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日本のメディアが伝えない「北朝鮮リスク」この材料はまだ終わらない=児島康孝

今回の朝鮮半島危機では米放送局NBCの果敢な報道ぶりが目立つ。日本の報道が無駄な議論に終始する中、総合的リポートや識者討論企画などで緊迫する情勢を詳しく伝えている。(『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』児島康孝)

どうでもいい内容に終始する国内報道。投資家は「半身」の姿勢で…

朝鮮半島報道はNBC(アメリカ)が圧倒的リード

今回の朝鮮半島の危機をめぐっては、アメリカのNBCが詳しく放送している。私はNY滞在時には、ほぼABCのニュースばかりを見ている。しかし今回は、情報の入手、総合的なリポート、識者の討論と、NBCの果敢な報道ぶりが目立っている。

まず、アメリカによる先制攻撃の準備報道が、NBCから飛び出した。北朝鮮が核実験を行った場合(行おうとする場合)に、アメリカが北朝鮮に先制攻撃を行う準備を完了したというニュースだ。

US:PREPARED FOR PREEMPTIVE STRIKE ON NORTH KOREA

このニュースは大きな衝撃を与えた。おそらくアメリカは、攻撃準備を完了した状態がいまに至るまで継続しているわけだ。

今回、日本のメディアでは、ことの重大性に比べて北朝鮮に関する放送時間が少ないように思える。

対してNBCは、十分な時間をとって、韓国やホワイトハウス、フロリダ(トランプ大統領の別荘)などからニュースリポートが放送されている。また、これまで国防に関与してきた重要人物や専門家のインタビュー企画、中継討論なども充実しており、北朝鮮をめぐる情勢がどのように動いているのかがよくわかるようになっている。

シリア攻撃との関連、北の核放棄の選択肢も報道

こうした中で特に印象的だったのは、シリアへの攻撃を北朝鮮への警告とする報道だ。NBCの世論調査では、シリアの化学兵器使用に対する巡航ミサイル攻撃について、支持する66%、反対24%となっている。アメリカでは、シリアへの巡航ミサイル攻撃が圧倒的な支持を得ていることに気づく。こうした世論調査の結果も踏まえ、シリアへの攻撃を、北朝鮮への警告と位置付けている。

また、もうひとつ印象的だったのは、北朝鮮の脅威を大きく報じている一方で、ペンス副大統領が「北朝鮮には核を放棄するというチャンスもある」と語っている場面だ。

私は投資家に対して、北朝鮮情勢への対応については「半身の姿勢」を勧めている。軍事的な衝突の可能性がある一方で、中国・アメリカと北朝鮮が新たな枠組みで合意する可能性もあるというわけだ。

Next: 中国・アメリカ・北朝鮮の度胸試し大会。米メディアの報道に注目を



様々な報道が乱れ飛ぶが…

最近の日本メディアを含めた報道を見ると、北朝鮮が核実験場近くでバレーボール大会をしていたというものや、原子力空母カール・ビンソンが4月15日にインドネシア付近を航行していたという記事も乱れ飛び、まさに米・朝の神経戦を反映している。

また、軍事的な緊張が高まっている中、金正恩委員長が軍事パレードに登場したかと思えば、ペンス副大統領は軍事境界線の板門店を訪問するなど、双方の行動はエスカレートしている。

これはまさに、互いの戦闘機が数十メートルまで近づいたりする示威行為と似たような感覚のアクションで、度胸試しのようになっている。

ちなみに、カール・ビンソンの位置がどこかについてアメリカが言う義務はないし、シンガポールから朝鮮半島や日本近海へは意外と早く着く。私は以前、シンガポールやオーストラリアへ船で行ったことがあるが、艦船は24時間進むので意外と早いのだ。時速50kmでも、24時間で1200km進むという計算になる。

巡航ミサイルが攻撃の主力になる場合、潜水艦から発射するSLBMもあるし、カール・ビンソンが朝鮮半島のすぐ近くにいてもいなくても、射程距離が長いため、攻撃力の面ではあまりは問題ないわけだ。

アメリカの軍事力はやはり世界一。ある基地で日本の航空自衛隊員と雑談したことがあるが、例えば、日本と同じ種類の戦闘機であっても、アメリカは装備が実戦向きで充実しているというのだ。今回のカール・ビンソンだけでも、搭載している戦闘機や巡航ミサイルなどは、普通の国の空母の戦力を上回っている。

話は元に戻るが、軍事的なニュースの場合、情報源はアメリカということになるので、北朝鮮情勢をめぐっては、NBCなど米国メディアの情報が今後も重要となってくるであろう。

Next: 意味のない議論を放送する日本メディア。投資家は「半身」の姿勢で



不毛なミサイルの「本物論議」

北朝鮮が4月15日に行った軍事パレードが、各国のメディアで大きく報じられた。日本のメディアでは「ミサイルが本物かどうか」が議論されていたが、それは全く意味がないものだ。少し考えればわかることだが、アメリカとの軍事的な緊張が高まる中で、実戦配備しているミサイルをパレードに持ってきているのかどうかという話で、意味のない議論である。

アメリカのテレビでは、北朝鮮のミサイル技術の進歩が非常に早いことについて、軍事評論家のコメントが多数みられた。SLBMについては、「本物に見える」という意見が多かったようだ。つまり、驚異的なミサイル技術の進歩を示すための軍事パレードであったということだ。これは、パレードに出てたのが仮にミサイルの筒だけであったとしても、別の場所で実戦配備しているのであれば、それで十分ということである。

日本のメディアでは、溶接部分がどうとか、消火器が付いていないとかやっていたが、パレードに出てきたものがイミテーションであっても、実戦配備できる技術があるかどうかが本当の問題なのである。

北朝鮮情勢には「半身」の姿勢で

アメリカの原子力空母「カール・ビンソン」は、ほぼ朝鮮半島周辺海域に達している。カール・ビンソンは、シリアを攻撃したような巡航ミサイル「トマホーク」はもちろんのこと、核兵器も当然に備えているはず。朝鮮半島周辺は、非常に危険極まりない状況である。

一方、4月17日のNY市場では、NYダウが大幅に上昇し、+183.67ドル、20636.92ドルとなった。ドル円も急速に反転し、本稿執筆時(4月18日 日本時間8:50)に1ドル=109円10銭前後となっている。

これは、一部の海外メディアが中国と北朝鮮が水面下で交渉を行っていると伝えたことから、相場が急速に反転しているものである。北朝鮮情勢をめぐる相場の動きは、総悲観からの巻き戻しパターンや、逆に、一時巻き戻してその後に本格的に調整するなど、いろいろなパターンが考えられる。そのため、「半身」の姿勢で見ることが重要になってくる。

「アメリカと北朝鮮が軍事衝突」ということになれば、日本に核ミサイルが落下することも十分にあり得る。一方で、西ドイツと東ドイツのベルリンの壁崩壊によるドイツ統一や、北ベトナムと南ベトナムの統一のケースを見ればわかるように、問題が解決することもある得る(ドイツは資本主義陣営での統一、ベトナムは社会主義陣営での統一となった)。

このことからも、「半身」の姿勢(両方があり得るという観点)で、実際の相場の動きをみることが重要である言える。「半身」ということの意味は、単に反転して上昇ということもあり、反転と見せかけてさらに下げるということもある。くれぐれも、一方向だけしか考えないというのは、リスクが大きいということだ。

【関連】北朝鮮の反撃で韓国軍壊滅、日本自衛隊出撃す。そのとき安倍政権は?=高島康司

【関連】シリアや北朝鮮の「リアル」を前に、日本政府が今すぐ行うべきこと=三橋貴明

ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』(2017年4月18日・19日)より抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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