相対的な状況から考えれば足元の日本円は、G7の中のトルコリラ的状態に陥っています。早晩、為替介入などでは修正が効かない時間帯に突入することが危惧されます。とくに実質実効レートベースでは日本円は対ドルで360円の固定レート時代に逆戻りしていることは衝撃的で、ガソリンの店頭価格が1リッター200円となるのはもはや必然的状況です。(『 今市太郎の戦略的FX投資 今市太郎の戦略的FX投資 』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市的視点 IMAICHI POV』2023年10月4日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
ドル円は再び150円台へ
ドル円は奇しくもちょうど1年前に円買いドル売り介入を行った水準に回帰するという、10兆円投入資金無駄死に相場になってきています。
まぁ1年よくもったと評価する向きも存在するようですが、そんなことに国の資金を使うこと自体、大きな問題といえる状況です。
植田新総裁が日銀に就任してから6か月ですが、何もしないで見ているうちにドル円はまたしても150円台まで円安が進み、JGB10年債金利もひさびさに0.7%を超えたと思った途端に1%のYCC(イールドカーブ・コントロール)の上限に達してしまい、日銀は5年~10年債でまたしても金利上昇の防戦買いを強いられているのが現状です。
そもそもYCCの上限を自ら高めて設定しなおしているわけですから、相場がそれに近づいて慌てふためくというのもおかしな話。
このYCCの運用柔軟化ひとつとってみても、日銀は緩和終了の出口に向かっているのか、断固として緩和継続をしようとしているのか、米国を中心とした海外金融機関のアナリストからはすでに「意味不明の政策」と厳しい指摘を受けるようになっています。
それでも国内で日銀との関係を損ねられない本邦の金融機関などのアナリストは、植田総裁が高邁な思想のもとに緻密な戦略を立てており、条件が揃えば動き出すなどと歯の浮くようなお世辞ともとれる見通しを語っています。
しかし実はこの植田総裁、事前の総裁選レースでは一切メディアに出てこなかったノーマークの存在で、岸田首相が見つけてきて大英断で任命したことになっていますが、米国からの強い要請を受けて就任させざるを得なかった……という不穏な噂も飛び交っています。
ということで植田総裁に求めてられているのは、ポスト黒田での政策変更・緩和から正常化の動きではなく、何も変更しないでこのまま行けるところまで行くというのが最大の任務なのではないか……といった穿った見方をする向きも出始めています。
Next: 日本円はまるでトルコリラ。日銀政策を見直せなかったのが痛手
植田新体制で日銀政策を全く見直せなかったのは大きな失点
岸田首相が財務省と米国の「言いなり」でまともな金融政策についての知見が皆無であることは、ここ2年の行状を見ていればすぐにわかること。さらには、首相就任後2年を経てもアベノミクスのマイナス金利を見直さず、過度な緩和をただ引き継いで続行してきたことによる問題が大きく噴出しはじめています。
すでにGDPの257%も有利子の債務を抱えるこの国ですから、アベクロ体制でゼロ金利をテコに凄まじい金融抑圧をおこなってきたことから、マイナス金利廃止や利上げ実施で国債費の上昇を抑える意味でも簡単には容認できない状況下にあることは理解できます。
ただ、世界の主要国でもこれだけインフレが進み、エルドアンが意味不明の経済理論を唱えてきたトルコでさえとうとう利上げを実施したなかにあっては、世界で唯一マイナス金利を続行させて完全に周回遅れの状況に陥っているこの国は、誰が見てもその説明がつかないところにさしかかっています。
どれだけ植田氏が学者として言葉を選びながら説明を試みても、それが理解できない向きは世界的に日々増加中です。
相対的な状況から考えれば足元の日本円は、G7の中のトルコリラ的状態に陥っています。早晩、為替介入などでは修正が効かない時間帯に突入することが危惧されます。
とくに実質実効レートベースでは日本円は対ドルで360円の固定レート時代に逆戻りしていることは衝撃的で、ガソリンの店頭価格が1リッター200円となるのはもはや必然的状況です。
足元では米債10年債の金利が4.88%にまで上昇し、このままでいけば早晩5%を超えることから、日米の金利差はJGBの10年債利回りが上昇してもさらに拡大してしまう危険性が高まっています。
単独為替介入などでは円安を抑止するのはすでに無理な状況になっている可能性も
足元のドル円相場は115円を超えた直後に3円近くの不可解な下落が示現したことから、アルゴリズムでさえ高値を追うと介入のお見舞いを食らいそうだということを広範に理解してしまったことから、上値追いはいったん休止状態に陥っているように見えます。
しかし、ここから150円を再度超えて上値試しがはじまったときに、財務省が為替介入に踏み切って5円から7円程度実弾投入で無理やり水準を下げることに一時的に成功したとしても、外部環境を考えれば市場参加者に単なる良い「押し目」を提供するだけ。今度は数か月ももたずに年末には155円超、さらに来年はそれを超える驚くべき円安が到来するリスクが高まっているように見えます。
ほとんどの財務省関係者は莫大な資金さえ投入できれば介入で相場を冷やすのは簡単と思っているのでしょうが、実は日本円も主要国が集まって協調介入でもしない限り、介入を成功されることができなくなる状況に直面するのは時間の問題と思われます。
Next: この円安は誤った政策のせい。円買い介入大失敗という未来も…
円買い介入大失敗という未来も…
ゼロ金利をやめて利上げに踏み切ればとりあえず円安の問題は簡単に解決がつきますが、国が抱えるほかの部分で新たな問題が顕在化してくることになるのでしょう。
まあ為替の取引で利益を得ることだけを考えるのであれば、別に岸田政権や日銀が間違った政策をしようが何をしようが、儲かりさえすれば別に問題はないわけです。
それでも足元の過度な円安は、市場によって無理やりもたらされたものではなく、この国の金融政策のすさまじい思い違いが引き起こしていることを、当事者はもっと正確に理解する必要があるのではないでしょうか。
アベクロの緩和政策も後から見れば呆れるほどの大きな問題を抱えていたことがわかりますが、現状の岸田・植田ラインの政策は、それに劣るとも勝らない劣化仕様であることが露見しはじめています。
下手をすると年末までに我々は財務省の円買い介入大失敗の場面を目の当りにすることもありえそうな状況になってきています。
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