next: 高成長が期待できる日本企業1社目は?競争が激しい業界だが…



<高成長が期待できる銘柄その1:ユーザーローカル(3984)>

2005年設立、2017年に東証マザーズ、2019年に東証一部に上場した、デジタルデータ分析ツールを提供する会社です。商品にはWebアクセス解析ツール「User Insight」、ソーシャルメディア解析ツール「Social Insight」、チャットボットの「Support Chatbot」などがあります。

Webサイト訪問者の行動を分析する「ヒートマップ解析」などをはじめとする「Googleアナリティクス以上」の分析をしたい、口コミを分析したいなど、企業のマーケター向けのツールが強みです。また、チャットボットにより、これまでの電話対応業務が削減できるなどDXを促進する企業でもあります。

時代の流れもあり、業績は順調な右肩上がりを描いています。サブスクリプションモデル(SaaS)を採用しており、業績は今後も安定的に拡大していくことがほぼ確実と言えそうです。

ユーザーローカル<3984> 業績(SBI証券提供)

ただし、リスクは競争環境です。ヒートマップもチャットボットも、各社が参入してしのぎを削っています。少し調べただけでも、似たようなサービスが見つかります。ここに例えば価格破壊者が現れた時には業績が大きく削られることになりますし、Google自身がより高度な分析ツールを提供してくる可能性もあるでしょう。

株価は現在、2020年10月に付けた2,685円の約半値となっています。過去5年間において、営業利益が年平均22%成長している同社において、今期予想PERが25倍と、比較的リーズナブルな料金となっています。

ユーザーローカル<3984> 週足(SBI証券提供)

大きな投資も必要としないビジネスモデルで業績は堅調。株価は上場以来低迷していますが、最初の期待が高すぎただけという側面も強いと考えられ、業績の拡大に伴いかなり買いやすい状況になってきていると言えるでしょう。

(残る2銘柄は、つばめ投資顧問の有料会員向けサイトにおいて、1月7日付の記事として発信します。ご覧になりたい方はぜひ、つばめ投資顧問へ入会してみてください。1月8日まで、入会金無料キャンペーンも実施中です。)

皆様にとって、今年1年が良い年になるよう祈念いたします。今年もどうぞよろしくお願いいたします。


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image by: Gorodenkoff / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2023年1月6日)
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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