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黄門様はどこに消えた?悪代官と越後屋が癒着する現代日本「悪の構造」=施光恒

記事提供:『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年3月31日号(黄門様に期待!)より
※本記事のタイトル・リード・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

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現代の日本で蔓延する「悪徳商人と役人の癒着」を見逃すな

テレビ時代劇「水戸黄門」今年10月から復活

テレビ時代劇の「水戸黄門」が今年10月から復活するそうですね。前作は2011年に終わったので、6年ぶりの復活です。主演は武田鉄矢。博多弁交じりの黄門さまになるのではないかと少々心配です。残念ながら地上波ではなく、衛星(BS-TBS)のようですが、視聴率がよければ地上波に移ることもあるでしょうね。

私は結構、時代劇が好きですので楽しみです。また、いまの世の中こそ、水戸黄門のような「勧善懲悪型の時代劇」の復活が必要なのではないかと思います。

というのは、このところ、黄門さまご一行に吟味してほしい悪辣な事柄が、悲しいかな、増えてきているように思います。新しい水戸黄門では、ぜひ、次のような設定の回を作ってほしいです。そして、黄門さまに「助さん、格さん、懲らしめてやりなさい!」と言ってもらいたいものです。

ぜひ「水戸黄門」でやってもらいたい内容

以上の例もそうですが、水戸黄門をはじめとする時代劇でかつてよく見られた悪役は、強欲な商人、ならびに強欲商人と癒着する役人でした。そして、強欲商人と役人が結託して庶民を苛めている状況に主人公が気づき、懲らしめるという話が多かったのです。

現代日本における悪の構造

こうした悪辣な商人・役人連合は、私の見るところ、現在の日本にはびこっています。ですが、時代劇が少なくなったからでしょうか、世間はこうした財界と政界の癒着に鈍感になってしまったようです。あまり問題視しなくなっていると思えてなりません。

例えば、企業担当制です。

※参考:内閣府の「企業担当制」についてのサイト
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10193682/www.invest-japan.go.jp/investment_advisor_assignment_system/index.html

企業担当制とは、以前も本メルマガで取り上げたことがありますが、「海外から日本に重要な投資をする企業には、安倍内閣の副大臣や政務官を相談相手につける」という制度です。

(下記のリンク先は「企業担当制」を批判した私のメルマガ記事です。
『企業担当制』という約束 – 「新」経世済民新聞 2015年4月3日配信

つまり、外国企業からさまざまな要望を直接聞き進出しやすいように各種の便宜をはかるというものです。悪く言えば、各省庁のナンバーツークラスを担当者としてつけ、グローバル企業の御用聞きをしようとするものです。

Next: 「グローバル企業の御用聞き」に堕ちた日本の官僚たち



財界と政界が癒着する「企業担当制」の問題点

これ、普通に考えれば、おかしな話ですよね。あからさまに日本の政権の高級幹部とグローバル企業が結託し、グローバル企業に様々な便宜をはかりますよということですから。

もちろん海外からの投資が増えれば、国内に雇用が生まれ、経済が活性化することもなきにしもあらずです。しかし、当然ながら、外国企業の利益と日本の一般国民の利益は、必ずしも一致するとは限りません。むしろ、両者は乖離してしまう場合が多いのです。

言うまでもなく、グローバルな企業や投資家は、日本国民の生活の安定や福祉、日本の社会や経済の長期的発展などに特段の関心を持ちません。端的に自分たちの利益のみを追求してきます。

例えば、外国企業からすれば、日本に進出する際、労働法制はなるべく緩い方が望ましいのです。従業員のリストラはしやすいほうがいいですし、残業代もできれば払いたくないでしょう。社会保障費の会社負担が少ないことも望むはずです。法人税率も低いに越したことはありません。賃金も安いほうがいいので、日本が外国人労働者や移民を大規模に受け入れてくれた方がありがたいのです。各種の安全基準や環境基準、健康基準も、なるべく緩いほうがグローバル企業にとってビジネスしやすく望ましいのです。

このようにグローバル企業の利益と日本の国民一般の利益とは、多くの場合、一致しません。それなのに、政府の高級幹部が、グローバル企業の要望を直接的に聞いて便宜を図る体制を作ってしまって大丈夫なのでしょうか。

日本政府の官僚がグローバル企業の御用聞きに

企業担当制はすでに始まっており、現在では、実際にいくつかのグローバル企業に日本政府の高級幹部が担当者(御用聞き)としてついています

次のようなグローバル企業です。

IBM(情報システム)、エア・リキード(化学)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(医療機器)、スリーエム(化学)、デュポン(化学)、ファイザー(医薬品)、フィリップス(医療機器)、マイクロンテクノロジー(半導体)、メルク(医薬品)。

(詳細は下記の内閣府ホームページのなかほどの【公募結果】の箇所「対象企業」というPDFファイルをご覧ください)。
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10193682/www.invest-japan.go.jp/investment_advisor_assignment_system/index.html

例えば、このファイルによりますと、ジョンソン・エンド・ジョンソンやファイザー、フィリップス、メルクといった医薬品や医療機器関連の企業の場合、厚生労働省の副大臣が「担当者」としてつくようです。こうしたグローバル企業は、日本でビジネスしやすいように、日本の各種規制やルールを緩和もしくは撤廃するように担当者である副大臣に要求することになります。

医薬品や医療機器のグローバル企業の担当者としてつくのが、経産省の副大臣ならまだ理解できないことはないですが、厚労省の副大臣であることに非常に大きな懸念を覚えます。厚労省とは、本来、日本国民全体の健康や安全を長期的観点から守るためにあるはずです。そうであるはずなのに企業担当制の下では、厚労省は、実際のところ外国の医薬品メーカーや医療機器メーカーの声を直接的かつ優先的に聞き、便宜をはかる存在となってしまっていないのか大いに心配です。

近い将来、例えば、薬や医療機器の価格決定システムや著作権保護に関して、国民一般にではなく、グローバル企業のほうにもっぱら有利な規制緩和やルール変更が行われたりする恐れはないのでしょうか。

こうした懸念は、ごく普通のものだと思うのですが、政府は、あまり自覚がないようです。つい先日(3月27日)も、外務省、内閣府、経産省などが主催した「日米欧ビジネスセミナー――双方向の投資拡大が切り拓く日米欧経済関係の新時代」という会合で、政府の幹部は、グローバル企業関係者の前で「企業担当制」を宣伝し、日本に投資するように呼び掛けていました。

近い将来、例えば、モンサント社と農水省の副大臣が直結してしまい、様々な規制緩和やルール変更が行われていく――などというあまり考えたくない事態も生じるのかもしれません…。

Next: 竹中平蔵氏が熱心に行った「外国人家政婦の受け入れ解禁」の正体



竹中平蔵氏が熱心に行った「外国人家政婦の受け入れ解禁」の正体

企業担当制以外でも、もっと素朴にまずいのではないかと思われる事案でさえも、最近では、あまり問題にされないようですね。

例えば、よく知られているように(私もかつて問題にしましたが)、竹中平蔵氏は「外国人家政婦の受け入れ解禁」に非常に熱心でした。

●『外国人家政婦』は日本人の倫理観に合うのか? – 産経ニュース 2014年6月5日配信

竹中氏が委員として名を連ねる国家戦略特区諮問会議の強い働きかけもあり、結局、神奈川や大阪などでは、外国人家政婦の受け入れは実現してしまいました。今後、東京にも広がるようです。

そして、外国人家政婦を受け入れ、派遣するビジネスを行う業者の1つとして認定されたのは、竹中氏が取締役会長を務める人材派遣大手パソナです。

フィリピン人家事代行、4時間1万円 パソナが入社式 – 日本経済新聞 2017年3月21日配信

外国人家政婦、東京にも 都が家事代行6社認定 – 産経ニュース 2017年2月23日配信

企業と政治とのこうした密接な関係というのは、いいんでしょうかね…。本当に、公正だといえるのでしょうか。日本国民一般のことを考えた政策決定が行われているのでしょうか。

新しい水戸黄門では、ぜひこうした癒着構造を取り上げ、痛烈に風刺してもらいたいものです。そして、マスコミにしろ、われわれ国民一般にしろ、きちんと監視していかなければなりませんね。

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三橋貴明の「新」経世済民新聞』(2017年3月31日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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