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札幌五輪“2030年断念”で広がる「大阪万博も中止に」の声。札幌市は2034年以降の招致で根強い五輪への不信感を“風化”させる目論見か

札幌市が招致を目指していた、2030年の冬季オリンピック・パラリンピックについて、断念する方針だと報じられたことが、大きな反響を呼んでいるようだ。

6日午前に会見した秋元克広札幌市長は、この報道に関しての明言こそは避けたものの、「現時点で、市民の皆さんの理解が得られていない状況だと認識」と述べたという。

五輪招致を目指していた札幌市は、市民からの理解を得るため、説明会や公開討論会などを開き、ムードを高めようとしていたものの、東京五輪を巡る汚職・談合事件への不信感が市民の間で根強く、説明会などへの参加者は伸び悩んでいたとのこと。

IOCが2030年大会の開催都市を、この年内にも内定する可能性が高まるなかで、このまま市民の支持を広げるのは困難と判断したことが、2030年誘致の断念に繋がったようだ。

建設費が当初と比べ1.8倍に膨らむ大阪万博

先の東京五輪を巡っては、スポンサー選定を巡る汚職事件が取沙汰されたのに続いて、本大会における運営業務も、組織委員会が関与する形で、電通など複数の企業が談合を行っていたと判明するなど、その内情は真っ黒だったことが明るみに。

汚職事件に関しては目下のところ、贈賄側の裁判は着々と進んでいるものの、受託収賄の罪に問われている大会組織委員会元理事・高橋治之被告の公判は始まっておらず、事件の真相究明はまだまだ先となりそうな情勢。ちなみに高橋被告は、いずれの事件についても不正を否定しているということだ。

このように東京五輪における汚職・談合の反省や禊がほとんど済んでいないなか、札幌五輪の誘致活動は進められていたのだが、そのような状況下で市民からの支持が得られるはずもなく、今年1月に札幌市民らを対象に実施された世論調査では、五輪招致に「反対」「どちらかといえば反対」が全体の約3分の2にまで達する結果に。招致の機運は完全にしぼむ格好となっていた。

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それだけに今回の招致断念は、SNS上でも歓迎というよりも「当然の帰結」といった反応が多いわけなのだが、それに付随して多く見られるのが「大阪万博も中止にしろ」という声。

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再来年に迫った大阪万博といえば、海外パビリオンの建設が遅れに遅れまくっていることが、つい最近大いに取沙汰されたばかりだが、それとも関連する話として、会場の建設費もかなり上振れ。当初の計画では建設費1,250億円だったのが、今年9月段階での博覧会協会による見通しによると、その額なんと2,300億円と、当初と比べ1.8倍に膨らんでいるという。

先の東京五輪も、招致活動段階では「コンパクトな五輪を目指す」と言っていたのが、結局のところ開催経費は総額1兆4,238億円と、招致時に示された額の約2倍まで膨張したのだが、大阪万博もそれと同じ轍をどうやら踏みそうな情勢。五輪も万博も老人らによる昭和の高度成長期へのノスタルジーでしかなく、単なる浪費でしかないといった見方も根強いなかで、「五輪が止められたのなら万博も…」という声が、ここに来てひときわ大きくなっているというわけだ。

札幌ドーム問題で露呈した札幌市の見通しの甘さ

ただ、そんななかで札幌市のほうだが、2030年の五輪誘致は断念するものの、その次の2034年以降の招致を目指す……といった話も出ているようで、SNS上からは「まだあきらめてないのか」といった声が多数あがっているところ。

先述の通り、市民からの支持が広がらないということを理由に、2030年の招致を断念したということであれば、札幌市としてはその次の4年後なら、今の世論を支配する「五輪への不信感」がかなり風化しているはず……といった目論見を持っているのは、ほぼ間違いなさそうといったところ。

ただ札幌市といえば、ここ数年だと札幌ドームを巡って、本拠地にしていた日本ハムに対して球場の使用料のみならず、球場の警備費や清掃代、さらにドーム内の飲食店やグッズ売上げまでも取り上げる、いわば“奴隷契約”を強いたところ、堪忍袋の緒が切れた同球団に去られるという最悪の事態を招いたことが。

さらに札幌市は、日本ハム移転後の札幌ドームに関して、Jリーグ北海道コンサドーレ札幌のホームゲームにくわえ、大規模コンサートの実施、展示会誘致などにより、数年で黒字に持っていけるとの強気な試算。しかし、その切り札とも言える税金10億円を投入してドーム内に巨大な間仕切りをする「新モード」は、この9月時点でその利用や予約はわずか2件にとどまるなど、厳しい経営が続いており、当初3億円と目されていた今年度の赤字は、さらに膨らみそうだという。

このように札幌ドームひとつ取っても、数々の楽観的あるいは甘すぎる見通しでもって、致命的な失敗を度々招いている札幌市。それだけに「4年後にはほとぼりが冷めているだろう」といった今回の見通しも、恐らくは大いにアテが外れることになるだろうというのが、多くの見立てのようだ。

Next: 「このような浅はかさが日本の衰退を招いているのだろうか」



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