このところ、半導体製造に関わる企業の新たな取り組みに関わるニュースが新聞紙面上を賑わせるケースが目立つ。最先端の半導体向け材料では技術力に優れた先発企業が寡占状態にあるが、耐久性などを向上させた「後発組」がシェア獲得を狙っている。最近の半導体関連注目ニュースに関わる企業に注目したい。(『 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 』田嶋智太郎)
※本記事は有料メルマガ『田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット』2023年12月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後の一時期は大学教諭として「経営学概論」「生活情報論」を担当。過去30年余り、主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、地域金融機関改革、引いては個人の資産形成、資産運用まで幅広い範囲を分析研究。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等において、累計3,000回超の講師を務めてきた。これまでに数々のテレビ番組へのレギュラー出演を経て、現在はマーケット・経済専門チャンネル『日経CNBC』のレギュラー・コメンテーターを務める。主な著書に『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)などがある。
いまニュースな半導体関連企業に注目
このところ、半導体製造に関わる企業の新たな取り組みに関わるニュースが新聞紙面上を賑わせるケースが目立っている。
たとえば、12月9日の日本経済新聞には「半導体材料 後発組が猛追」との大見出しで、リンテック<7966>やAGC<5201>の取り組みが紹介されていた。
粘着紙大手のリンテックは高度な半導体の製造に必要な保護膜の分野に参入。AGCは微細な電子回路を作るのに使う絶縁フィルムを開発し事業化を目指しているという。
最先端の半導体向け材料では技術力に優れた先発企業が寡占状態にあるが、耐久性などを向上させた「後発組」がシェア獲得を狙っている。
半導体向けの材料は、技術の蓄積が肝になるため後発での参入が難しい面もある。ただ、半導体製造の高度化や回路の微細化などが製造方法や材料の大胆な見直しを迫る可能性もあり、後発組にも商機は十分にある。
富士経済は、半導体材料(主要36品目)の23年の市場規模を465億ドルと見込んでいるが、そのうち約5割は日本勢が占めるとみられる。日本勢は半導体製造で後退したが、素材各社は世界でもなお存在感を維持している。
以下に、最近の半導体関連注目ニュースに関わる企業のいくつかを見ておく。
リンテック<7966>
リンテックが開発したのは半導体の回路の原版(フォトマスク)を保護する「ペリクル」向けの新素材。半導体ウエハーに回路を描く際、原版に傷やホコリが付着するのを防ぐ役割を担う。この工程の生産性向上に欠かせない部材だ。
いま最先端の「極端紫外線(EUV)露光装置」は回路の線幅が微細な半導体を製造するのに使われているが、その生産性向上や微細化には光の高出力化が必要で高熱が発生することから、ペリクルの耐熱性を高める必要がある。
同社は、高温で化学変化や強度低下が起こりにくいカーボンナノチューブ(CNT)を使うことで、ポリシリコンを使った従来品よりも耐熱性を2倍超に高めた。2025年度までに量産体制を確立し、周辺材料と合わせて数年で300億円の売り上げを目指す。
足元は、テレビやスマホ、PCなどの需要低迷で半導体関連の粘着テープやセク層セラミックコンデンサ関連テープなどの販売が大きく減少で、2Q発表時に通期予想を下方修正。24年3月期は減収減益予想となっており、営業利益は前期比34%減の90億円にとどまる見通し。
もはや、市場は来期の大幅増益への期待を高めており、株価は12日に年初来高値を更新している。足元は、PBR=0.78倍、予想配当利回り=3.4%で株価の上値余地は十分と思われる。
東洋インキSCホールディングス<4634>
印刷インキ国内トップメーカー。各種インキのほか、液晶ディスプレイ(LCD)カラーフィルター用材料、記録材塗料など情報技術関連分野にも展開している。
今後は、半導体部品の「保護材」の分野に参入。先行する米化学大手のダウや独日用品大手のヘンケルなどは液状の保護材を手掛けるが、東洋インキはフィルム状にしたのが特徴。液体で加工する場合は基板全体に塗布する必要があったが、フィルムだと部品ごとに保護することができる。米国の半導体メーカーに24年にも採用される見込みで、26年度に売上高20億円を目指す。
足元はスマホ関連が低調だが、一方で液晶パネル用顔料や機能性フィルムなど高付加価値品が尻上がり。23年12月期は、売上高が前期比1.3%増の3,200億円、営業利益は同74.8%増の120億円、純利益は前期に計上した投資有価証券売却益による特別利益が剥落するため、同14.1%減の80億円となる見込み。
株価は12日に年初来高値を更新。足元は、PBR=0.64倍、予想配当利回り=3.4%で、なおも株価の上値余地は十分に見込めると見る。
Next: 需要が拡大中!日本の半導体産業に追い風が吹いている
東洋炭素<5310>
高機能カーボンの専業メーカー。6日の日経朝刊で、半導体製造装置の基幹部材を、日本や米国で増産と報じられた。電気自動車(EV)向けに炭化ケイ素(SiC)パワー半導体の需要が高まっており、SiCウエハーを載せる台座となる「サセプター」と呼ぶ基幹部材の一層の増産が必要になると判断したもよう。想像を上回るペースで需要が拡大しており、すでに生産が追いついていないという。
EVの普及に伴ってSiCパワー半導体需給がタイトになっており、半導体製造装置に加えて、定期的に交換が必要なサセプターの需要も増える見通し。
足元は、特殊黒鉛が半導体向け軸に鋭伸。複合材も堅調。23年12月期は、売上高が前期比10.8%増の485億円、営業利益は同27.5%増の85億円、純利益は同35.1%増の70億円を見込む。
株価は、一目均衡表の週足「雲」上限が下値をサポートする格好となっており、週足のMACDはマイナス圏で推移。来期(25年12月期)も増収・営業増益になると市場は見ており、株価の底入れ・反発も近いと見る。
TOPPANホールディングス<7911>
5日の日経朝刊で、3月末に経営破綻したJOLED(ジェイオーレッド)の能美事業所(石川県能美市)を買収したと報じられた。買収後は生成AI(人工知能)向けに需要が増える半導体パッケージ基板の生産や開発拠点として活用。2027年以降に稼働させる計画で、将来は会社全体の基板の生産能力を22年度比4倍に高める。
もともと、プリント配線板と大規模集積回路(LSI)をつなぐFC-BGAという基板を唯一生産する新潟工場(新潟県新発田市)の生産能力を25年度に22年度比で2倍に増やすことを計画している。
増強後は新潟工場での拡張余地がなくなるため、新拠点を求めていた。
目下は半導体関連事業の拡大に力を入れており、25年度までの3年間で半導体基板を含むエレクトロニクス製品の生産能力増強に約600億円を投じる。
24年3月期は、売上高が前期比0.4%増の1兆6450億円、営業利益は同1.8%増の780億円、純利益は同11.7%増の680億円を見込んでいる。
株価は7日に年初来高値を更新し、目先は調整含みの展開。26週移動平均線が下値サポート役として機能しており、下値余地はある程度限られると見る。
Next: まだある注目の半導体銘柄。いまが仕込み時か?
ローム<6963>
8日の日経朝刊で、東芝とパワー半導体を共同生産することが分かったと報じられた。事業総額は3,883億円で、経済産業省が最大で1,294億円を補助する。
パワー半導体は電気自動車(EV)や産業機器の省エネルギー性能を高めるために欠かせず、各国で需要が高まっている。生産規模を拡大し、コスト競争力を高める。
東芝がシリコン製のパワー半導体の生産を担い(25年3月から供給開始予定)、ロームが電力効率に優れる炭化ケイ素(SiC)を使った最先端のパワー半導体の生産を強化する(26年7月から供給開始予定)。2027年度までの7年間にSiC事業全体で5100億円を投じる計画。SiC製パワー半導体の売上高を同年度に22年度比9倍の2,700億円に増やす。東芝に従来型の製品の生産を任せることで、ロームは最先端分野への投資により集中できる。
足元は、柱の車載用が国内で自動車生産正常化に伴い復調、EV化支店の恩恵で海外向けも堅調に推移している。24年3月期は減収減益予想となっているが、中期的にはSiC製パワー半導体が収益に一段と貢献するものと期待される。
株価は11月安値からの切り返して持ち直す動き。一目均衡表の週足「雲」の中で推移しながら「雲」上抜けを視野に入れる。 ※2023年12月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。
※本記事は有料メルマガ『田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット』2023年12月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。 ※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込1,100円)。
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田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット
田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット
』(2023年12月15日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による