日経新聞に2018年春の新卒採用調査の記事がありました。採用数を前年より増やすということは、経営陣が自社の業績見通しにかなり強気で、自信を持っていることの表れです。(『資産1億円への道』山田健彦)
新卒採用に積極的な企業は株価も上昇?各業界をチェックする
日本の「新卒採用」は特別な意味を持つ
3月21日の日経新聞朝刊1面トップに、来年度春の企業の新卒採用調査についての記事が出ていました。
日本社会において、「新卒採用」は特別な意味を持ちます。日本の(少なくとも現在の)就職制度では、新卒段階での就職につまづくと、その人の経済的人生はほとんど取り返しのつかないくらいに壊滅的なダメージを受けます。
そのため、新卒採用で内定を出しておいて、後から「当社を取り巻く経済情勢悪化のため、内定を取り消します」などと連絡しようものなら、新聞・テレビ等から袋叩きにされ、お役所からも企業名を公表されて厳しく指弾されます。
そのような「反社会的企業」とは他の企業も取り引きを縮小・取消しなどをして、社会的制裁を受けることとなります。そのような事態を避けるため、企業経営者は新卒採用には慎重に望みます。
新卒採用数でわかる各企業の「業績見通し」
逆に言いますと、「新卒採用数を前年より増やす」というのは、経営陣が自社の業績の先行きの見通しにかなり強気で、自信を持っていることの表れということです。
これは、当然株価の行方にも影響を与えるはずです。その辺りを注意しながら、日経の記事を読み込んでいきたいと思います。以下、記事の要点をまとめたものです。
2018年春の採用計画で、理工系・文科系別で日経に回答した企業約650社のうち、理工系は14.8%増の2万4663人。文科系は6.0%増の1万4882人でした。
製造業で採用意欲が旺盛なのは「自動車・部品」。
日産自動車は自動運転技術やコネクテッドカー(つながる車)の開発を急いでおり、理工系大卒で4割増の370人を計画しています。
第4次産業革命(インダストリー4.0)や自動運転、人工知能(AI)など技術革新が急速に進み、総じて技術者に対するニーズが強まっているようです。
Next: 採用予定数ランキング、増加数ランキングに見る各業界の見通し
採用予定総数別ランキング
採用予定総数の首位は8年連続の三菱電機で、前年並みの650人を計画するそうです。産業ロボットにAIやあらゆるモノがネットでつながる「IoT」を導入すべく人材確保を急いでいます。
2位は技術者派遣のメイテックグループで14.1%増の590人。人手不足に加え、AIや自動運転などの技術開発を進めるメーカーやIT企業から引き合いが続いています。派遣のアウトソーシングも26.9%増の495人を予定しています。
日本電産グループはM&A(合併.買収)をテコに規模を拡大しており、採用数を5割以上増やしています。先端技術や将来の製品開発を担う研究開発で人材が不足し、テレビCMを放映して知名度向上を図っています。
スギ薬局は店舗を20年までに現在の4割増の1500店に拡大する計画で、薬剤師や管理栄養士、店舗スタッフを増やします。就職活動を前倒しする動きに対応し「インターンシップを増やす」とのことです。
文科系では綜合警備保障(ALSOK)グループが約930人の採用予定で、昨年まで3年連続で首位だった大和ハウスグループを抜き、初めてトップになりました。同社は2月に日立グループから警備子会社、4月にNTTグループから自社警備事業を買収するそうです。
文化系2位は大和ハウスで919人、4位は積水ハウスグループで465人の採用予定。首都圏などの富裕層向けに賃貸アパートの需要が旺盛で、資産運用のコンサル提案ができる営業員として育成する予定だそうです。
増加数のランキング
増加数のランキングでは、採用計画の増減率を業種別で見ると、製造業が高卒も含めた総合計で4.9%の伸びにとどまった一方で、非製造業は10.4%増でした。
非製造業のうち、陸運が22.3%増を計画するほか、レジャーも43.7%増を見込んでいます。高齢化を背景に需要が増している給食やドラッグストアも積極採用の姿勢が依然として強いようです。
増加数ランキング首位だった介護最大手のニチイグループは、17年実績見込みから739人増の1224人の採用を計画しています。同社は17年春採用でも1180人を計画しましたが、確保できたのは485人にとどまっています。
高齢化の進展で今後も介護需要は強まる見込みで、介護各社は新卒採用での人材確保に躍起です。SOMPOケアメッセージも18年春に2倍以上の300人の採用を計画しています。
増加数ランキングで2位の日清医療食品は、病院や介護施設向けの給食大手企業です。高齢化に伴う給食ニーズの高まりで、約1.5倍の1431人の採用を計画しています。介護食品のグリーンハウスグループも2倍弱の460人を計画しています。
トラック運転手の成り手が不足していますが、運輸業界でも新卒採用を強化する企業が目立っています。ヤマトグループは225人増の約1050人を計画。大卒は前年並みの約300人を予定し、高卒で前年より4割多い約600人の採用を目指しています。高卒は17年度採用でも600人を計画していましたが、労働需給の逼迫で予定数を確保できませんでした。同社の従業員の待遇改善は、このような背景もあるものと思われます。同業の福山通運グループは17年実績見込みの約1.8倍の500人の採用を計画しています。
Next: 総じて、新卒採用に積極的な企業の株価は強い
総じて、新卒採用に積極的な企業の株価は強い
高齢化や健康需要の高まりを受け、出店意欲が旺盛なドラッグストアも採用を増やしています。増加数ランキングの上位10社に、業界大手のウエルシアホールディングスとサンドラッググループの2社が入りました。
北海道を地盤に全国展開するツルハグループも19位に入りました。新規出店と医師の処方箋に基づいた調剤事業の需要拡大で、薬剤師の資格を持つ学生の大量確保を目指すとのことです。
IT業界「技術者確保」が急務に
IT(情報技術)業界も人工知能(AI)やあらゆるモノがネットにつながる「IoT」などの市場拡大に伴い、技術者の確保が急務となっています。
富士ソフトは18年春の採用で195人増の700人を計画しています。主力の組み込みソフト開発で自動車の電装化が追い風となっています。産業機械向けも引き続き好調。システム開発では金融向けが伸びているそうです。
私のブログに日経産業新聞に掲載されていた新卒採用増加数30社ランキングと主要企業のチャートを載せてみました。
http://ichiokufp.hatenablog.com/entry/tsuyoki-keiei
総じて、新卒採用に積極的な企業の株価は強いことがわかると思います。この続きはまた次回にお話します。
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『資産1億円への道』(2017年3月24日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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資産が1億円あるとゆとりある生活が可能と言われていますが、その1億円を目指す方法を株式投資を中心に考えていきます。株式投資以外の不動産投資や発行者が参加したセミナー等で有益な情報と思われるものを随時レポートしていきます。