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「らあめん花月」人材派遣業フルキャストが謎の買収?「すき家」ゼンショーはドイツ寿司チェーンM&Aで売上1兆円射程圏に。飲食業界大型投資の裏側を徹底解説=井戸実

全国に200店舗を超えるラーメン店を展開する「らあめん花月」が人材派遣業のフルキャストが買収するという驚きの発表がありました。また、すき家などを展開するゼンショーは、2月のロッテリア買収に引き続き、ドイツで200店を超える寿司のテイクアウトチェーンをM&Aに乗り出しました。相次ぐ飲食事業の大型投資案件の裏側を深掘りしていきます。(『<ロードサイドのハイエナ> 井戸実のブラックメルマガ』井戸実)

※本記事は有料メルマガ『<ロードサイドのハイエナ> 井戸実のブラックメルマガ』2023年6月28日号を一部抜粋したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にご購読ください。

プロフィール:井戸実(いど みのる)
神奈川県川崎市出身、1978年1月19日生まれ。川崎市で一番偏差値の低い工業高校を卒業後、寿司職人の修業を経て、数社の会社を渡り歩いて26歳で目黒区祐天寺に居酒屋を開業。2006年7月に「ステーキハンバーグ&サラダバーけん」を開業し、同年9月に㈱エムグラントフードサービスを設立。現在は事業譲渡をして、株式会社TWENTY NINEで「肉流通センター」の焼肉店をチェーン展開する。

ゼンショー今年3件目の買収はドイツの寿司チェーン

北米、及びイギリスを中心に寿司のテイクアウト店など、約3,000店舗を展開し、寿司の製造卸売業などの日本食事業を行う「SnowFoxTopco Limited」社を、すき家の「ゼンショー」が買収することを発表しました。

驚いたのはその金額で、約870億円とのこと。

今年に入ってゼンショーは、2月にロッテリアを買収して傘下に収めました。

さらに5月にはドイツで221店舗(22年12月末時点)の寿司のテイクアウト店、および7店舗の回転寿司レストランを展開している「SushiCircle」を買収しており、今年に入って3社目のM&Aとなります。

この度、買収を発表した「SnowFox Topco Limited」社の22年11月期の売上は、522億円。
直近3年間の純利益は、189億円の赤字です。もちろんコロナの影響は加味されているとしても、連結純資産で350億円の債務超過です。

今回ゼンショーの株式取得の実行に伴い、SnowFox社の既存借入金等の返済が予定されているそうで、当該返済により、債務超過状態は解消される見込みであるとのこと。

買収後のリファイナンスを含めて算出された金額が874億なのでしょうが、ゼンショーの攻め方が半端じゃありません。

海外市場の寿司店は伸びしろしかない

確かに北米市場はまだまだ開拓の余地がありますし、デンバーとかカンザスシティなど、内陸の寿司熱は、伸びしろしかありません。はま寿司の全米展開の足掛かりになることは間違いないでしょう。

コロナ禍を完全に乗り超えてギアを入れたゼンショー。

23年3月期着地は売上高7799億円で純利益は132億円
24年3月期予想は売上高8984億円で純利益は230億円

いよいよ外食業界で初めての1兆円企業誕生が目前に迫っております。

横浜の生麦で6坪の弁当屋からスタートした同社が、創業者・小川賢太郎社長一代で、日本の外食市場で初めての1兆円企業を誕生させる訳です。震えますね。

まだまだ次のM&A先を検討していることとは思いますが、次はどこにターゲットが向けられるのか。楽しみでなりません。

Next: 「らあめん花月」の意外な買収金額

創業8年で200店舗を展開

また、もうひとつ驚いた発表がありました。「らあめん花月」を主力業態に約200店舗を展開するグロービート社が、人材派遣業等を営む(株)フルキャストホールディングス社に買収されるとのことです。なぜフルキャストの平野さんがラーメン業界に進出するのでようか?

ご本人にお話は聞けてないので、今回はグロービート社に触れてみたいと思います。

グロービートの創業者の黒須さんと露見さんとは全く面識もないので、掘り下げた話はできないのですが「らあめん花月」は、黒須さんが1992年26歳の時に杉並で創業しました。最初は醤油味の東京ラーメンだったそうですが、翌年にとんこつに切り替え「にんにくとんこつラーメン」が誕生します。

それが当たったんでしょうね。翌年にFCで1号店が開業し、そこから3年後の1996年にあっという間に50号店を達成します。1号店から4年目なので凄い勢いでしたよね。ちなみに僕は4年と6ヶ月で100店舗でしたが……。

1996年は何があった年かと言えば「牛角」の前身となる「焼肉市場 七輪」を、西山さんが三軒茶屋に開けた年です。

「らあめん花月」は50号店達成から2年後の1998年に100号店を達成。その2年後の2000年に200号店を達成しております。創業から8年目。創業者の黒須さんが34歳の頃ですから、凄いプレイヤーでしたよね。

この頃、僕もレインズ社の店舗開発スタッフで都心部を掛けずり回っている修行時代でありましたが、FC加盟募集を募る媒体(例えばアントレとか)や、FCショーとか、FCのラーメン業態と言えば「らあめん花月」というくらい、際立って名前が表に出ていた印象があります。

実際その当時、筍のようにニョキニョキとラーメン業態が世の中に出て来て、脱サラしてFCでラーメンに挑戦するのが、ちょっとしたムーブメントになっておりました。

しかし、その当時出て来た数多のラーメンブランドが、現在の「らあめん花月」ほどの店舗数で生き残っていることはなく「らあめん花月」がいかに成功したブランドだったのかわかるかと思います。

しかし200店舗超を頂上に、らあめん花月の成長は足踏み状態となります。ここ近年は、有名ラーメン店とのコラボ商品を1ヶ月ごとに切り替えて自店で提供するという、他社に例のない販売方法で顧客獲得をしております。

純資産の積み上げが半端ない

そんな同社のコロナ前の19年から22年までの4年間のスコアは以下の通り。

売上高/営業利益/当期利益

19年 68億/6.8億/5.6億
20年 58億/2.2億/3億
21年 51億/0.4億/4.7億
22年 51億/▲0.4億/4.6億

21年、22年は確かに凹みましたが、FC比率が高いので、大きく負けることは無かったのと、助成金収入でむしろ大きな利益を計上しております。

ビックリするのが純資産です。22年6月期で62億円も積んでいます。純資産額が年商を超えることは、外食企業だと、よほど特殊な要件がないと果たせません。今年で創業から31年目になるのですが、創業から10年目に売上のピークを迎え、以後、売上利益は微減しながらも、当期利益で年間3億円程を20年積み重ねた結果なのですが、口で言うのは簡単ですが、なかなかできることではありません。

そんな同社の譲渡金額は80億円とのことです。60億も純資産積んだのに80億円かぁ……と、ボソッと呟きたくなりますが、そこは何かしら込み入った意向や事情があると思いますので、僕の口からは譲渡価格につきましては言及いたしません。

ハンバーガー、持ち帰り寿司、回転寿司、ラーメン……投資対象になる業態は食事業態なんですね。


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image by:at Wikimedia Commons [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons

<ロードサイドのハイエナ> 井戸実のブラックメルマガ』(2023年6月28日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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2010年度外食企業売上高伸長率で日本一となった株式会社エムグラントフードサービスの創業者オーナーです。2011年9月で会社設立から丸5年を迎えます。たった5年で総店舗数260店舗以上。売上高で165億円の社を作った軌跡の一部をメルマガにてお伝えします!

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