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福島原発「処理水」海洋放出で始まる東アジアの日本食品輸入規制。中国の猛反発で日本経済に大打撃も=今市太郎

IAEA(国際原子力機関)が原発処理水の海洋放出について、人や環境への影響は「無視できる程度」とのお墨付きを与えたことから、いよいよ岸田政権は8月にも海洋放出を始める意向です。しかし足元では、中国がこうした日本の動きに猛反発。実際に海洋放出が実施された場合には、日本からの食品輸入規制を強化するとの方針を示しています。果たして金融市場にはどこまで影響が出るのでしょうか。(『 今市太郎の戦略的FX投資 今市太郎の戦略的FX投資 』今市太郎)

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中国が猛反発。福島原発の処理水放出をめぐる政治的な駆け引き

IAEA(国際原子力機関)は7月4日、東京電力福島第一原発で生じる処理水の海洋放出について、人や環境への影響は「無視できる程度」との報告書をまとめました。

岸田政権はこのお墨付きを得て、いよいよ8月にも海洋放出を始める意向です。

しかし足元では、中国がこうした日本の動きに猛反発。実際に海洋放出が実施された場合には、日本からの食品輸入規制を強化するとの方針を示しています。

この汚染水の海洋放出を巡っては、これまでも韓国が猛烈な反発を見せていました。さらに実際に海洋放出がはじまろうとする足もとの状況下では、中国がこれを外交的な武器として積極的に取り込もうとしていることが窺われるところです。

一方でEUは7月8日、岸田首相とミシェル大統領・フォンデアライエン欧州委員長との会談で、福島第1原子力発電所の事故から続けてきた輸入規制を撤廃することを決めています。

とはいえ、食文化で親和性が高くしかもダイレクトに日本が面している海とつながりのある「東アジア」の地域では、中国の政治的な海洋放出に対する反発に近隣諸国が賛同した動きに出ることも考えられます。

そうなれば、日本食品の輸入規制・不買運動がさらに広範に広がる可能性も出てきています。

日本国民でも信用できない海洋放出の安全性……近隣諸国が納得するはずがない

今回の汚染水の海洋放出は、IAEAがお墨付きを出したことで実施されることになるのでしょう。

しかし、この「IAEA」という組織は、原発を利用する電力業界の外郭団体のような性格で、日本政府の分担金は全体の7.8%に過ぎず、中国はその倍の14.5%を負担している状況です。

ただ、それ以外にも巨額の拠出金を提供しているのが実態で、電力会社から大量に職員を送り込んでいることを考えても、公正な第三者機関となりえるのかが大きな問題になります。

なにより多額の分担金を提供している中国が、IAEAを最も疑っている……というのは、なかなか注目に値する状況です。

この問題、そもそも岸田首相が口にすることは今やことごとく国内では信用できないものですから、周辺国がそれをさらに疑うというのも頷けるところ。

中国がそれに乗じて政治的に日本を追い詰めるというのも、実によくわかるものがあります。

中国の王毅共産党政治局員は「海洋放出とは別の対処方法を科学的に検討すべきだ」と明確に主張しはじめており、日本政府がこれを無視して放出を実行してしまうのかどうかにも注目が集まります。

Next: 日本の食品輸出への影響は?規模は年間1.2兆円に成長しているが…



本邦の食品輸出額は年間1.2兆円規模に

本邦からの食品の輸出額はそう大きなものではありませんが、それでも足元では年間で1.2
兆円の規模を誇るようになっています。

これが周辺国の日本食品輸入規制の高まりなどという反対運動でブロックされた場合には、それなりの影響が出ることが考えられます。

まして日本製品全般に対する不買運動などにつながった場合には、さらに大きな損失を受けることになります。

それだけに汚染水の海洋放出強硬がどれだけネガティブな影響をもたらすことになるのか、かなり危惧されるところです。

日本に対する制裁は、中国が先導すれば、食品の領域だけに限定されず、より大きな経済封鎖的な動きとなるのはいとも簡単な話。

日本政府と岸田政権がまったく意に介さないで海洋放出に突き進もうとするのは、想像以上に危険を伴うものになりそうな気配です。

直近では日本の貿易赤字はかなり解消に向かっていますが、こうした問題をきっかけにまた赤字額が増えていけば、これも円安の要因となるのは明らか。

処理水放出が金融市場に与える影響も気になります。

米国とそれに追随するG7の動向だけ見ていますと、日本は主要国の仲間として世界をリードしているように見えますが、世界的に見ますと米国の手先として反米の矢面に立っているのが実情。

ですから、中国が厳しく反日攻撃をしかけてくれば、それに同調する東アジアの国々が多くなるのはもはや避けられないのが現実でしょう。その場合にはいったいどう終息させられるのか、非常に大きな問題になりそうです。

為替への影響というのはこの問題の第一義的なものではありませんが、随所でドル円の水準に影響を与えるであろうことは常に意識しておきたい状況です。

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※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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