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今夜の米雇用統計が2023年ドル円相場を左右する。発表前後に有効なトレード戦略は?ギャンブルするならショートか戻り売り!=ゆきママ

年初から乱高下の為替相場!そんな中、本日は月に一度のお祭りイベントである雇用統計が発表されます。雇用統計の数字にほとんど反応しない年もありますが、今週のISM雇用指数、ADP全米雇用報告では大きく相場が動いており、労働市場に対する注目度はMAX状態です。2023年の為替相場のポイントも踏まえながら、解説していきます。(ゆきママ)

極端な円高・ドル安想定は早計?2023年の相場展望

昨年末からアナリストのほとんどが2023年は大幅な円高・ドル安になるだろうと声高に唱えていますが、年初の値動きを見るとそうはなっていません。個人的にはツイッターやブログで発信してきた通りの展開で、やはり、といった感想です。

ドル円相場が支えられる理由として大きいのは、絶対的な日米金利差が挙げられます。つまり、日本円を持っていてもゼロ金利で全く利息はつきませんが、金利が引き上げられた米ドルは持っているだけで年4%近い利息が期待できます。なので、円高・ドル安になったらなったで、逆の動き、円を売ってドルを買う動きがでやすいということになります。

市場環境に大きな変化がなければ、株安などが重なってオーバーシュートしたとしても1ドル=120円ぐらいが限界というのが今の見立てです。

では、市場環境の大きな変化、1ドル=120円を下回るような円高・ドル安になる要因は何かというと、以下の2点が挙げられます。

1. 日銀緩和政策の大幅な修正
2. 米国経済の急激な失速

(1)については、昨年末に日経新聞が“日銀の物価見通し引き上げ・緩和修正見通し”という報道から年始にかけて思惑先行の仕掛け的な円買いが入り、130円の大台を割り込んだことからも、海外勢が強く懸念していることは間違いないでしょう。

昨年12月に日銀はYCC(イールドカーブコントロール)の調整を行い、長期金利(10年債利回り)の許容変動幅を拡大したことから、インフレを理由に緩和政策から脱却していくのではないかと、海外勢を中心に注目が集まっています。

今年4月には黒田日銀総裁が任期満了を迎えて退任するため、思惑が強まりやすい状況は続くと思われます。もっとも、日本の経済状況やインフレ度合いを踏まえれば、海外のように大幅に金利を引き上げる可能性は低く、決定的な円買い材料とはならず、懸念が一巡すれば円買いは限定的にとどまるでしょう。

したがって、(2)の米国の経済、インフレや労働市場が2023年のドル円相場の最大の焦点となるでしょう。インフレが大きく後退すれば、金利の引き下げを織り込んでドル安が進みやすいですし、度合いによっては1ドル=120円を下回る可能性はあります。

ここ数ヶ月の米国のインフレ指標を見る限り、物価指数の多くはベース効果(前年の数字が高かったことで、今年の前年比の数字が小さくなる)もあって大きく減速していることが確認できます。一方、個人消費は相変わらず強く、また労働市場も強めで賃金上昇率も堅調に推移しています。

パウエルFRB議長は労働市場が極めて強いとし、賃金の上昇も続いていることから、インフレが定着することに懸念を表明しています。実際に市場の予想に反して、今週発表されたISM製造業雇用指数やADP全米雇用報告などは、非常に堅調な数字が並び、ドルが買い戻されました。

このように、今年の相場は米国の経済状況、特にインフレと労働市場(賃金上昇率)を中心に見ていく必要があるでしょう。そう言った意味でも、本日発表される雇用統計の数字は大きな意味を持つことになり、相場が大きく動く可能性は高いですから、チャンスと捉えて狙っていきましょう!

Next: 先行指標は全体的にかなり強め。雇用統計にも好結果への期待が高まる



雇用指標は全体的にかなり強めで好結果への期待が高まる

それでは、先に発表されている雇用指標の数字を見ながら、今日の展望を考えていきましょう。

雇用指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)

ご覧のように未発表のものを除けばオールブルーで前回からすべて改善しています。この他にもJOLTS(雇用動態調査)求人数なども強く、雇用関連指標の強さは際立っており、予想よりも強めの数字を織り込んでいるものと思われます。

製造業部門が強めなので、賃金上昇圧力もかかりそうで、素直に受け止めればNFP(非農業部門雇用者数)、平均時給はともに予想を上回る数字が並ぶことが想定されます。

昨年中頃からハイテク企業を中心に人員削減の発表が相次いでいますが、過去3ヶ月のNFPは+28.7万人増となっており、非常に強い数字が続いていますから、まだ他業種には広がっていないと考えるのが妥当でしょうか。

ギャンブルするならショートか戻り売り!

NFP、平均時給ともに予想を上回った場合、ドル円は一段高となるでしょう。もっとも、ある程度強めの数字は織り込まれていますし、強い数字になった場合には利上げ・高金利継続意識で株安でドル円の上値を抑制しそうですから、135.00円レベルがせいぜいといった気はします。

そもそも利上げはピークアウトしつつあるわけですから、高金利継続という見通し修正はあっても、以前のような金利上昇を意識してドル円が上昇し続けるような展開にはなりにくいでしょう。前回の強い雇用統計から状況が大きく変化するわけでもないため、やはり135.00円レベルが目処。

また、市場としては、少なくとも予想並かそれ以上の数字を織り込んでいるわけですから、サプライズサイドとしては下振れでしょう。予想外に弱い数字となった場合は、134.00円ラインの21日移動平均線をピークとして、反発相場が一旦終了する可能性が高いです。

ドル円チャート(日足)

発表直前に133.50〜134.00円を上回っているのではあれば、発表前のギャンブルショート(売り)もアリでしょう。

上には134.00円の21日移動平均線や、サポートとなってきた134.50円、フィボナッチ・リトレースメント23.6%の134.80円、135.00円といった大台節目を控えていますので、よほどの数字が出なければ一足飛びで突き抜けはないでしょうからね。NFP、平均時給共に予想を上回る数字が出た場合は、即損切りすれば良いだけです。

Next: 戻り売り戦略も可。今夜の想定は1ドル=130.50〜135.00円



今夜の想定は1ドル=130.50〜135.00円

想定通りNFP、平均時給が共に予想を下回れば数字次第ですが131円台ぐらいまでは落ちやすいでしょう。その下からは数字がよほど下振れしてないと難しいでしょうが、ギャンブルショートは2円幅ぐらいは期待のできるトレードです。

また、NFPが強めで平均時給が予想を下回った場合、初動は上値を伸ばすでしょうが、膠着性の高い賃金インフレ後退との見方で全戻し(発表前のレート水準に戻す)の反落もありそうですから、こうなれば135.00円ラインを背に売っていく戻り売り戦略も可能です。

というわけで、今日の戦略としては事前にポジションを持つギャンブルなら直前のレートを見ながらショートで、強い数字が出た場合は即損切り。

数字を見てからの場合は、NFPが強めで平均時給が弱めなら、天井を確認した上で134.40〜134.80円レベルで135.00円ラインを背に売っていくイメージです。

NFP、平均時給が共に強めだった場合は、少し悩ましいですね。初動で134.00円レベルで買えるなら良いでしょうが、135.00円レベルで伸び悩むなら突き抜けは厳しいでしょうし、逆に反落リスクまでありますから、あまり引っ張らないようにして撤退したいですね。数字にもよりますが、135.00円に近い水準からの高値掴みはリスクが高そうなので避けたほうが無難です。

以上、2023年の相場展望から雇用統計のトレード戦略でした。今年は荒れた相場になりそうですから、思い込みは避けて柔軟に対応していただければと思います。また、チャンスのありそうなタイミングだけトレードしてしっかり稼いでいきましょう。

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image by:metamorworks / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2023年1月6日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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