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楽天モバイル社員ら「46億円着服」余波で無関係の下請け企業が死屍累々。救済求める声を“黙殺”する冷酷姿勢に賛否両論

昨年9月に発覚した、楽天モバイル社員による46億円着服事件の影響で、事件に関係のない下請け企業が経営危機に陥り、破産や従業員の大量解雇といった事態が相次いでいると報じられている。

事の発端となった着服事件は、楽天モバイル社員が取引先である物流会社「日本ロジステック」と「TRAIL」の役員らと共謀し、コンサルティング料などの名目で楽天モバイルに水増し請求させていたもの。不正発覚を受けて、楽天側は当該社員を懲戒解雇にするとともに、上記の2社との取引を停止したうえで裁判所に預金口座の仮差し押さえを申請。これが認められたという。

基地局設置工事に使う部材の管理・輸送事業など、楽天側からの発注事業が売り上げの大半を占めていた2社は、この措置でたちまち経営が行き詰まり、日本ロジステックは直後に民事再生法適用の申請を余儀なくされる事態となり、さらにTRAILも事業停止となる格好に。これにより、この2社が抱えていた下請け会社が次々と連鎖倒産の危機に追い込まれることとなっているという。

解雇された楽天モバイル社員は幹部だった?

上記2社の下請け企業のなかには、すでに破産してしまったところもあるようで、ある会社では全国で約500人規模の解雇が発生するなか、従業員への給与や休業補償の未払いが相次ぐなど、混乱が続いているとのこと。さらに、約1億4,000万円にのぼる完工済みの工賃が全く支払われず、元請けを提訴したところもあるようだ。

ちなみに、楽天側による預金口座の差し押さえの後に、事業停止になったと伝えられているTRAILに関してだが、今月13日に事後処理を弁護士に一任したと帝国データバンクが伝えており、今後自己破産を申請する見込みだという。

いっぽう、この着服事件の全容に関しては明らかになっていない部分も多いが、一部報道によれば、解雇された楽天モバイル社員は都内の4億円タワマンに住む幹部社員だったということで、どうやら当該社員とその妻がTRAILが組み、楽天モバイルから日本ロジステック経由して金を引っ張って来ていた……といった話が。

また着服額は46億円に留まらないのではという見方や、他にも基地局建設を巡っての不正な金の流れもあるのではとの憶測もあがっているとのことである。

こうしてみると、今回の件による元請けの日本ロジステックやTRAILの経営の行き詰まりに関しては、まさに自業自得だと言えそうなのだが、その反面でそれらの下請け企業が連鎖して苦境に陥る状況というのは、まさに理不尽以外の何物でもないといったところ。

また、楽天モバイル側も社員が深く関与している事件、しかも先の一部報道の通りならば、幹部社員という責任ある立場の者が関わっているということで、その影響で無関係の下請け企業が経営危機に追い込まれているとなれば、何らかの手だてを講ずるべきでは……といった話も出てきそうなものだが、当の楽天側は「個別の取引先からさらに業務を委託された取引先について、何らかの対応や関与を行う立場にはない」とけんもほろろ。

実際、先述の完工済みの工賃が支払われなかった下請け企業は、楽天側に何度も救済を求めていたというのだが、なしのつぶてだったというのだ。

そんな楽天側の対応に関して、SNS上からは「孫請けまで救済する責任はない」という意見もあるいっぽうで、「道義的な追求は避けられないと思う」「この事態招いたのは、あんたらの会社の社員だぞ」などと、異論を唱える声も多くあがっているところである。

「単月黒字化」を目指す勝負の年も…

楽天モバイルに関しては、「0円プラン」の廃止を機に激減した契約者数を回復させるため、各社員に対して年末年始に“1人5回線”というノルマを強いていたことが判明し、大きな話題になったことも記憶に新しいところ。

【関連】大量閉店&リストラと苦境の楽天モバイル、社員には「1人5回線契約」の熾烈ノルマ? 提携先・日本郵政の伝統芸“自爆営業”復活かとの見方も

さらに巨額に膨れ上がった赤字の圧縮のため、昨年末から今年にかけて業務委託社員の大規模な契約打ち切りが行われたと報じられているほか、各地の「楽天モバイルショップ」を大量閉店させ、簡易的な郵便局店に転換するといったことも行っているようなのだが、その郵便局店に関しても、合理化のために今ある約280の店舗のうち約200店を、4月末までに閉鎖するとの発表が20日にあったばかりと、まさにギリギリまでのコスト削減が行われているようだ。

【関連】楽天モバイル、ショップの大量閉店は“終わりの始まり”なのか?「仮設感がエグい」長机ひとつで開設可能な郵便局店への転換で今は耐え忍ぶ一手か

そんな最中、Twitter上でちょっとした話題となっているのが、楽天モバイルを辞めた元社員らによる、その退職理由を集めたという投稿。

その中身はというと、仕事は増えるいっぽうにもかかわらず人は減っていくので、とにかくハードワークで深夜の残業も当たり前……といったものから、思い付きで方針がコロコロ変わる朝令暮改な体質、さらに三木谷氏による朝礼での説教も含めて上司が高圧的であるなど、総じて社内の空気はかなり悪いといった内容。辞めた会社に対してのコメントということで、ネガティブな反応になるのは避けられないところだが、それにしても酷い有様のようなのだ。

以前より「2023年中の単月黒字化」という大目標を掲げており、今後の事業存続に向けても今年は正念場となる楽天モバイル。しかし、年明けから聞こえてくるのはお騒がせな話ばかりで、さらに社内の雰囲気もどうやら最悪ということで、早くも先が思いやられるといった状況のようだ。

Next: 「楽天の従業員に対する監督責任って…」



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Image by: beeboys / Shutterstock.com

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